第31話
レイが聖女に会いにいって一時間くらい。
戻ってきたらレイは私とカリンを呼んで影に聞かれないよう盗聴できないよう魔法をかけた後何があったか話してくれた。
その内容は予想外で何も言えない私と、それ以上にカリンが言葉をなくしている。
特級ポーションを見てほしいと渡され、鑑定すると間違いなく私が作ろうとしていた特級ポーションの効果が見えレイに本物であることを伝えた。
「じゃあ何か、聖女はライト殿下を守るためだけに動いてるってことか」
「そうなるな。ライト殿下には言うなよ」
「……信じらんねぇ。あの聖女だぜ?」
「それは俺も思ったが、別に全国民を助けたくて動いてるわけじゃなくあくまで殿下とミヤコのみ守りたいだけだと聞いて嘘ではないなと判断した」
大浴場で私とした会話のために聖女が私は逃がそうとしてる。
けどそれって今の今まで聖女は誰からも浄化について凄いと思われず生きてきたってこと。そんな悲しいことある?
もしかしたら言わないだけで思ってる人だっていると思う。けど、それ以上に浄化を当たり前と思う人が多いのかもしれない。
「俺はミヤコの護衛で、国の問題に関わるつもりないから聖女の言う通りこのまま出る予定だ。
カリンは好きな方を選べばいい」
「俺は……」
「ライト殿下もカリンが手を貸してくれるのは助かるだろう。聖女はうるさいからカリンも連れて行けって言ってたけどな」
「聖女は嫌いだし別にこの話聞いても嫌な女に変わりない。
けど……一人でどうにかできんのかよ。そりゃ勇者並みに強いけどよ」
聖女って勇者並みに強いんだ。そういえば魔物を討伐するって言ってたしそりゃ強いよね。
正直私も今の話を聞いても関わる気はなくて、というより私がいても役に立たないしむしろ邪魔な存在だから逃げろって言ってくれてるなら逃げるのが一番いい。
私みたいなモブが変な正義感出して邪魔するのって完全フラグなのよ。漫画ゲームの鉄板ネタよね。
だからこの国を出るのが一番私にできること。
けどカリンは違うよね。実力もちゃんとあって、聖女の心配してる。
多分本当はレイも。顔は無表情だけど、いつもより口調が強い気がする。こう、無理矢理納得しました感があるというか。
重い空気感でこんな気持ち言い出せるわけもなく、私はただカリンの決断を待つ。
「聖女はミヤコを守りたいって言ってたんだよな」
「ああ」
「意味わかんねぇ……」
ここまで困惑するくらいカリンから見た聖女はわがままなんだろうな。
確かに口調は強かったけど。
「ミヤコ、聖女との会話をもう少し詳しく教えろ」
「え……うーん……本当にただ浄化できるのが一人だけだから常に浄化してるなんて凄いし大変だなって話しただけだよ。
だってそうじゃない?周りから少し浄化遅れたら文句言われるしお金払うよう言えば文句言われるみたいだから大変だし」
「……」
「浄化遅れたら文句言うって結構キツいと思うの。だって聖女様だってやりたくて聖女になったわけじゃない。
聖女の役目をこなしてるのが当たり前だと周りから思われて遅れたら文句言われるなんて私だったら耐えられない。
だから凄いなって言った」
そもそも当たり前だったとしてもよ。
その当たり前になってるのは歴代聖女達が浄化してきたからじゃない。
それを遅れたら文句ってどんなクレーマーなのよ。
なんて私は思ったから凄いなって。
「カリンに後から勇者と聖女は選択肢が無いって聞いてますます思ったよ。
当たり前なら誰が勇者と聖女を労るのって。
それがこの世界の常識で当たり前で私が甘いだけだったとしても凄いんだよって思うのはおかしくないと思うの」
「……」
「みんなだってわがままで嫌な女だって嫌がってるじゃない。
じゃあどうして聖女様はみんなのために何かやってあげるのが当たり前なの?そこに心からの感謝をちゃんと伝えてるの?
別に過剰に持ち上げる必要はないと思う。
けど浄化が遅れたら文句言う、ただ対価を要求しただけなのに文句言うなんて、それでも浄化は続けてるなんて凄いじゃない!」
性格は過ごした時間が無さすぎるから分からないけど、個人的好き嫌いは置いておいても凄いには変わりない。
私の言葉にレイもカリンも黙ったまま。
「……と、言う感じのを言っただけなの本当。だからそこまで聖女様が私を思ってくれるとは思わなかった」
「心からの感謝、か」
「私は弱いしポーション渡すくらいしかできないから言われた通り国を出る方がいいと思ってる。
それにレイもここで何かあって護衛できなくなるってなるのは正直困るから一緒に国を出てほしい。
カリンも護衛するなら同じだよ。
ただ、カリンの気持ちを尊重する」
「……俺も出るよ国を一緒に。俺が今やりたいのはレイについていくこと、つまりミヤコの護衛。
聖女がいるなら安心だしな。実力は勇者並みだしよ」
実力勇者並みっていうのが凄すぎる。
「つーか、バケモン。単純にな。
魔法いくつ使えんだっけレイ」
「さぁな。ただもし冒険者になっていたらSSは確実だったな」
「それ。レイですらSギリだろ?
とんでもねぇよ」
聖女がとにかく強いのは二人の反応でわかる。
それなら私達は聖女の邪魔にならないよう国を出るのがいいよね。
三人で国を出ることを決め、とりあえず今後どうするかを話し合う。
せっかく借りたけど家はすぐ解約することにした。先払いした金貨は戻ってこないみたいだけどそれは仕方ないよね。
この国でポーション売れないのはかなり大打撃だけど、今は国を出るのが優先だからしょうがない。
殿下に言った方がスムーズだろうけど聖女が黙ってろって言ってるわけだしそこは聖女の言う通りにしないとね。
聖女は殿下のこと本当に好きなんだ。
たとえ婚約者を殺そうとしてると嫌われても、守れるならいいと。
叶うことのない恋なのに好きな人のために裏で守ってるなんてなんて恋物語なの。
「聖女様、私に会いに来たのは逃げろって言うつもりだったのかな」
「どうだろうな。真意は分からないが、嬉しそうだったからそうかもしれない」
「そっか」
「もう少し早くミヤコに出会っていたら……聖女も何か変わっていたかもな」
それは分からないけど。
けど、嬉しそうだったってそれだけで普段から当たり前だと思われていたんだと悲しくなる。
さらに酷いと侍女達が言ってたような悪口言われるわけでしょう。
本当私なら耐えられない。
「つーか、さっきミヤコ言ったよな。
俺も護衛するならって。つまり、俺を正式に護衛として雇うってことだな?」
「……そんなこと言った?」
「言った!俺は聞いたからな!レイも聞いたよな!?」
そんなこと言ってないようん。
今は試験中だからね。うん。
「さぁ、俺は特に聞いてないな」
「おい!」
「頑張れよ」
「いやだからさっき」
確かそんなこと言ったような気がするけど、気がするだから。
けど、初めの印象から結構ガラッと変わった。
レイがいない間でもちゃんと私の側を離れなかったし、後ろにいるよう言って守ってくれた。
孤児に対して思い入れが強くて守りたいっていう優しい心を持ってることも知った。
街の人が危険かもしれないからと守るため協力しようとした優しさを知った。
だから本当はもう護衛として雇っていいと思ってる。
ただ、レイの出した試験はちゃんとやった方がいいと思うから。
「これはこれ、それはそれ。試験はちゃんとやらないとね」
「……くそっ、駄目か」
「レイにちゃんと評価されなよカリン」
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