決定回避の法則:17アイスクリームと31アイスクリーム

まぁじんこぉる

決定回避の法則:17アイスクリームと31アイスクリーム

 「31アイスクリーム」といえば、アイスクリームを愛してやまないバート・バスキンとアーヴィン・ロビンスの2人の義理の兄弟が立ち上げた「バスキン・ロビンス」の日本での通称ですね。


 店に一歩でも入ろうものなら、そこに広がるのは明るくてファンシーな内装。カウンター型冷凍庫に並ぶのは、まばゆいばかりのアイスクリーム。そして、その約28種類のアイスクリームの中からトッピングまで選べるというんだから、なんとも贅沢な、そう、値段も贅沢なアイスクリームなんですよね。


 でも、そんな31アイスクリーム。私、あんまり好きではないのです……。なぜなら、店に広がるのは、甘いアイスクリームを求めて集まる甘い男女。そして、それらが群がり、甘い会話を楽しんでいるものですから、人間関係は「辛党」の私には許しがたい、理解しがたい空間になっているというわけです。


 そして、私が何より我慢ができないのが、甘い二人が「メニュー」を選ぶのが遅いこと! 


 いや、本当に遅いんですよ。私は「ドリームクライマー」と「ラムレーズン」のダブルをカップで決めて、持ち帰りたいだけなのに、なんで30分も待つ必要があるんだと思い悩むわけです。そして、軟弱になり下がった男どもは、なんでさっさとメニューを決めることができないのかと、怨嗟の気持ちでいっぱいになるのです。店を去る時は不愉快な気持ちになるのです。しかし、しかしです。そんな私を満足させてくれる存在があるのです。それが17アイスクリームです。


 ということで今日は「31アイスクリーム」ではなく、私の愛する「17アイスクリーム」と「決定回避の法則」について話していきたいと思います!


 では最初に、「決定回避の法則」についてお話ししようと思います。これは割と単純な話で、経済学の結構常識の部分でもあります。つまり、商品の種類が多すぎると、人は何も選ぶことができなくなるってやつです。


 例えば、10種類のネクタイを売るネクタイショップと、50種類のネクタイを売るネクタイショップがあったとします。すると、10種類のネクタイショップのほうが売上が大きくなるのです。だから、テンプレラノベを棚にたくさん並べておくのは悪手なんですよね。はい。てことで17アイスクリームは、そんな「決定回避の法則」からできた商品だと思われます。


 さて、話は戻って「31アイスクリーム」の話。バスキン・ロビンスが31アイスクリームをひっさげ、日本に上陸したのは1973年。それを当時、最強の甘味店、不二家がバックアップする布陣でした。


 しかし、売上は伸びなかった。それもそのはず、アイスクリームの種類が多すぎてお客が迷ってしまい、「回転」が異常に悪かったのです。そして、その問題を解決したのが、1983年に発売された我らがグリコの17アイスクリーム。至高のアイスを17種類まで絞り込み、そして、回転を上げ、かつ、人件費を削減するために自動販売機で商品を提供したのです。


 まさに最強。経済学をちゃんと理解した人のマーケティング。だったはずのですが……ま、結果は皆様の知っているとおり……。


 結局、31アイスクリームは、客の回転の悪さを「粗利」を乗せる、つまり、値段を上げることでカバーし、高級路線に変化させたことが大成功。結果、業績好調に繋がり、今に至るというわけです。


 ほんと、世の中、理論通りにいかないなと思いつつ、右手に17アイスクリームのソーダフロートを持ちながら、一人、町の喧噪の中に消えてゆく私なのでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

決定回避の法則:17アイスクリームと31アイスクリーム まぁじんこぉる @margincall

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画