第3話
「速い速い速い速い!」
「怖いって!」
「うおお、鼻血が止まらない!」
「お兄ちゃん大丈夫!?」
「お、おう。一応大丈夫だが……どういう状況だこれ」
騒がしいなぁ、顔を顰めながら深淵を駆け抜けていく。漆黒の中では僕の顔すら見えないだろうけど。
一応ここ君たちじゃ生き残るのに苦労する場所なんだけど黙ってられないのかね?
「もう少し静かにして欲しいな、如何に僕が強くても面倒な存在を相手にはしたくないからさ」
「え、あの謎の虎相手に瞬殺した烏間さんが面倒ってどんなやつ?」
「竜だよ、あいつらだいたいクソギミック持ちでさ」
大概は再生力がくそ高いとかだからまだ対処しようがあるけどね。
「強いんだけど強くないんだよ」
「どういうことよ、意味わからないわ」
「型にハマれば強いタイプって事。今の僕には対処の方法が踊り食いしかないんだよね」
「また出た踊り食い、それこそ意味わからないわ」
「そのまんまの意味だよ。あいつらは相手に食われたら再生しないって共通点があるんだよね……なんでか理由知らないけど」
だから引きちぎっては食べて、切っては食べて、殴り飛ばしては啜って初めての時は戦ったわけ。
「まぁそんなことしてたら歳を取らなくなってたんだけど」
「えぇ……」
ドン引かれるのはしゃーないけど、事実だからねぇ。
「そこら辺は今後話すからいいんだよ、後回し後回し」
「……さすがに慣れてきたぞ、お前面倒くさがりすぎな」
「そういう性分だからね、諦めて」
生まれつきこうだからね。必要だと思う行為ならやるけど、そこまで影響ないなら棚に上げて放置するスタイルだし。
「事勿れ主義ってやつね」
「そうとも言う」
さて、そろそろ──来たね。
「さぁて、みんな!楽しいアトラクションの時間だよ!」
「アトラクション……?」
「待ってくれ、情報量が多すぎるんだが!俺が死にかけてからの情報が多すぎる!」
「自然現象に待ってくれだなんて不思議なやつだな、諦めて」
「口癖なのかそれ!?」
楽しいアトラクション。そう形容したのは目の前の光景のせいだろう。
漆黒の空間を抜ければそこには馬鹿でかい谷の全てにレールが敷かれた空間が拡がっていた。
「深淵は滅んだ世界で継ぎ接ぎに作られた通路だ。深層までで加工が済んだ生き物がこの先で生き残れるかどうかの試金石にもなっている」
「デカくね?」
「ぜんっぜん奥見えないわよ」
「そしてここはおよそ鉱山が数多く存在した世界だと思う、他の世界へ鉱石資源を多量に輸出し、戦争を助長させることが出来るくらいには。だからこそ彼らは未だここで過去の栄光に縋っている」
突如として谷全てにある一定のリズムの金属音が響く。
ドッド・ドッド・ドッドッド・カン
ドッド・ドッド・ドッドッド・カン
小気味よいリズムのそれは彼らのご登場だ。
「炭鉱夫の代名詞、ドワーフさ。そう呼んでるだけだけど」
煤けた髭に、燃えるような赤色の髪。体躯は決して小さい訳でもないが大きい訳でもない、ただしその肉体を支える筋肉は金剛をも越える。そして両腕で持ったツルハシについた石突きを地面に叩きドッと鳴らし、ツルハシの先端で叩くことでカンと鳴らす。野太い声は洞窟の中にできた谷に響き、来訪者を知らせるだろう。
彼らは別に敵対的では無い、だが礼儀を尽くさぬものには過激になる。
彼らは独特の文化を持っている、その中でも独特なのがトロッコを使ったレースだろう。
命知らずがやる競技であり、全員が命知らずなので来訪してきた者にはトロッコレースをやらせることで仲良くなれるかどうかを探る。
「既に僕は通過済みだけど、楽しいから来る度にやってるんだよね」
「え」
「絶叫マシン……?」
「ちなみにだけどただのトロッコじゃないから速度は並だと思わないこと、むしろ物理法則すら多少違うから加速度も違うよ」
|は
|ドS!悪魔!鬼畜生!
|配信越しとはいえクッソ怖いんやが?
|……スタートらしき場所から高くねえ?
|オワタ
|\(^o^)/
|あ、また来ますぅ
|一人逃げたぞ!
|逃がすな!
|囲め!
|やめ、やめろー!!
|フハハハハハ、道連れじゃ
|あ、はじまあああああ
|こわ!!!!
|直角で落ちてるぅ!
「あははははははは!」
「うおああああおあ!?」
「怖すぎるぅ!」
「行きの時はこんなのなかったでしょおおおおお!」
「あ、死んだ──」
「おにいちゃんんんんんん!」
「もう無理ぽ」
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