第9話 静かな場所でのひととき

事業所での休憩時間は、皆で談笑しながら過ごすことが多い。けれど、僕は時々、静かな場所でひとりになりたい時がある。そんな時には、事業所の中でひっそりとした場所を探して、ひとりで過ごすことにしている。


静かな場所に身を置くと、心が少しずつ落ち着いていく。賑やかな環境も好きだけれど、どうしても頭の中がいっぱいになってしまう時がある。そんな時、静けさに包まれることで、心のざわめきが和らぎ、自分を取り戻すことができる。


ある日の休憩時間、僕はいつもの談笑には加わらず、事業所の一角にある小さなソファに腰を下ろした。その場所は普段あまり利用者が来ない場所で、窓から差し込む光が優しく、静けさが漂っていた。外では風に揺れる木々の葉音が微かに聞こえてくるだけで、心地よい静寂が広がっていた。


僕は、その静けさの中で、ゆっくりと深呼吸をした。頭の中に詰まっていた考えや疲れが、少しずつ解けていくのを感じた。ひとりになれる時間は、まるで心の中を整理するための特別な時間のように思える。何か特別なことをしなくても、ただその場にいるだけで、心が軽くなる瞬間がある。


事業所では皆が支え合い、和気藹々とした雰囲気があるけれど、こうして自分の時間を大切にすることも、僕にとっては必要だ。ひとりの時間を持つことで、午後の仕事にも集中できるし、リフレッシュした気持ちでまた仲間たちと向き合うことができる。


この日の午後も、静かな時間を過ごしたおかげで、気持ちがリセットされ、シール貼りの仕事に集中することができた。何事も、自分のペースで進めていくことが大事だと改めて感じた瞬間だった。


僕にとって、静かな場所で過ごすひとときは、休憩だけでなく、自分を見つめ直すための大切な時間だ。これからも、無理をせず、自分の心と向き合いながら、事業所での日々を続けていこうと思う。


(第9話 終)

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