第4話

まだ暗い空の間から徐々に上がってくる朝日。 それを背景しに、夜明けを開くようなスズメたちの歌声がほのかに窓際に聞こえてくる。



「まゆみ、起きて!」


「うぅ…···もう少し寝る~」


「この子は?今日が新学期じゃないの? 降りてきてご飯を食べよう。」


「は~い、今行きますよ。」



パサついた髪を掻きながら席を立ち、朝食が用意されている居間に少女は降りてくる。



「おはようございます。」


「うん。よく眠れたの?」


「うん、父さん。」


「まゆみ、来たの? もう直ぐだから少しだけ待ってちょうだい。」


「はーい。」



10月の朝は晴れていて冷たかった。 開いている窓の間から吹いてくるさわやかな風は、「秋」という季節をしっかりと感じさせてくれた。



「今日が新学期だよね?」


「うん。」


「小学校に入学してもう半年が経ったな? 時間がとても早く過ぎるようね。」


「さあ、ご飯が来ました!」


「わあ! お肉だ!」


「今朝は肉? 久しぶりだな!」


「あなたってば! この前も食べたじゃないですか?」


「でもロースは久しぶりだし!」


「ハハハー!」


「いただきます!」




香ばしい香りの肉と共に少女、まゆみの家族らは和やかに10月の朝を迎えていた。



「ー速報です。 "魔法軍団"と名乗る正体不明の団体が今日、日本を占領すると宣言しました。」



まゆみの母親は毎朝テレビで放送するクラシックシリーズをよく見ていた。 そのようなプログラムが突然中断されるのは異例のことだった。


「…どういうこと?」


番組の特性上、突然放送が変わることはほとんどなかったので、父親は疑問に思った。



「大した事はないでしょう、お父さん?この隙を狙って······この肉は私が…!」


「それは私が決めて置いた物なのに‥!」


「そんなのないですよ!」


「.....」


言い争う親子の間で、まゆみの母親は黙って画面を見つめるだけだった。



「いや、そんな事ができますか? 指を何度か動かしただけなのに、暴風が起きますね。」


「一度は市民に脅威的に見せるために操作した映像と見られます。 詳しいことはもう少し分析をしてみないと···」


「…違う。」

固い表情で番組の内容を否定するまゆみの母親。


「お母さん…?」

小学校1年生だが、今まで母のあんな姿をたった一度も見たことがなかったまゆみは驚きながら母を呼ぶ。



「...!」

つい先まで娘と戯れていたまゆみの父親は、奥さんの態度に何か心当たりがあるようだった。



「まゆみ、よく聞いて。 あれは魔法だよ。 絶対に操作したりしたわけじゃないから。」


「‥そう。知ってるけど、お母さんは魔法が使えるから、あれが本物か偽物かが分かれるぞ。あれは本物だ。」


「…まゆみ?もし学校で何かあったら、すぐ家に帰ってきてね。 分かりますか?」


「はい‥」


「さあ、それじゃ食事でも続けようか? あなたは何かもっと食べます?」


雰囲気を変えるついでに、まゆみの母親は笑顔で言った。



「じゃあ、私はバニラアイスクリーム一つちょうだい。」


「私はジャガイモの煮つけ!」


「ふふ。こんな時はみんな子供みたいだよ。 分かりました!」





10月の初日。 これが少女にとって平凡な最後の日だった事は、あの時は誰も知らなかった。

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