魔女物語
RNL
プロローグ
どの寒い冬の日。 高くて険しい崖で行われた戦闘で敗れた一人の少女が捕虜に捕まった。
「まゆみ。私はあなたが気に入った。今でも私たちの側につくつもりはないのか?」
一見聞こえても傲慢な声で少女に投降を勧めるこの男は魔法軍団の首長ー天根俊之。
「今まで君の活躍はあまりにもよく知っている。でも、君を削って傷つけるあの人間達の為に命をかける必要があるのか?」
「……」
続く言葉にも沈黙で一貫する捕虜。 見かねた俊之の策士が少女に話す。
「おい、テメーの活躍はよく聞いているぞ。魔女なのに、私たち「魔法軍団」をなくそうとする人間たちの側に立って、我らの兵士を殺してたな? しかし、それでも君が属している陣営の人はテメーを魔女だと、いつ裏切るか分からない奴だと貶めていた。 それくらいなら..」
「…黙れ。」
「は?」
怒りに満ちた瞳。 暗い冬の昼間にもかかわらず、少女の瞳だけはしっかりと輝いていた。
「…一緒にあいつらを殺して、魔法を持ったと恐怖に震え無視する世の中を変えてみるのが良いのではないか?」俊之が話した。
絶壁の下には少女ー「まゆみ」が所属していた軍団の兵士達がいたが、彼らは反撃もできないほど負傷した者が多いし、鋭い風がその体をすぐにでも裂いてしまうように傷へ入り込んでいた。
「まゆみちゃん…」
負傷した兵士たちを看護していた1人の修道女が少女の名前を呼びながら祈った。あの絶壁下の人たちのように、まゆみもまた長い戦いをしながらお腹が張り裂け、腕に鋭い刺し傷ができてまともに動くこともできない状態。
「もう一度聞くぞ。 我らに協力するつもりはないのか?」まゆみの勢いで後ろに下がっていた策士が尋ねう。
着ている青いコートは破れて血に染まり、その間を激しい冬の風が入り込んだので、彼女も苦痛を感じないはずはなかった。
「... お前らにつくくらいなら、いっそのこと死ぬ。」確固な意志が入った目。その目で少女ーまゆみは二人を見つめながら言う。
負傷のズキズキとした苦痛に耐え、はっきりと話す彼女の態度に、策士もとより俊之も一方では感嘆を禁じえなかった。
「……味方につかないなんて残念だ。 願い通りにしてやる。」沈黙を破った俊之は崖っぷちに少女を連れて行った。
「最後に言いたいことは?」
「…ない。」
【タンー!】
山全体が響く音と共に胸が熱くなる。 すぐにバランスを崩して険しい絶壁の下に落ちる少女。意識を失いつつ、少女ー「まゆみ」は下に落ち続ける。
「まゆみーーー!!!」この状況を絶壁の下で無力に見守るしかなかった軍団の人達が絶叫しながら少女の名を叫んだ。
(ああ、やっと死んだな。)
(辛かった‥)
(お父さん、お母さん…)
地球上の人間の中に魔力を持つのを我らは「化け物」、「魔女」と言う。
少女、「まゆみ」も生まれた時から魔女で呼ばれていた。ある瞬間、混乱の中で戦うこの少女の目には何故か悲しみが映っていた。
その物語は、今始まったのだ。
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