第6話 昼休憩の小さな幸せ
事業所で働く日々の中で、僕が楽しみにしている時間がある。それは「昼休憩」だ。毎日の仕事の中で、ひとときの安らぎを感じることができるこの時間は、僕にとってとても大切なものだ。
事業所では、日替わりの定食が用意されていて、職員さんがそれぞれの食事を配膳してくれる。メニューはいつもバラエティに富んでいて、例えば、ある日はカレーライス、またある日は魚の煮付けやチキン南蛮など、毎回何が出てくるかが楽しみだ。
僕は料理の彩りや香りに触れることで、仕事の疲れが少しずつ和らいでいくのを感じる。今日のメニューは、唐揚げ定食だった。揚げたての唐揚げから立ち上る香ばしい香りが鼻をくすぐり、食欲が一気に湧いてきた。横にはたっぷりのキャベツの千切りとマヨネーズが添えられ、少し甘めのタレがかかった唐揚げは、柔らかくジューシーで、とても美味しかった。
食事をしているとき、利用者の皆さんや職員さんと、他愛のない話をすることも楽しみのひとつだ。仕事の話や、休日に見たテレビ番組のこと、おすすめの本や映画の話など、内容は様々だけれど、みんなで一緒に笑いながら話す時間は、心がほっとする瞬間だ。
特に、職員さんが持ってきた面白い雑学や、ちょっとした豆知識の話は毎回興味深い。先日は「ナッツが健康にいい」という話をしてくれた。食物繊維や良質な脂質が含まれていて、少しずつ毎日食べると体に良いということを聞き、早速家に帰ってからスーパーでアーモンドを買った。それ以来、僕の中でナッツは健康維持のパートナーになっている。
昼休憩の時間には、時折、事業所の庭に出て、外の空気を吸うこともある。季節ごとに移り変わる景色を眺めながら、ぼんやりと過ごす時間は格別だ。春には桜が咲き、夏には青々とした草木が茂り、秋には紅葉が色づく。冬には、庭に置かれたベンチに少し冷たい風が吹き抜けるけれど、その澄んだ空気が心を洗うような感覚になる。
ある日、庭で過ごしていると、一人の利用者さんが話しかけてくれた。普段はあまり話す機会がなかった人だったけれど、昼休憩のリラックスした雰囲気の中で、自然と話が弾んだ。その人もナッツを食べているらしく、好きな種類や食べ方について話し合い、盛り上がった。
その時、ふと思った。こうした何気ない会話や笑顔が、僕にとっての「仕事を頑張るエネルギー」になっているのだと。仕事そのものがしんどい時でも、昼休憩のこのひとときがあるからこそ、また午後の仕事に向かうことができる。どんなに些細なことでも、喜びを感じる瞬間があることは、とても大切なことだ。
午後の仕事が始まる前に、唐揚げの美味しさを思い出しながら、自然と笑みがこぼれた。そんな小さな幸せを感じながら、今日も自分のペースで進んでいこうと思う。
(第6話 終)
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