第1話
「重幸、また苛めされたの?」
「何でもないさ。 気にするな。」
「違うって何だよ。 お母さんのことが心配だから。」
少年の母親が言った。
「学校で大変なことがあったでしょう? 他にみんなが何て言ったの?」
「…違う、母さん。 お願いだからほっといてくれ。」
「まったく…ちょっと話を..」
「もう、ほっといてくれ!」
顔にようやくぶら下がってる丸の眼鏡。
傷の多いレンズの間から涙がたまっていた。 流れる涙を隠すように少年は慌てて外に出てた。
【クァーン!!】
今にも壊れそうな玄関を後ろにして走り出す少年。
家からどれくらい離れたのだろうか。
「…はぁ…はぁ…」
いつの間にか緊張が解けたのか、その場に座り込んだ少年の顔は真っ赤に焼けていた。 最大限我慢しようとしたが、赤くなった顔の上に涙が湧き出る。 涙が流れるのを感じる度に胸が溶けそうなようにずきずきとした。
「あれ、重幸でしょ?」
誰かが少年の名前を呼ぶ。
「おい、コラ。 なんで外で泣いているんだよ。」
嘲弄と無視に満ちた口調で発言し、少年のそばに近づいてくる3人。
「おい、『俺の目の前で見えたら殺してやる』と言ったんだよな。 人を無視するのか?」
「え、こいつ今泣いてるよ?」
「は?」
「綾野、止めてくれ‥学校で沢山やったじゃん…」
流れる涙を拭う余裕もなく、恐怖を抑えながら少年は訴えた。
「連れて遊んだことで、俺たちが友達に見えるのか?」
「自分のママと似ててゴミのように行動しているかもな。」
「おい、止めろよ~このままじゃ本当死ぬぞ?」
「え?死ぬって?」
「ハハハハ-」
重幸を取り巻く3人の少年たちが爆笑した。
「確かに。ゴミのような女のから生まれたゴミ物だから死んでもいいだろう?」
「一理あるな!」
「…やめろって!!!」
座っていたブランコを蹴って立ち上がった少年。 自分と両親に注がれる悪口に耐え切れず、あの3人に飛びかかった。
【パァッ!】
「この野郎!」
抵抗しようとする少年をあざ笑うよう、鈍い音と悪口が夕暮れの遊び場を覆った。
「はい。もう、終わりにしましょう!」
「…なんだ?」
暴力と絶望に満ちた夕暮れを破って聞こえる声のせいで、少年を巡った不良たちが一斉に音がした方に振り返った。
「そこの君たち、もうやめないかな?」
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