第7話

涙谷ルイタニ。青い海のそばに雄大な岩山が延々とそびえ立つこの地は、長い時間をかけて自然が作り上げた傑作と言われている。海沿いを直接走ることができる海岸道路は、自然が本来持っている美しい曲線をそのまま生かしたドライブコースとして有名だ。


この道はルイタニという地名の由来となった涙谷山ルイタニやまを通過したが、晴れた夜にここから空を見上げると、数多くの星が美しく輝いているのを見ることができる。一説によると、この星は仙女の悲しい涙だと言われている。


……


どれくらいの時間が経ったのだろうか、少女の胸の奥から、心を疼きながら流れ出る熱い何かが次第に消えていく。



「...ありがとう。」


「.... いいえ、生きてくれてありがとうございます。」


震える少女の体をぎゅっと抱きしめながら、少年は言った。



「....」


「....」


やがて言葉を失った二人。心を落ち着かせると、いつの間にか抱き合っているお互いの姿を見つけることができた。



「...少し暑くないですか?"」


少年が顔を真っ赤にして尋ねた。


「ううん、暖かいわ。」


同じく真っ赤な顔になった少女は、首をかしげながら答えた。



「あ、こんな時じゃない!もっと寒くなる前に早く下りましょう。 歩けますか?」


「え? ええと...もちろん。」


「良かった! では、私についてきて、気をつけて下りてきてください。」



次第に赤く染まっていく空を背に、少年と少女は下へ下り始めた。


.....


「ここから少し進むとカフェが一つあるから、そこで少し体を温めた方がいいと思います。」


「えぇ、分かったわ。」


少年の言葉にバシッと笑みを浮かべながら答える少女。



二人が出す歩きの音だけが、静かで美しい冬の風景を埋め尽くして何時間経っただろうか。赤い夕日が姿を消し、キラキラと輝く星がその場を埋め始める頃。窓の向こうに暖かい光が、少年と少女に手を差し伸べていた。

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