第9話
「すみません。私が余計なことを···」
「ううん、 気にするな。」
少年のすまない気持ちを和らげようとするようににっこり笑って答える少女。明るく見える顔の下にマグカップを握りしめている両手が見えた。
「...さっき、なんでそうしたのかっと言ってたよね?」
少女はカップをテーブルに置きながら言った。
「...」
「魔女だから。 それだけよ。」
「……はい。」
「さあ、スオウ。君は "魔法" って何だと思う?」
少年の前に顔を近づけた少女は、テーブルの上に指を組んで質問をした。
「魔法…?」
「ええ、魔法。思い浮かぶものがあれば、勝手に話してみてもいいわ。」
「...どうも不思議な能力のようです。アニメで見たように、魔法能力を持った少女たちが出てきて一緒に成長し、悪と立ち向かって戦う、そんな姿が魔法の力を持った人々の姿ではないかと思います。」
「フフッ、スオウ君も魔法少女が好きみたいだね?」
「そんなことないですよ!‥‥ただ魔法というのがそんなイメージではないかと思って..」
「でも顔が赤いみたいだわ?」
「....」
「フフッ。大丈夫よ。みんなそう思うだろう。魔法少女かぁ…」
雪の降る外の窓を眺めながら、少女は言った。その目には、なんとなく空虚さが映るようだった。
「神秘な力で人々を助ける存在だから、、そう見ると "魔法" というものに憧れを持ちやすいよね..」
「...」
「スオウ?」
「はい…?」
「魔法というのは、いや、魔法を使うというのはそんなにロマンなものじゃないわ。」
前に置かれた茶碗を両手でぎゅっと握りながら少女は言った。
「スオウ、四元小説について知ってる?」
「はい。古代ギリシャの哲学者が世界の起源について説明するために提示した理論だと知っています。」
「よく知っているわね。しかし、科学的に見れば間違った話だろうね?」
「はい、そうですね‥‥」
「ふふっ、そうよ。でも "魔法" という能力には適用される話なんだよ?」
少年は驚いた目で少女を見つめた。 少女はそんな少年の反応を予想したらしく、笑いながら話を続けた。
「魔法という能力は、水·火·土·空気。この4つのエネルギーが集まって発現するというの。だが、単純にこの4元素だけではその力を持つことができないと言いわ。」
「…ということは、"魔法" を使うためには、また何か必要なのでしょうか?」
「そう。スオウが見るには何だと思う?」
「うーん.. よく分からないです。」
少年は顔をしかめて答えた。
「フフッ、 正解はまさに人が持っている氣だよ。ある意味潜在的な可能性、能力とも言えるね。自然現象を構成している水·火·土·空気が人々が持っている気運と会えば、初めて魔法という能力を発生させるといううの。」
「...信じられません。」
「そうでしょ?私も最初は信じられなかったの。しかしある瞬間、他の人とは少し違うようだという異質感。魔法の力を持つようになる人々はそれを感じる時が訪れるようになるらしいよ。」
「..では、誰もがいつかは魔法を使うことができるのですか?」
「いい質問ね。スオウ君が言うように、人々はいつかは皆魔法の力を持っていると考えることができるよね。しかし、それは違うわ。」
「魔法を使える人は別にいるということですね。」
「わあ、そう。スオウ君は賢いね!」
少年の答えに上気した表情の少女だ。
「これは遠い親戚から聞いた内容だが、自然を構成する要素のエネルギーがよく集まる気運を持って生まれた人々がいるそうだ。生まれた時からそんな気運が集まるみたいだよ。」
「それならお姉さんも..」
「そうそう。でも、魔法を使うようになることは楽しいことではないわ。」
苦笑いしながら少女が答えた。
「他の人と違うということ。意図しなかったのに人々は私たちを時には恐れて、八つ当たりの対象にしたりもしたの。」
「....」
「辛いことがある時、病気になった時、人々を助けようとする行為が逆に異質感と恐怖を感じさせたんだ。この前、私もそんな経験をしたわ。」
話し終えた少女は頭を上げて外の窓を見た。その目にはいつのまにか涙がたまっていた。
「魔法を使って‥‥いや、魔女だから..疲れたんだ。」
「…お姉さんのせいじゃないでしょう!」
「...?」
少年が怒って言った。
「急にすみません。しかし、姉は人々を傷つけようとしたのではないでしょうか!」
「いや、私は…」
「そんなのありえないですよ! さっき初めて会った時、姉はいくらでも私を殺すことができたはずでしょう?でも、そうしなかったんでしょうか!」
その言葉に少女は少年をぼんやりと見つめるだけだった。
「魔女なら、魔法が使えるなら、みんな怖がるべきですか? そんなことないですよ! お姉さんはむしろ私を助けてくれたじゃないですか!」
「スオウ、私は…」
「誰もお姉さんの味方でなければ、私がお姉さんを守ってあげるから!これ以上一人で悲しまないでください!」
【しゃっくりッ!】
少女の顔がほてった。今にも沸騰しそうな熱い血が全身を速く疾走するのが感じられた。
「あっ、、」
少女の姿を見た少年の顔も熱くなった。今まで自分が何を言ったのか後で気づいた彼も、恥ずかしさに頭を下げるしかなかった。舞い散る雪を背景に、カフェの中ではいつの間にか2人の爆発しそうな心臓の鼓動だけが響いていた。
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