第2話
「異層、ね。聞いたこともないけれど」
「まぁ僕が勝手に呼んでるだけだ。好きなように決めればいい、少なくともここは深淵とは違うからね」
ここから先は強いモンスターがいるだけでは無いからな。
そう言いつつキッチンへ足を向ける。その動作に怪訝な顔を見せる5人に顔だけ向ける。
「少し長い話になるだろうから、お茶とか用意するよ、そこに座って待ってて」
「え、あ、はい」
「大丈夫、毒とか入ってないから。毒とか入れる前に殺せるしね、HAHAHA」
おっと小気味よいジョークはダメか(※個人の感想です)
淹れたてのお茶に最近作っていた簡単なクッキーを持ち、彼らが座る丸テーブルへ向かう。
「さて、どこから話したものか」
腕を組み、唸る。ぶっちゃけたところを言えばめんどくさい、というのがまっさきに思い浮かんだ。
「……………………長い話とか面倒だなぁ……詳しい話は配信でさせてもらうし、簡潔にまとめるか」
「いやいやいや!勝手にそっちで決めないでくださいよ!気になることたくさんあるんですから!」
「いや、面倒。後でやる」
はい、文句は聞きません。いーやーいーやーと耳に手を当てて話を聞きません。
文句が止まったので手を外します。
「では、僕は100年前の人間で竜を踊り食いして不老になってダンジョンで暮らしてます。終わり」
「……いやまてまてまてまてまて!」
|ツッコミどころが多すぎる
|100年前?
|ダンジョン生まれたての時期やん
|踊り食い!?www
|あの竜を?
|単身で街一つ滅ぼすバケモンを踊り食いかぁ……
|不老マジ?権力者大好きなやつやん
「にわかには信じ難いな」
「ま、そう簡単には信じて貰えないよね。でも竜を食った証拠はほら、そこで寝てる彼を治してあげたやつで分かるんじゃない?」
「……だがそれだってスキルの効果の可能性もある」
「うんまぁ間違ってないけども。君たち一回も竜倒せてないから分からないよね」
「喧嘩売ってんのか???」
「事実でしょ、正直竜倒せないのは仕方ないんだよね」
あれクソギミック持ちのボスだし。
「てか俺たちの動向を知ってるのか……?」
「うん、時折地上に出てるし、電子機器とか普通に使ってるしね」
「は?」
|未開の地に住んでんのにハイテク
|もっとウンバホ言ってろよw
|地上に出てるマ?
|普通に言ってるけど深淵を行き来してるってことだろ?
|日本最強パーティより上じゃん
|日本最強辞めたら?
「……100年前とノリ全然変わってないよね?」
「そうなのか?いや、知らねぇけどよ」
配信のノリは変わっていない、と言うよりは100年前を参考にしているからかな?
ダンジョンが発生したせいで多くの娯楽が真っ先に切り捨てられたから割と今の世界の娯楽って少ないんだよね。某花札屋とかの大手企業は細々とだけど生き残ってるっぽいけど。
後はネットの海で誰にも触れられずに残ってた動画やラノベとかゲームが生き残ったくらいかな。実物はもうほぼないね、大体モンスターに対抗する為の武器や兵器の素材になった。悲しいね……
「うーん、質問形式の方がいいのかな。それも後々の方がいいか。情報量多いし」
「それもそうかもしれんが……俺たちはこのダンジョンの秘密を探るために来たんだ、今ここで知りたいんだよ」
「秘密、ね。それがあれかい?スタンピードが起きなかった理由を知りたかったのかい?」
|あ、何となく察したわ
|?
|なんか知ってるのこの人
「そうだが……」
「それなら目的は達成してるよ?」
「なに?いや、そういうことか?」
「うん、僕がこのダンジョンに住んでスタンピードが起きた時に対処してたんだよ」
「……そうかぁ」
|やっぱりか
|スタンピードを単独で抑えてんのかよ
|今でも自衛軍が出ないと対処出来ないのに
|化け物すぎ
|しかも多分この人深淵からも守ってるよね?
|イレギュラーが登ってこないダンジョンとも言われてるってことは……そういうことなんだろうな
「ねぇ」
「ん?何かな」
ずっと敦くんが喋っている中、皆美さんが話しかけてきた。
「一つ聞きたいんですけど……私達って地上に帰れますか?」
「自力でってこと?」
「……それもありますけど、助けてくれるかどうかもです」
「うーん……自力なら無理、僕が送り届けるなら確実かな」
|だよね
|さすがに装備がボロボロすぎる
|というか深淵の次の層のここで装備腐ったのなに?
|雨腐りって言ってたしなんか腐ってんじゃない?
|な ん か
|いやそれ以外言いようがないでしょ
「僕個人の話は……ま、今後配信するから、少しここ異層の話をしようかな」
「あ、はい……そういえば配信ってどうするつもりなんですか……?」
「そのドローンくれない?お礼代わりとして」
「え、あ、まあ……いいですけど」
|配信してくれんの?
|異層とやらの話か
|絶対やべぇ情報だらけだって
|今後配信してくれんのか、少し楽しみだな
「ただアカウントとかないから使ってないアカウントもちょーだい」
「あ、じゃあ私のサブ垢使ってください。作っておいて放置してたアカウントあるんで」
そう言われドローンと繋がっているであろうタブレットを取りだして説明をしてくれる。
大体昔と変わりのない感じなのですぐに扱えるかな。
「ん、昔と変わってないみたいだし大丈夫そう。じゃあ異層の話をしよっか」
|wktk
|何その文字
|ワクテカ、だって。楽しみってことじゃない?
|へぇ
|古の掲示板ネタらしい
|100年前も俺たちと似てんのかね
「異層は僕が名付けたんだけど、理由があるんだよね」
「異なる層、それに相応しい何かがあるんですか?」
「ダンジョンってね、資源を発生させる宝物庫であり、地球の裏側に繋げる通路の役割を持つんだよ」
「……はい?」
|地球の裏側……?
|why?
|どういうこと
|さっきも言ってたよね
「地球って複数の世界が重なってるんだよね、テレビのチャンネルみたいにちゃんと電波を合わせなきゃ見れないんだけどさ」
「複数の世界……」
「んで、このダンジョンはいわゆるチューナーの役割を担ってる訳。ダンジョンを通る際に認識を歪めるんだ、別の世界を認識できるようにね。その過程として
「加工!?は?大丈夫なの!?」
|うぇ!?
|いつの間にか改造人間になってたのか
|やばすぎ
|さすがに嘘やろ
|どういうことだってばよ
「いや、じゃなきゃスキルなんて人が覚えるわけないじゃん?それに100年近くダンジョンに人は入り続けてて特に問題もないから気にしない方がいいよ?」
「いや、でも魔力というものがあるじゃないか。それを使って人はスキルを使ってるんじゃないのか?」
「そもそもシステムが違うんだけどな……別にそこら辺は今後異層を探索する上で探してもらうとして」
|まぁた中途半端な所で
|焦らしプレイがお好みで???
|いやん、ドSなの?
「変態共が……!こっちは真面目にふざけられてんだぞ……」
「まぁそうカッカするな。要はね、異層は別世界なんだよ。深淵まではまだダンジョンだった、こっからは先はマジで未知数。100年近くさまよってる僕ですら全容は掴めてない、資源の宝庫。元々魔力もこの先にある異層の資源だ」
「マジかよ」
「聞きたいことがある……スタンピードは異層が原因なの?」
「うーん、だいたいはダンジョンのせい?ダンジョンってかなり不安定な代物だからたまーになんか出てくるんだよね、それがスタンピード。ダンジョンって他の世界の不用品の集合体でもあるからね」
おうおうおう、だいぶ目が回ってきてるね。割とめんどくさい世界観してるよねぇ……でも事実なんだ。なんと言おうともね。
「んー、ここら辺で終わりでいいかな」
「は、いやいや、まだ聞きたいことが沢山あるんだが」
「いやぁ周期的に言えばそろそろ出ないと大変なんだよね……ほら、窓から見えるでしょ」
「あん……?あれは……なんだ?」
|何あれ
|黒い渦?
|なんか動いてね?
|キメェ
「雨腐りの沼はね、周期的にアレが世界の外からやってくるんだよね」
「なんなんだあれ」
「さぁね、生き物かどうかも分からないが……カビ、細菌、ウイルス、ありとあらゆる腐食に繋がる感染源でもある。ここはいずれ朽ち果てる世界」
「なに?」
「ダンジョンが繋がった世界は全て終わりへ繋がるナニかが起こる。この世界だとアレのせいで世界そのものが腐り落ち続けている」
立ち上がる、それと同時に身にまとっていた軽装から割と本気のスタイルへ。紫色のローブに金と銀で輝く8匹の蛇の装飾が巻きついた杖を持ち準備をする。
「さぁ行くよ、あれはこの世界に数ヶ月は滞在する。僕一人ならのんびり過ごせるけど、君たちはそうはいかない」
|あれ、皆美ちゃん鼻血出てないる
|ほんとだ
|他の人もなんか鼻血出てるけど
|俺も鼻血出てきた
「魂から腐らせるその存在は見るだけで負荷がかかる。画面越しにいる君たちにすらね」
|は
|は
|やば
|嘘やん
|え、このままどうなるん!?
杖をひと振り、6人それぞれが収まる球体の結界を構築し包み込む。
そして浮遊させることで僕一人でも移動させられる。
「じゃ、超特急で移動しようか」
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