第33話 生きる理由
033
どこから話そうか。
取り敢えず、あの日から3日経った事は記しておく。
雨杭は、あの日以降ずっと部屋に籠っている。
近くにあった別のビルで、だ。
自殺はしていないが、日に日に
『______今思うと』
もしかしたら
神はあの事を知っていたのかもしれない。
魔法が、初めから無いことを。
そして、それを知らさず俺達を止める為に
……あんな、回りくどい手段を使った。
神のみぞ知る所ではあるけど
けれど、多分、正しい。
『______なんて、思ったってどうしようも無いよな』
今俺達に出来る事は……多分、待つことだけだ。
俺には、彼女の心内も、悲しみも、苦しみも、分からない。
無責任だと、言われるかもしれない。
けれど
俺にはきっと
彼女は、救えな______。
「……あの」
『うぁッっちょっ急に!?』
椅子から転げ落ちる。
ゴロンゴロンと二回転したあと、壁に突っ込む。
『ったぁ……』
「ご、ごめんなさい」
上から声がする。
大分弱々しいけど______確かに、雨杭の声だ。
『……どした』
「……ちょっと、話したい事が……」
『……正直、人の相談に良い答えを出せる様な
「……それでも、」
『______成る程』
跳ね起きる。
服についた汚れを払って。
『分かった、話は聞こう』
俺は答えた。
034
『はい、ココア』
「ありがとうございます」
エントランスホール。
中央に置かれた机に、一対一。
『それで、話ってのは』
「……私は、これから……何を、すれば良いんでしょう」
『……』
「あの魔法を探す事が、私の生き甲斐になってました」
語り出す
「母親が死んだあの日から______私の、拠り所」
ポツリと
「……でも、生きる目的から、手段へ」
黒点の如く
「気付いたら、変わっていました」
「私の、希望」
「……それも、幻想だったんですけど」
「まやかしだった」
「只の、光だった」
「追い求めていたモノは初めから無く」
「追い付いた先には暗闇が広がって」
「もう次の
「全部」
「全部」
「全部全部全部全部______消えてしまった」
「目標も」
「手段も」
「希望も」
「理由も」
「生きる______理由も」
「生きる理由が」
「消えてしまった」
段々と、声が滲んでいく。
「だから」
ぐちゃぐちゃに成っていく。
壊れていく
歪んで
捻れて______
「私は、どうすれば良いんですか……?」
『……』
どうすれば、良いか。
生きる理由を失ってしまった少女に対して
俺はなんて声を掛ければ良いんだろうか。
多分、正解は無いんだけど。
俺は彼女に
生きる理由を上げられるのか
無理だ
出来ない
それは______俺の、役割じゃあ無い。
『……雨杭』
それは
『俺は、多分君の生きる理由を見つけれ無いし
______与える事も出来ない』
「……」
それは……
『______でも』
『一緒に探す事は出来る』
俺では無く、雨杭にしか出来ない。
『もし、自分一人で見つけれないなら……俺は君に付いて行く。
理由を見つけて、もう一度一人で立てる時まで』
自惚れるな。
自分が人を助けれるなんて、思うな。
『何度でも、支えて、支えて、支えて、支えて______支えよう』
雨杭は______強い。
彼女はきっと、俺と違って。
一人で立てる子だから。
「……告白、ですか?」
『……んなっ!?』
何をどう取ったら、そんな、こと、に……?
あれぇ?
少女漫画みてえな台詞吐いてる馬鹿が居るぞ?
『いや、違______や、雨杭が嫌いって訳じゃ無いけど……!?』
「……ふふっ、冗談ですよ」
『……あ』
笑った。
旅の時に、何回も見た。
あの笑顔だ。
「ありがとうございます、人喰さん」
『……その名前は止めてくれ……』
「そ、そうですよね!えっと、アレ……下の名前……な、なんで忘れ」
……あー。
そんな設定もあったなぁ、確か。
神が言ってたヤツか。
どうしたモンか……。
『……まぁ、物は試しか。
______雨杭』
「は、はい!?」
『事情はあんまし言えないけど、
多分この世界で俺の名前を知ってる人間はあのクソボケ親父と書店院だけだ』
「!?え……で、でも最初名乗って」
『あの時は多分良く聞こえて無かったろうから……今から名乗る!
めっちゃしっかり聞いてて!』
「わ、分かりました!」
『______っし』
そういえば。
人に名前を教えるのは、いつぶりだろう。
最後は、あの神様……いや、結局分からなかったんだ。
それじゃあ最後は。
誰だったっけ。
______まぁ、今は良い。
『俺の名前は______』
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