第4話






 車輪が悲鳴を上げながら回転の速度を上げていくしていく。


 トロッコは次第に人ではコントロールできる範囲を超えた速度で走る。


「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!?!?!?」

「うるさいな、君たちのところのリーダー」

「昔っから絶叫マシン嫌いなのよね、私は好きだからいいけど」

「ふーん?お付き合いしてる系?」

「腐れ縁系ね、ダンジョン内で会った時から何かとお互いライバル視してるのよ」


 そう言いつついつの間にか乗せられていたトロッコの縁に肘を乗せて顔をその上に乗せた満月みつきは満面の笑みで景色を楽しんでいる。

 どうやら本当に絶叫マシンが好きらしい。


「おっ、そろそろ彼らがやってくるよ」

「彼ら?」

「トロッコレースだよ?対戦相手は必要でしょ?」


|ん?音増えてね

|なんかきた

|うっわなんか高速でピッケル振り回してる!?

|こっわ!!

|絵面がホラー!


『ぶははははは!!また来たのかケンタ!好きものだなぁ!』

「やぁ、ロッカー。今回は通り道として遣わせてもらってるよ」

『んな事なためにここ使うのお前さんくらいだっつうの』


 ロッカー。ここら一体の鉱山の元締であり、最強のトロッコレーサーである。技量だけなら僕とほぼ同等。勝負はほぼ5:5で均衡してるんだよねぇ。


『後ろの奴らは何もんだ?トロッコレースはやらんのか?』

「彼らはお客さんだよ、ね?」

「何が、ね?よ。何言ってるか分からないのだけど」


|何言ってるかわからん

|なんて???

|言語学者おらん?

|学者です、分かりません

|無能

|使えねぇな

|帰れ

|(´;ω;`)


 そういえば僕はいつの間にか言語理解できるようになってたけど、別の言語だったな。記憶の限りなら竜を食らったあとくらいから理解できるようになったんだっけか。


「じゃあ今回も勝たせてもらうからね」

『阿呆、ワレが勝たせてもらうわ!』


 体重をトロッコの前方へ移動させる。トロッコレースは基本的に魔法などの方法で加速するのは禁止。体重移動とコース取りで戦うしかないのだ。


 ま、結局はただのレースなのでダイジェストでいこう。




「おや!いつの間に僕の技を覚えたんだい?」

『前回やられたのが悔しくてのう!』


|速すぎる

|何今の!?

|トロッコが空中で回転してたぞ!

|縦軸に回るな、トロッコがよ



「ふふふ、もう抜かしてしまったね!」

『なんでそんなはや──お客人共か!』

「あらバレた、でも卑怯とは言わないでよ?君たちだって自分で採掘した鉱石入れることあるんだし」


|ズルだろ

|ズルくね?

|だからなんか加速止まらねぇのかよ

|基本下りばっかだもんな

|登るより降りる方が長いのになんで底が見えないんすかね


「おや、轢き殺してしまったみたいだね」

『脂のってそうなノックノックモグラじゃの、後で食うか?』

「いや、遠慮しとくよ、予定あるからね」


|いやあああ!

|もぐらさぁぁん!?

|ひょっこり出てきたと思ったら挽肉されてったぞ

|トラウマ不可避

|そういえばずっとみんな静かだけどなんでなん?



「うるさそうだから静音の魔法かけてるよ、解除する気は終わるまでないかな」


|ほんとだ、めっちゃ叫んでる顔が見える

|草

|草

|やっぱドSやろ

|ワロタwww

|お慈悲くれw




 結局勝負は決まらなかった。原因は途中のレーンが無くなっていたからだろう。あれはさすがの僕でも怖かった、久々に奈落に落ちるかと……


「いやぁ、危なかったねぇ」

「死ぬかと思ったぞ!」

「さすがに無理、あれは無理よ」

「…………」

「1人死にかけいるけど」

「ワ、ワシ生きとる?やっぱ天国とか言わんといてくれよ?」

「お兄ちゃん……生きてるから……うん……」


 全員生きてるし、死なやす死なやす。


「じゃあ地上行こっか」

「今のルート通らなきゃダメだったのか??」

「まぁね、ここ広いくせに外に出れるルートが端っこにしかないんだよね、だから端から端までのルートを辿ってたわけ」


 その過程をレースで楽しんだだけだよ。


「いやぁ、数年ぶりの地上だ。数年程度ならあまり変わってないだろうけど表立って帰れるのは初めてだ」

「そういやおめぇ資格ねぇのにどうやって出入りしてんだよ」


 リーゼントが話しかけてくる。おっと、リーゼントではなく皆人かいとくんだったね。ごめんごめん。


「隠密してるだけだよ、未だ深淵で生き延びられない人類如きに見つけられるわけないんだよね」

「さらっと上位者みてぇなこといいやがって……」

「少なくとも君たちが最高峰のパーティと呼ばれてるくらいなら僕には勝てないさ」


 これは何よりの事実。100年近くダンジョンに潜ってたらね、人からは外れるものさ。

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