チェンバロ奏者のヒロインが奏でる音の響きが、きらきら輝く絵画を見るように心に届く——そんな美しい文章で綴られている。
博識で文芸に精通される作者樣の表現力はすばらしく、ヒロインの淡い恋心を繊細な言葉の旋律(メロディー)に乗せて読み手に伝えてくれます。
演奏の先にある、憧れの人との未来を信じるヒロインの心が甘く揺れて……なんとも切なくもどかしい。
憧れの人はどんな心で、どんな顔をして彼女の演奏を聴くのだろう。
早く聴かせてあげたい……読み手にそんな気持ちを抱かせながら、明るい未来へと余韻を残すラストとなっています。
蛇足になるのかもしれないけれど、演奏後の彼女と憧れの人の姿を覗いてみたい。
そんなもどかしい余韻も、この作品の魅力の一つなのかも知れませんね。