第5話






 陽の光が目に入る。それと同時に周りからの視線が突き刺さる。


「うーん、さすがにここまで注目されるのは初めてだね」


 未だにデザインが変わっていないスマートフォンのカメラ部分を向けられ、撮影されていく。時折フラッシュが炊かれているが普通に迷惑です。

 一般の人、報道の人。様々な人々から注目される。100年前はなんにもない一般人だっただけに違和感すごいなぁ。


「無事に帰れたはいいけど……どうすんだこれ」

「あー、いい日差しだなぁ」

「おいたかし現実逃避すんじゃねぇ、リーダーを助けろよ」

「どうしようもないでしょ、俺らが深淵で死にかけて助けられた。それだけでしかないし」


 パーティ暁天ぎょうてんはどうやら現実逃避をしているらしい。


「日本は良くも悪くも温厚だったはずなんだけど、どう思う?」


 視線を前へ戻すと、そこには100年前より装備が物騒になっている警察らしき人物達が各々の武器を持ちダンジョン入口を囲んでいる。


「烏間絢太容疑者、貴方には無資格探索及び銃刀法違反、他多数の容疑がかかっている。署に同行を願おうか」

「妥当だね」

「では来てもらおう」


 配信を通して犯罪者が判明した場合は一部の人が通報している可能性がある。

 今回もそういった事例だ、あの情報量の中で資格を保有していないことを認識し行動する視聴者がいた。


 そして僕が今後活動する上で精算しなければならない罪でもあるだろう。


「いや、え、ちょ待ってくださいよ!」

「なんで大人しく連れていかれるわけ!?」


 大人しく警察の元に手を上げながら歩いていくと後ろからそんな声が聞こえてくる。

 それに加え、どうやら配信を見ていたであろう人達が口荒く警察の事を罵っている。


「そうだそうだ!暁天のヤツらを助けたヤツになんてことしてんだ!」「おかしいでしょ」「100年前の人なら法律知らんでしょ」「いやさすがにそれは通らんて、本人が時折地上に出てるって言ってたんだから」「そっか」「俺らの英雄の恩人だぞ!捕まえてみろや!」


 人ってあんまり変わらないね。昔っからそうだ、自分の感情の赴くままに他人を傷つけようとする。今の僕は犯罪者でしかないんだけど……仕方がない。


『「まぁまぁみんな落ち着きなって」』


 声に『気』を篭める、深淵の先にある世界で見につけた魔力とはまた別の力。意思が乗ることで指向性の力になるそれに鎮静の効果を乗せて喋る。


「あんまり言いたくないけど、現状の僕は犯罪者だからね。罪は精算しなければならない……それに多分こんなくだらない事で僕を牢屋送りにするつもりは無いでしょ、ねぇ?」


 僕を牢屋に縛り付けるのは大損失だと思うんだよね、本当にただ牢屋にぶち込むだけなら……日本には失望する。

 最もそんなことは無いと思ってるけど、ねぇ?


「そうだろう、天皇直轄部隊・近衛兵さん」

「なんの事だ」

「警察と言ってもね、君たちほど強い人って居ないと思うんだよね」

「そうか、じゃあ行くぞ。犯罪者」


 一人一人が上位の探索者並みの警察なんてここ数十年は見たことないけどねぇ、それにこの返事は否定もしないけど肯定もしないラインってところかな。

 かなり温情を貰えそうだ。


「じゃ、行ってくるね!」

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