第3話
とりあえずお互い軽く自己紹介をして、カルロさんは現在35歳。
冒険者をしていたけど怪我をしてしまい引退してしまったそうだ。この森にいたのは、引退し食い扶持もないため自給自足をしており食料、つまり肉になる動物を狩りに出かけていたそうだ。
しかし、狩りの途中魔物に出くわしてしまい不意を突かれ武器が壊れてしまい麻痺属性の魔物だったため命かながら川まで逃げたらしい。
「本当に死んだかと思ったよ。しかし、君のポーションって凄いな」
「そうですか?」
「ああ。売ってるポーションと同じだが効く時間や治りが違う」
チート能力だからかな。そこら辺は街のポーションを見て徐々に合わせていかないといけないと思う。
「それに、アイテムボックス持ちだろう?ギルドのランクも高いんじゃないか?」
「ギルドはまだ入ってなくて」
「そうなのか!?」
「は、はい」
「そうなのか」
話してみると気さくで話しやすい。骨折しているため、近くの木を杖代わりに拾ってゆっくり歩いているんだけど、骨折してるの?ってくらいしっかり歩いてる。
鑑定してるから骨折してるのは間違いないはずなのに。
国までは野宿するほど遠くなくすぐ到着するらしい。
正直ホッとしてる。
あとは情報収集をできるだけしよう。まずはポーションの相場や種類から把握のために聞いてみる。
「ポーションの相場?
そうだな……種類は沢山あるからな。
初級ポーション、中級、上級とまず大まかに分けられていて、さらにそこから用途によって変わるな」
「なるほど」
「ミヤコがくれたのは初級ポーション、麻痺は若干値段がはるが手を出せない値段じゃない。
熱を下げるポーションと擦り傷のは誰でも買える値段だ」
麻痺は冒険者がよく買うが使う場面が基本戦闘中だったりするため値段はそこそこ高いらしい。
熱を下げるのと擦り傷を治すポーションは日常でよくあることなので、一般的にも手を出しやすく材料も手に入りやすいため値段はそこまで高くないみたい。
「ミヤコはポーションを売るために旅してるんだろう?」
「はい」
「もしかして初めての旅か?」
「そうなんです……」
「そうか……なら気をつけた方がいい。使用したから分かるが、君のポーションは俺の知ってるポーションより質が高い。
それ目当てに群がる権力者とかいるだろう」
眉をひそめて言うカルロさんにドキッとする。
やっぱりチートって凄いんだ。
群がる権力者とか怖すぎる。これ出会いがなくて街に行ってたらまずかったかもしれない。
願い事に出会いって入れておいて良かった。
「もし良ければ、俺がポーションを売ろうか?商人ギルドに登録をして」
「え?」
「君がポーションを作って俺が売る。正直今自給自足で暇してるし、助けてもらった恩があるからな」
「でも」
「元冒険者だから相場も知ってるし、どうだ?」
確かにありがたい。
何より相場を知ってるし、売ってくれるのは助かる。
迷ってる時だった。カルロさんが急に立ち止まり、顔色が真っ青になっている。
「カルロさん、どうし」
「……」
唇が震え、もしかしてポーションの副作用が?と鑑定でウィンドウを開くも、骨折以外何も増えていなかった。
目線は前を向いていて、私もその目線を追うと、少し離れた先に一つの人影。
見たところ男性のようで、黒髪短髪にスラっとした細身。
腰には剣のようなものがあり、こちらを真っ直ぐ見つめている。
「遺体がないから追ってみれば、麻痺はどうした」
「あっ……」
「カルロさ」
どうしたのか、と聞こうとした瞬間カルロさんは木の棒を突然私の首元に当てて背後に回った。
「えっ……」
「ちっ……」
「人質か?無駄なことだ」
何、何が起こった。
パニックになって動けない。
カルロさんもどんどん呼吸が浅くなり、木を持つ手が震えてる。
この人は一体何者なの。
そうだ、鑑定してみよう。鑑定を開き、男性を見てみる。
名前:レイ
職業:無職
体調:毒
……この人も無職!そして毒にかかってるんですけどこの人!
何が一体起きているんですか神様!
「めんどうな仕事をよこしたもんだ……」
「……」
「その女が助けたのか?」
「……」
「……ははっ、良かったな命拾いして」
口元に手を当てると、笑う男性に全身に鳥肌が立つ。ただ笑っているだけのはずなのに、全身の鳥肌に加え心臓がうるさく鳴り足が震えてくる。
今までに感じたことない全身が強張る感覚。怖い、という感情が全身を支配してくる。
「み、見逃してくれないか……やっと俺も手に職を持てるかもしれないんだ」
「職を?」
「この女がいればっ……!俺は今の生活から足抜けできる!そしたらあんたらの世話にはならねぇ!」
この状況ではパニックなのであまり冷静にはなれないけど、なんとなくカルロさんがヤバい気がする。
ずっと私のこと君って呼んでたのに急にこの女になったし、今の生活から足抜けって、自給自足から抜け出すって何。
いやまって、そもそも私は護衛してくれる人の出会いを願ったけど、それは仕事を探している人にした。カルロさんは手伝うとは言ってくれたけど、仕事を探しているとは言ってない。
いや落ち着け。手に職をって言ってたから仕事を探していただろうに違いない。
なのにこの不安はなに。怖いのと、不安が混ざって気持ち悪い。
「冒険者ギルドを追い出され、お尋ね者になっているお前が手に職を持てるとでも思っているのか?」
「くっ」
追い出された?怪我をして引退じゃないの。
しかもお尋ね者って言った。それって、指名手配ってことだよね。
あ、これ私が馬鹿だ。本当馬鹿だった。これは馬鹿だ。
自分の甘さを嘆いていると、男性が突然腕を振り上げ私の後ろにいたカルロさんが崩れ落ちた。
もう一体何、こっちはこういうの経験ないからパニックなんだけど。
恐る恐る振り向いて下を見ると真っ青で身体が痙攣してしまってるカルロさんが映る。
鑑定のままだったのでカルロさんのステータスが出て体調:麻痺となっていた。
ひゅっと喉から声にならない悲鳴が出る。
「こいつは、冒険者ギルドを追い出されたお尋ね者だ。
一人旅している奴を言葉巧みに騙す悪人」
「え……」
「ついてこい。あんたには何があったか証言してもらう」
男性はこちらまで来ると大きな身体のカルロさんを軽々と持ち上げ肩に乗せる。
どこまで信じればいいのか分からない。この人も無職だし。
って私も無職なんだけど。
「早くしろ。あんたもこいつのように麻痺にして運ばれたいのか?」
「い、いえすみません……」
逃げても無駄だよね。一瞬の出来事でなんでカルロさんが麻痺になったのかわからないし、怖い。
これは大人しくついていったほうがいい。そこで素直に何があったか説明しないと私もまずそう。
歩くこと感覚的には数時間。実際はどれくらい経ったのか分からないけど少なくとも居心地の悪さから長く感じる。
その間ずっと無言だし、カルロさんずっと呻いていて苦しそうだしで地獄だった。生きた心地がしないというか、冷や汗が全身から吹き出してるし胃から込み上げてる気持ち悪さに吐きそう。歩き続けたためか足も棒の様に痛く感覚が無くなりそうなほど。
しばらくすると大きな石の壁が見えてきてよくファンタジーで見るような、中心部に門があって、行列が出来ている。
これは、国に入るための行列なのかな。
男性はその行列を気にせずどんどん歩いて門まで向かうため、慌ててその後を追いかける。
というかこの人毒ってなってるのによく平気で歩けるよね。いや毒なんて日本で暮らしていた時は無縁だからどんな症状なのかすら分からないけど。痛みより気持ち悪いとかそういう症状なのかな。
ここで生きていくにはちゃんと症状も知っておかないと駄目だよね。それはあとで考えよう。
一応毒ポーションも毒消し草があるから作れるけど、必要ないかな。
改めて鑑定すると、体調:猛毒に変わっていて思わず「ひっ」と変な声が出てしまった。
「……なんだ?」
「あ、いえ、なんでも」
変な声を出したせいか男性は振り向くと冷たい目を向けてくる。
慌てて言えば、少し私を見つめた後前を向いて歩き出す。
ホッとしつつ、猛毒になってるということはこれ悪化してるんじゃないの。
毒の程度がわからないけど、麻痺で動けないわけだから毒も相当凄いんじゃないの。
門までやってくると、立派な鎧に身を包んだ門番らしき人に声をかける男性。
漫画でよく見るやつだ。ということはこの門の先にはお城があったりするのだろうか。
王様がいたりするのかな。
何か門番の人と会話をすると、兵士が私を呼ぶ。
「これは通行証がわりの判だ。腕を出せ」
「は、はい」
素直に腕を出すと、ハンコのような物を腕に押しつけられる。
少し熱い気もしたけど、それはすぐに離され、肌には紋章のようなものが赤く押されていた。
通行証がわりと言っていたから、本来国ね入るには通行証が必要なのはわかる。
「通れ」
中に通され、門を抜けるとそこは更に漫画で見るような街だった。
レンガなど使った建物に、そういえば市場が常に開かれてるって言っていたけど果物や野菜、お肉が並べられているお店や服など展示しているお店など様々な露店が開かれていた。
大きな街で、人も多く賑わっている。
人混みは私が住んでいた所と変わらないけど、賑わっていて楽しそうだった。
男性の後を着いていきながらも目線はお店や人々の服だったり目移りしてしまう。
そういえば私の服装は所々破けている。ボロボロだ。
ポーションを売ったお金で新しい服を買わないといけない。
そもそも今どうなるか分からないけど。やっと落ち着いてきて乾いた笑いが出てきてしまう。
しばらくすると立派な木造の建物にギルドと書かれた看板。その看板を挟むように剣が飾られている。
言語チートのおかげか、文字が日本語に見える。会話もできるしやっぱお願いに入れて良かった。
建物に入ると騒ついた音が一瞬静かになる。
何この静けさは。目線は一気に男性に向けられ、空気は重い。
やっぱり肩に大きな男を担いでいるから?
にしては重々しいというか。
ゴツい鎧を身につけてたり、かと思えば水着みたいな服装のお姉様がいたり、様々なんだけど目線は皆男性に向けられている。
冷たく、軽蔑するような目線を。
「よく顔出せるな。仲間を見捨てたAランク様が」
「ギルドマスターが情で仕事を回してんだろ?いいよな、元Aランク様は」
ヒソヒソ話してるつもりなんだろうけどバッチリ聞こえてくる。
この人も冒険者だったんだ。
無職になってるから引退したのかな。
「勿体ないわよねぇ、顔はいいのに冒険者として仲間を見捨てるタブーをおかすなんて」
「見捨てられた仲間は今も頑張ってるのにな」
よく分からないけど、聞かなかったことにしよう。
受付らしき所で何か話した後、すぐ奥の部屋に通されることになった。
カルロさんはギルドにいたスタッフに連れられて、私は男性と共に部屋へ案内された後ソファーに座るように促され腰を下ろす。
ドキドキしていると勢いよく扉が開く。
入ってきたのは目元に大きな傷があり、筋肉モリモリおじさん。
見た目40前後くらいで、男性に手を差し出す。これが漫画なら世の中の事情を全て把握していて、強くてかっこいいイケおじポジションの筋肉モリモリおじさん。
「レイ!よくやった!」
「どうも」
握手をしたあと、向かい側のソファーに腰を下ろしたおじさんは笑顔。
満点の笑顔。
「あいつは本当に厄介でな……元Bランクということもあってすぐ雲隠れしやがる」
「それはどうでもいい。この女がカルロの麻痺を治したのか知らないが一緒にいたから連れてきた」
「この少女が?」
「ああ。見たところカルロが目をつけただけだろうが連れてきた」
「ど、どうも」
ジロジロ見られて縮こまる私は声も小さくなってしまう。
というか少女って失礼な。成人済みだったけど今は何歳なんだろう。けど絶対少女ではないはず。
「君の名前は?」
「ミヤコと申します」
「ミヤコな。
突然で悪いがカルロと一緒にいた経緯を教えてくれるかな」
「わかりました」
ここは素直に話したほうがいいと思い、カルロさんと出会った経緯を説明した。
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