第2話
夕暮れの沈黙。 その沈黙を破って近づいてくる彼女の髪は1日差しにさらに輝いていた。
「..お前は何だ?」
重幸を最も積極的に苦しめた群れの親分ー綾野が尋ねた。
「初めて会う間柄なのに無礼ですよね。 失礼ではないでしょうか?」と女性は言った。
「‥ったく。誰が無礼だと言うのか?」
「これは私達の事だ。 用事がなければ行ったほうがいいぞ?」
女の答えが可笑しいかのようにそら笑いする綾乃と、その隣で手伝う一行。
「‥その少年が何を悪いことをしてそこまで苦しめますか?」
自分の行動を阻止しようとする綾乃一行を気にしないかのように、これから近づいて反問する女性。
「あなたが知らなくても良いことだって言っただろ? お前も同じようにしてあげようか?」
自分たちの行動が邪魔されることに大声で不快感を表現する残りの一行。 横から重幸が取り押さえられていた。実は、重幸が「捕まってきた」という言葉は間違いと言える。捕まって『歩いてくる』普通の人たちとは違い、重幸は全身の力が抜けた状態で頭がつかまり『地面に引きずられて』いたからだった。
「…同じ中学校の友達じゃないんですか? 今からでも止めてください。」
続けた苛めで少年の制服は泥だらけになって破れていたし、眼鏡は顔にかろうじてかかっていた。
彼女が見た重幸は、まるで『死んでしまった魚のように』見られていた。そのように、綾野たちは『人間以下の何か』として重幸を扱っていたのだ。
「…この女が!」
自分たちをものともせず答える女に向かって速いスピードで飛んでくる拳。
その時だった。
『-ハアッ!!!』
【カーン!!】
町中が響く大きな音と同時に、彼女に近づいてきた3人の少年たちが空に舞い上がった。
「え?」
「ウアアアア!!! 助けて!!!」
ついさっきまでのその気配はどこへ行ったのか、真っ青になった顔の3人が悲鳴を上げてもがいた。
「私たちが悪かった! 助けてくれ!!」
「遅れましたよ! さっき謝るべきだったんですよ!」
空中でもがく3人の姿を指揮するよう、女性は両腕をぱっと広げながら力強く叫んだ。
「ーうわぁぁぁぁ!!!」
『クァーン!』
女の行動と同時に、速いスピードで遊び場の砂場に落ちる三人。
「.....」
「どうですか、今ちょっと反省する気持ちになりましたか?」
遊び場の砂場に打ち込まれた3人に笑いながら近づいてくる女。
「なんだあれ?」
「うわぁ、怪物だ!」
「重幸! 今日は運がいいと思う!」
笑いながら近づいてくる彼女に恐怖を感じた3人が慌てて逃げながら叫んだ。
「大丈夫?怪我はないの?」
逃げる3人を後にして、重幸に彼女が近づいてきた。
「あの、私は..」
自分を救ってくれた見知らぬ女に答えようとしてためらう重幸。
「うん?どうしたの?」
気軽に答えられない重幸だった。
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