第6話



「入れ」

「はいはい」


 警察の車に押し込められ、走ること数十分。乗っている間は一言の会話すらなかったが、彼らは無線機を使いどこかと通信をしていた。

 着いた場所は警察署、俺が潜っていたダンジョンは東京の渋谷だったので渋谷警察署とでも言うべきか。


「随分と物々しい警察署だね?」

「当たり前だ、警察署はもしダンジョンがスタンピードを起こした時に避難民を保護するための施設でもある。昔ほど甘い社会では無いからな」


 ただ外観がもはや駐屯地などと言うべき広さになっている。旧渋谷警察署、ね。


 大きく壁で囲われており、その壁の上には銃火器やら見たこともない宝石を組み込まれた魔法の杖を付けた台座もある。


「なるほどねぇ、要塞と化したわけだ。納得するけど、微妙な気持ち」

「……」


 そんな過去の自衛隊と遜色の無い、むしろ上を行く装備、そこに時代が逆行したような剣や槍を持つ姿の警察達を横目に案内に従って歩く。


 自衛隊に比べて設備が非常に良いであろう空間を後目しりめにたどり着いたのはなんか無駄に偉そうな一室であった。


 そしてその扉周辺を守っている存在は、天皇直属部隊の近衛兵が本気の警戒度でこちらを見ている。


「もしかして居るんだ」

「…………貴様には必要ないだろうが……武器は所持しているか?」

「手元には無いね、手元には」

「……まぁいいだろう」


 既にラフな格好に装備は切り替えているので手元には無い。でも武器がないとは言っていない。


「隊長、明らかに隠し持ってるはずです。何故通そうとするのですか」


 そう苦言を呈するのは扉の左右に立つ片割れ。もう一人も無言ながら同意の念を込めた視線を隊長と呼ばれた、自身を案内してくれている人物へ向けている。


「あろうとなかろうと関係ないからだ」

「はい?」

「目の前にいるこの男をドラゴンの数倍強い想定で居ろ。そもそも見ただけで分からぬなら鍛錬不足だな、後で新しくメニューを組んでやろう」

「は、いや!」

「新田巡査、只今をもって護衛任務から外れろ、実力不足だ。もちろん鎌田巡査もだ。返事は?」

「納得いきません!」


 そろそろやり取りがめんどくさいので手っ取り早く示すとする。刺激するのは多分ダメなんだろうけど、そんなん僕に関係ないし。


 魔力が奮起する。静かに立ち上がる魔力の奔流に隊長の男は溜息ひとつ、それに気づかぬ阿呆二人は未だに隊長へ食ってかかっている。

 右手の人差し指を天井に向け魔力を収束させる。そこに混ぜ込むように空気を練り込み、空間へ浸透させる。それと同時に圧縮していく。


「お前達……帰ったら地獄を見せてやるからな」

「何を言ってるんですか!こんなふざけた格好のやつが深淵の先に行けるわけ!……待て、貴様なんだそ────」


 余りに圧縮しすぎてプラズマが発生し始めた段階でやっと目の前の阿呆二人は気づき、指を拳銃の形にして狙いをつけた僕を見て咄嗟に防御態勢を取る。


「無駄にプライド高いようだから、その出鼻へし折っとくよ」

「やめ──」


「おしおきだべー」


 バリバリという音ともに2人の頭頂、髪の毛を焼き尽くす。


「は、は?」

「おま」

「隊長?今私たちどうなってますか?」

「いや」

「隊長……?」

「随分と愉快な頭になってる」


 半笑いの隊長、その目の前に強烈なフラッシュで目がやられて現状把握で来ていない2人が思わず刺激があった頭部へと手を伸ばし、固まった。


「え、いやまて」

「この形って」

「うん、似合ってるじゃないか。しばらくはそれで過ごしてみなさい……ブフッ……」

「あ、アフロになってる!?」

 

 凄いじゃないか、手の感触だけで髪の毛がボンバーしてることに気づけたようだな。


「今のを最低限は避けれるようになってから僕の事をバカにするようにしなよ?異層じゃあたまに居るからね、プラズマを認識してから余裕で避けるやつ」

「……デタラメを」

「もういいだろう、デタラメだろうがなんだろうが手も足も出なかったのはお前らだ」


 その言葉に俯く二人、ということで全員無視してドアオープン!


「やっぱりそうじゃん」


 居るじゃん、天皇。


「『地球の王』の称号返していい?」

「開口一番それですか……お断りしておきます」

「だよねぇ」









【後書き】


掲示板のデータ吹き飛んだので萎えて本編書きました、後でもう1回書きます。

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