第8話 オリジナルグッズ作りの喜び

事業所での仕事は多岐にわたるけれど、その中で最近取り組み始めた「オリジナルグッズの制作」が、僕にとって新たな楽しみになっている。シール貼りやパッケージングなどの作業とは異なり、この仕事は創造性が必要で、自由にアイデアを形にできる部分が魅力だ。


最初にオリジナルグッズの制作を依頼されたとき、少し戸惑いがあった。僕は手先が器用な方ではないし、デザインやアートのセンスに自信があるわけでもない。でも、職員さんが「自分のペースでいいから、まずは楽しんでみて」と声をかけてくれたことで、少しずつやってみようという気持ちが湧いてきた。


制作するグッズは、事業所で販売される小さなアクセサリーや雑貨だった。例えば、手芸を使ったポーチや、布を使って作る小さな人形、オリジナルのイラストがプリントされたグッズなど、いろいろな種類がある。僕はまず、シンプルな布のポーチに挑戦することにした。


布を裁断し、形を整え、糸で縫い合わせるというプロセスは、手間がかかるけれど、その一つ一つのステップに集中することで、次第に楽しさを感じるようになった。手作りの温かみが感じられるグッズを作ることは、シール貼りのような単純作業とは違った満足感をもたらしてくれる。


作業を進めるうちに、もっと自分なりの工夫を加えたいという気持ちが芽生えた。例えば、ポーチの表面に小さな刺繍を施してみたり、アクセントとしてボタンを付けたりして、自分なりのデザインを考えることが楽しくなってきた。完成品を見ると、それが自分の手で作り上げたものだと思うと、なんとも言えない達成感があった。


ある日、作ったポーチが事業所の販売スペースに並べられた時、僕は少し緊張していた。果たして、このポーチを誰かが手に取ってくれるのだろうか? そんな不安があったけれど、数日後、職員さんが「みっちゃんのポーチ、売れたよ!」と笑顔で伝えてくれた。僕は驚きとともに、喜びが込み上げてきた。


自分が作ったものが誰かの手に渡り、喜んでもらえる。それが「オリジナルグッズの制作」の素晴らしさだと感じた。作業は決して簡単ではないけれど、作る楽しさと、完成した時の達成感、そしてそれを誰かが手にしてくれる喜びが、僕にとって大きなモチベーションになっている。


もちろん、うまくいかない時もある。デザインが思うように形にならなかったり、途中でミスをしてしまったりすることもある。でも、そんな時は焦らずに、また一歩ずつ進めばいい。職員さんや周りの利用者さんがサポートしてくれるおかげで、少しずつ自信を持って挑戦できるようになってきた。


これからも、オリジナルグッズの制作に挑戦し続けたい。自分のアイデアや工夫を形にすることの楽しさを大切にしながら、少しずつスキルを磨いていこうと思う。そして、いつかもっと多くの人に、自分の作ったものを手に取ってもらえる日が来ることを夢見ている。


(第8話 終)

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