ご都合主義の世界でまったり旅〜ポーション作成チートあるのに脇役なんだけど!?〜

@nenenennn

第1話 


 聞き飽きたかもしれないけど、私の身にもテンプレの如くよく小説や漫画で読んでいた展開が起きた。


「すまない」


 感情のこもってない、棒読み。

 目の前には白いシーツに包まれているようなワンピース風の服に頭の上に輪っかが浮かび全体的に眩しい光を放っている男性のような女性のような綺麗な顔をした人が立っている。

 まつ毛も長く、肌が透き通るようにツルツルピカピカで髪は腰ほどまで伸びておりまっすぐストレート。

 男性なのか?女性なのか?気になるくらい綺麗。

 そもそも神様ってなんで都合よくいつも人型なんだろうと思う。


「間違って死亡した」

「……」

「本来ならば死亡から蘇生となるが、代わりの魂をすでに補充したためそれができなくなった」


 まだ何も言ってないし、なんなら声を出そうとしたが喉が張り付いたように熱く何も話せない。痛くも苦しくもないけど熱いという感覚はある。

 口をパクパクさせるのみで、会話が成り立たない。

 そんな様子を見て、目の前の人は続ける。


「そのため、願いを三つ叶えよう」


 よくある願いを叶えよう系。まず死亡理由を教えてくれない。なんで死んだのかも教えてほしいのに。病気なのか事故なのか、そもそも私の寿命は本来どれくらいあったのかとか聞きたいことは沢山ある。

 そもそも声が出せないのにどうやって願いを叶えようとしているんだろう。

 そんな疑問はこの不思議空間では意味がないようで、「声が出ずも思っていることが伝わる」と言われた。

 つまり今私が思っていることが筒抜けということだ。

 それもそれで嫌だし、意味がわからない。

 夢か、これは夢なのか。こんな思考がハッキリした夢は初めて。

 夢なら願い事は大きく出てもいいはず。

 でも待てよ?私は死亡したと言っていたし、蘇生ができなかったとか言っていた。

 それでどうやって願いを叶えるというのだろう。


「元の星で生き返ることはできない」


 生き返ることはできない、とか言われても。

 じゃあどうやって願いを叶えると。


「別の星で新たに魂を生成し、そこで願いを叶えることになる」


 別の星って。そもそも、私は地球にある日本で育った。日本生まれの日本人。

 別の星ってどういうこと。宇宙?火星?宇宙人に生まれ変わり?


「星には種類がある。そなたのいた地球という星は実に豊かな星であった。

 数ある星の中でもかなり大きい。そのため、資源も豊富で豊であったため魔物など不要であったが小さい星は資源が少ないため発展も遅く魔物などでバランスを取る星もある」


 ちょっと頭の処理が追いつかない。

 つまり、地球以外にも星は存在していて、その星でなら生き返らせるってことなのね。

 それにしても魔物ってゲームとかで聞くし本気で言ってるのかと思う。ただ他の星があるということはそんなに驚かない。地球という星が存在するなら他の星が存在していてもおかしくないから。

 ってそんなファンタジー脳はいいのよ。神様真顔だし、声に感情がこもってないからいまいち話がうまく頭に入ってこない。


「魔法、魔物などで弱肉強食のバランスをとる星などがある。資源は地球に比べると減るため魔法がないと生きていけない」


 魔法。夢物語代表の魔法が出てくるとは。

 あ、ちょっともう頭が痛い。別に科学のみ信じるとかではないけど、さすがにそれを信じることはできない。けど、これが夢なら少しだけ興味があるのも確かで。

 願いを叶える……。

 私が望むのはなんだろう。

 どうせならやっぱり異世界的展開ということで、チート能力を貰って無双。

 ……いや無双は自分の性格的に無理。

 だけどチート能力は欲しい。苦労はしたくないから正直。正直苦労して生きたくないのが本音。都合良いと言われても良い。

 ならどんなチートがいいかを考えてみる。

 資源が少ないって言っていたからできれば無理のない生活ができるくらいのチート能力が欲しい。

 なるべく物価などは日本に近いく あとはその魔法がある世界に興味がある。

 あるのだろうかそんな星。さすがにご都合主義すぎて有り得ないか。けどこっちは間違えて死んだわけだからご都合主義が通ってもいいでしょう。


「あるぞ」


 あ、あるんですね。世界は広いなぁ~と若干現実逃避したくなる。

 となると、物価だけでなく私が生きるためのチート能力が必要だ。

 よく見るチート能力は、魔力もMAXレベルMAX無自覚能力。でもそこまで過剰な能力はいらない。

 面倒なことに巻き込まれたくないし、できればスローライフを送りたい。

 スローライフとはいえ、生きていくにはお金が必要だろうし、お金を稼ぐためには一番何がいいか。

 頭がいいわけでもないし、人見知りだし、口数もそこまで多くない。

 魔法、魔法……魔法ということは、回復なども魔法にある?


「ある。そなたの希望するような星はいくつか候補がある」


 いくつかって、魔法使える星があることが信じられないレベルなのに。

 魔物、魔法ときたらポーションとかそういうのもあるのかな。


「ある」


 それは、魔法以外にも薬草だったり、薬草から作れるポーションなどもある?

 それにしてもポーションで通じるんだとふと思った。


「あるぞ。初級ポーションから特級ポーションなどあるようだな。

お前が他所の星で生まれ変わるのと同じで逆もまたある。

つまり地球に持ち込んだ者がいるということだ」


 なるほど。ということは地球には元々別の星で生きていた人もいるのね。

なんか不思議……。

と、そんな感想は後にして。

こういうので重宝するのって回復かな。ほら、現代も薬はやっぱり高いものは高いし。魔物がいるなら怪我はつきものだろうし。

 とにもかくにも、生きるならお金を稼ぐ必要がある。なら魔法ではなくポーションを売った方が将来的には安泰かもしれない。

 となると、ポーションが簡単に量産できるような能力があれば売ればなんとかなりそう。ただ願いを叶えると言ったけど、ポーションを作れるようにしてくださいだけだともったいない。一つ願い事になるべく多くの要望を詰め込んで一つにしたい。

 三つまで願いを叶えてくれるみたいなので言語はどうだろう。様々な言語があるだろうし、英語と日本語みたいな。ここもお願いに含むべきかな。

 どんな星になるか教えてほしい。


「冒険者が生計立てれる星だ。魔王もいるぞ。

 冒険者ギルド、商人ギルドもあり、魔物もいる。言語はその星に合わせたものになるが、エルフの言語や獣人の言語など種族の言語は分からない。そこはそなたで習得してもらう必要がある。

 魔物を討伐し、素材を集めたりなどもあるな」


 よくあるファンタジーの世界みたい。

 言語は分かるけどってことは人間に対してだけか……エルフや獣人もいるのは嬉しいけど言葉は通じないみたい。でも習得と言ってるから英語みたいな感じで勉強すれば分かるのかも。

 ……大丈夫かなぁ、私英語苦手だけど。

 三つのうちの一つは言葉が全部話せる聞ける見えるにしたほうが良さそう。つまり、全てが日本語に変換されるってこと。言葉の壁ってかなり高いからこれは最優先。

 あとはポーション作成能力と、最後は何がいいかな。

 一人でなんとかなるか、と考えてみたけどどう考えても生きていけるわけがない。

 実際これ三つってかなり厳しい。どうしよう。無人島に持って行くなら何を持って行くとかなら結構すぐ思いつくのに。

 もうちょっと質問をしてみよう。物価は?


「通貨は銅貨銀貨金貨となり、野菜が銅貨1枚から。

 肉は一切れ銅貨3枚程度か。質によるが、そなたの住んでいた所とあまり変わらないだろう。

 肉は比較的魔物から手に入りやすいため安い」


 銅貨銀貨金貨になるわけね。値段の数え方も似ているようで、分かりやすくて助かる。

 銀行や病院、スーパーとかは。


「預け場所はあるが、そなたのいた所ほど便利ではない。街に預け場所があるが、引き出しは預けた所のみとなる。血の契約をするため、手続きは簡単だがな。

 病院、というところはないがポーション売りが大多数しめている。場合によって専門の医師がいるが、薬師と兼任でポーションを売りながら診察しているようなものだ。その街によって変わる。

 スーパーなるものはないが、市場は常に開かれている」


 銀行と呼べるものではないけど、お金は預けられるわけだ。

 ただ預けた場所のみとなると、その場に留まる以外は難点かもしれない。

 ポーション売るというのは専門店があるということ?


「ある。薬師というのが魔法使い以外にも存在しており、どちらかというと庶民には薬師の方が身近な存在だろう。腹痛や頭痛がおさまる初級ポーションを売ったりしている。

 薬師じゃなくともポーションは売れる」


 薬師が存在しているらしい。

 ポーション売りなら医師ではないし問題なさそう。

 身分証だったり、そういう個人情報はどういう扱いなの?


「身分証は冒険者ギルド、商人ギルドで発行可能だ。

 あとはその国で発行可能だが、定住しないならばどちらかのギルドで発行した方がいいようだ」


 ポーションを売るなら商人ギルドかな。

 そこはいいとして、他に質問、質問。いや、とりあえずあとは現地で知っていこう。

 願い事をそろそろ固めたい。

 ポーション作成能力は絶対だけど、あとは何が必要か。

 そういえば、この星にはアイテムボックスなるものは?


「あるが、レアだな。上級魔法使いが所持しているくらいか。

 あとはダンジョンというのがあり、宝箱から出ることもある。

 そのためランクの高い冒険者は所持してることがある」


 アイテムボックスがあればお金も入れることができるしポーションも保管できる。特に魔物がいる世界なら身軽がいいだろうし、盗まれたりするのが一番困る。アイテムボックスがあれば被害が少なく済むだろう。

 となれば、アイテムボックスは必要。

 というより生活が楽になるセットはほしい。

 言語、持ち物とか。これを一括で頼むにはどう伝えればいいだろう。

 生活が豊かになれるセット?いやいやこれだけどまずいか。

 言語とアイテムボックスがあればなんとかなりそうだけど甘い気もする。


「生活が豊かになるセットというのは」


 生活するにあたって苦労したくない。人と商売するには言語はスムーズであったら楽だし、アイテムボックスあれば在庫を常に保てるから商売ができる。だから、セット。


「それで豊かになるのか」


 少なくともスムーズになる。言葉が通じなければ商売できないし、アイテムボックスがなければお金の管理が大変。これが解決するだけでかなり楽になる。


「ではそのセットは特別に聞き入れてやろう」


 太っ腹神様。

 となると、ポーション作成能力と生活を豊かにするセットの二つはほぼ決定。残り一つだけどどうしようか。

 身体能力を上げてもらうもいいけど、私は戦うことができないしそんな勇気もないから却下。

 でも、魔物がいる星ならある程度戦えた方がいいかな。

 うーん、悩む。

 旅をしながらポーションを売り歩くスローライフ。それを実現するには何が必要か。

 考えろ、よくある異世界系では何がある。

 そうだ、なぜか異世界にきてすぐ仲間ができる。しかもかなり強い仲間が。

 つまり強い護衛がいればスローライフを送れる。勿論無償ではなく、お金をちゃんと払う関係で、仕事として。

 できれば魔王を倒せるくらいの人。

 そんな人との出会いがほしい。強制とかではなく、たとえば冒険者を引退して別の仕事を探してるとかそういう利害一致できるような人との出会い。

 そうだ、そうしよう。その人に星のことは聞けばいいし、三つにおさまる。


 一つ。

 簡単ポーション作成能力を付与してほしい


 二つ。

 生活が豊かになるセット


 三つ。

 私の護衛についてくれる人との出会い。あくまで冒険者を引退し次の仕事を探している人で。ちゃんと仕事として引き受ける真面目な人で。


 これでお願いします。

 ドキドキしながら三つの願い事を祈ると、神様っぽい人は両手を広げる。


「三つの願い、しかと聞き届けた。目を覚ましたらそこからそなたの新しい人生だ」


 光が強くなり眩しく白く包まれる。

 同時に思考がぼやけて、意識は途切れた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る