第4話~魔王、農業がしたい~
わたくしの名はステラ。魔王様にお仕えする堕ちた女神のめいどでございます。
魔王様は海の暴君、クラーケンを討ちました。かつての魔王でさえ逃がしたあのクラーケンを完膚なきまでに焼き殺しました。そのお力は…魔王の中でも歴代最強…ではないでしょうか。
そして魔王様はアイアンクレスタの漁村を救い、支配下に置きました。小さなことからコツコツと…着実に小さき成果ではございますが、各地を支配してゆかれます。暴力と恐怖で支配するのではなく、その実力をまざまざと見せつけることで確実に支配する…歴代の魔王にはない政治力。そして、アイアンクレスタはクラーケンを討伐したことで多額の支援金や報酬をもらうことができ、セントフレメンスの農村の支援、セントフレメンスへの賠償金などで火の車に陥りかけていた財政をも救いました。
さらに、魔王様が切望されておりました新鮮な魚介類の数々…こちらを供物としていつでも捧げると言うことでございます。これはありがたいことですね。何せ…ここは内陸…魚介を仕入れることは難しいのです。エビにイカ。ムール貝など、あくあぱーっつぁに必要な材料も下さると言うことです。誠、嬉しい収穫でございます。
………
「魔王様…ありがとうございました。クラーケンを倒してくださったことでまた皆が漁に出られます」
「魔王さん、ありがとうよ。で…あんた何食おうとしてんだ?」
「クラーケンの足です…ペッ!くせえ!!!!まずいぞこのやろー!!!」
「お、おお…」
魔王様は…「あのクソイカ野郎がムカついただけ」と仰っていましたが…それが図らずも漁村の人々を救った…と言うことです。クラーケンを食そうと思ったようですが、ひどい臭いで食べられず、ご立腹です。
「魔王さん。よかったら新鮮なイカ食うかい?」
「え、いいんですか?」
「村のもんが今朝漁で獲ったんだ。クラーケンがいなくなったら沖にも出れるし、イカ漁もできる。それから、クラーケンを倒してくれたお礼だってさ」
「やったー!ありがとうございまーす!イカ焼きだー!」
「刺身もうめえぜ。それからエビも持って行ってくれってよ。ああ、魔王さん。あんたイカとか好きならまた来てくれよ。あんたは恩人だかんな。いつでも持って行ってくれていいよ」
こうして魔王様は新鮮な魚介をいつでも頂けるようになりました。これはわたくしもありがたいことでございます。お料理のメニューが増えますので。
「さっそくステラに捌いてもーらおっと」
「魔王様、よろしければこちらもお持ちくださいな」
「んー?貝?」
「はい!この辺りで採れたものです。新鮮ですよ!」
「おい、ムール貝渡すならこれも持ってけ。鯛だ。アクアパッツァを作るとうまいぜ。この地方の名物だよ」
「あっ、いいわね!ちょっと待ってくださいね!レシピを作ります!2人分でいいかしら?」
「おー、うまそうな魚!」
そして魔王様はあくあぱーっつぁのレシピを頂いたようです。これは本当に素晴らしいお料理です。魔王様もお気に入りでございますので定期的にお作り致しましょう。
そして魔王様はたびたび漁村を訪れます。それは魚介をもらいに行くのではなく、純粋に村人たちとの交流…そして、近況報告を聞きに行かれているようです。
「魔王さん、あんた器用だな…投網の修理は大変だかんなー。人手がいるから助かるよー」
「こうやって直すのかー。おもしろっ」
「おりゃー!」
「おっ、いいもん釣ったな!そりゃ魔王様が持って帰んな!」
「ありがとうございまーす!」
「ブハァ!とったどーー!!!」
「魔王様は泳ぎも得意なんですね!負けていられません!」
魔王様が村へ行くと皆さんが笑顔で集まられるとか…素晴らしい人心掌握。漁の道具の修理…漁のお手伝い…こうして村の人々の信頼を得ていきます。破壊と暴力だけでは…ここまで順調な支配は無理でしょう。魔王様は歴代の魔王とは違う支配のやり方を行っております。
むやみやたらに破壊をせず、人を殺さず。ですが、障害となる魔物や人間に関しては容赦がございません。魔王様に仇なすような人間は排除すべきでしょう。勇者が現れて魔王様を討ち滅ぼしに来るやもしれませんが…。
アイアンクレスタは騎士団の一部を壊滅させられましたが、此度のクラーケン討伐を魔王様が行われたことでひとまず魔王様に謀反を起こすことはないようです。クラーケンの報酬を全てアイアンクレスタに渡してしまいましたし、難が去ったことで一応、あの王は恩義を感じている様子。
セントフレメンスは魔王様がアイアンクレスタから救ったこと、そして援助をアイアンクレスタから出させたことでここも魔王様に恩義を感じているようです。まずは隣接する国から…じわじわと世界を支配していってくださいまし。
………
「ステラー。俺、農業がやりたーい」
漁村のクラーケンを倒してしばらく。魔王様が新たな試みに出られました。農業。世界で当たり前に行われている労働。田畑を耕し、作物を育て、自給自足をするのか…作物を売りに出して生計を立てたり、場所によっては税を納めるためのものとして扱われおります。
……魔王が畑仕事…?
「魔王様…それはどのような目的で…?」
「俺、元農民だからさー。畑仕事がしたいんだー。ニンジン育ててクレセントにいっぱい食べてもらいたいんだ」
「クレセントさんにですか…ふむ…ニンジンは魔王様もお好みのお野菜…」
「だろー!だから育てたいんだ!サラダが毎日いっぱい食えるように!」
魔王様は偏食のないお方。肉しか食べない。人間の肉しか食べない…わたくしの臓腑しか好まない…様々な理由で悩まされてきたのですが、魔王様につきましては、わたくしの臓腑を食べたい、ですとか人間の肉を食べるなどとは仰られないのでとても助かります。
そして、セントフレメンスの農村で頂くお野菜、お米、小麦。アイアンクレスタの漁村で得られる魚介。これらとゴンド様は持って帰って来てくださる牛、豚、鶏、うさぎなどのお肉と調味料を使えば毎日変化に富んだお料理を振る舞うことができます。魔王様もレシピをお持ち帰りくださるので新たなメニューも増えてゆきます。
わたくしはニンジンのすてぃっくさらだ、あくあぱーっつぁが好みですね。食に関しては困らなくなって参りました。魔王様とゴンド様には感謝でございます。
しかし…農業でございますか。魔王城に農業をする場所など…ありましたでしょうか?
「中庭!あそこだだっ広いから最高!花とかも育ててさー!この城、そういうのなくて寂しいし。花が咲いたらステラの部屋に飾ったりできるだろうしなぁ」
中庭…今は…と言うかわたくしが来た頃から荒れ放題です。中庭へご案内致しましたが雑草だらけでございます。
「すっげーボーボーだなぁ。よし、やるか」
「魔王様…一体何を…?」
「草むしり!せーの!ずぼーッと!」
草むしりをする魔王様…いえ…もはや言うべきでもないとは思います…。わたくしもお手伝いをせねば。
「んっ…んっ!抜けました…!」
「いいぞーステラ!無理はしないようになー。腰は大事だぞー」
「かしこまりました」
わたくし達は黙々と草を抜いていきます。ん?そういえばこの中庭には確か…!
「…!?魔王様!その草は抜いてはいけません!!!耳を塞いでから!」
「え?よっこいしょー!」
魔王様をお止めしようと思いましたが遅かった…その草を抜いた瞬間「ギエエエエエエエ!!!!!」と言う世にも恐ろしい悲鳴のような声が。そう…それはマンドラゴラ。抜いた瞬間に悲鳴をあげ、それを聞いた人間は死に至る。食べても猛毒、即死します。魔王様はまだ完全な魔王様ではございません。マンドラゴラの声を聞いてしまっては…!
「うるせえなこの雑草!!焼却炉君来ぉぉぉぃ!!!!オラァ!!お前みたいな雑草は焼却炉へドーーーーーン!!!!」
魔王様は悲鳴もものともせず、次から次へとマンドラゴラを歩く焼却炉へ放り込んでいきます。ギエエエエエ…と燃えていくマンドラゴラ達。魔法の国の魔法学者や好き者に売却すれば国が10は建てられるのではないでしょうか…。いえ…もっと、でしょう。
マンドラゴラは魔族に飲ませると強力な催淫作用があります。わたくしも気が狂わんばかりによがり狂った記憶がございます。1本で100年はよがり狂うほどの植物…人間でも少量ならば死ぬまで廃人となり、性奴隷にすることも可能でしょう。時には魔族の病を治すものとしても重宝されます。
魔王様が今焼却炉に放り込んだマンドラゴラは確か先代がわたくしを500年は弄ぶために育てた100年は育てていたマンドラゴラ…金に換算すれば本当に国が建てられるほどの金になるはず…ですがそれは、灰となってしまいました。次のマンドラゴラも70年は育てていたもののはず…わたくしならば軽く300年は性の虜になるでしょう。ああ、灰になってしまいました。
魔王様は庭に生えていたマンドラゴラ、猛毒草などを全て抜き去ってしまいました。そしてすっきりした中庭を見て笑っておられました。
「よし!これで後は耕すだけだな!」
「魔王様…お言葉でございますが、魔王が農業を営んだことはございません。ですので…畑を耕す道具と言うものがこのお城には存在致しません」
「まじかー」
どの魔王も魔王様のように精力的に働く存在ではございませんでした。怠惰を好み、飽きることなくわたくしをいたぶり、豪華な食事を貪り、美酒に酔う。そんな生活を続ける者ばかりでした。
「うーん、じゃあ鍬なんかを買って来ないとダメか。うーん…」
「魔王様、東の国、ハイデルヴルグに農業で生計を立てている町がございます。そこの農具は非常に優秀で壊れにくく、扱いやすいとのことです」
「そっかー!じゃあ買って来るかー!ステラ、ありがとうなー」
「ひゃっ!?」
魔王様はそう言ってわたくしの頭を撫でてくださります。魔王様が仰るにはご褒美、とのことでございますが…わたくしのような者に褒美など…恐れ多きものでございます。わたくしは魔王様の支えとなる者。それがわたくしの使命。当然のことでございます。
「教えてもらったり助けてもらったらご褒美をあげるのは当然!」
と以前魔王様が仰っておられました。わたくしは顔が熱くなるのを感じます…。
「ま、まおうしゃま…あのっ、その…お、お手を…」
「じゃあハイデルヴルグに行くかー!」
魔王様はひとしきりわたくしの頭を撫でたあと、どこかへ向かわれました。わたくしは呆然と中庭で立ち尽くしておりました。カタカタ…と言うゴンド様のお話になる音でわたくしは我に返りました。
「はっ!?ゴンド様…?魔王様はどちらへ?えっ!?馬房へ…まさか!?」
わたくしは慌てて馬房へと走ります。しかし、撫でてくださった頭を気にしておりますと柱にぶつかってしまい…転んでしまいました。
「きゃっ!?いた…はっ!魔王様!魔王様!!」
「ちょっと農具買ってきまーす!!」
「魔王様!お待ちください!お金は持たれましたか!?魔王様!魔王様ああああ!!!」
わたくしの呼びかけも虚しく、魔王様はクレセントさんに跨り飛び立ってしまいました。またしても…魔王様をお止めすることができませんでした…わたくしは…なんとダメな侍従…めいどなのでしょう…。
………
ハイデルヴルグの農業の町。さほど大きくはないが農業で発展した町。多くの農家がここへ勉強のためにやって来ることで有名だ。農具の質も上質であるし、もちろん作物も上質である。ニンジンからオニオン。じゃがいも。その他花などの植物の育成も盛ん。バラ園と呼ばれる場所があり、大変よい香りと美しいバラの花が咲き誇るハイデルヴルグの中でも人気な観光スポット。
「さーて、農具買ってー。野菜とか花の種買ってー。農夫に俺はなーる」
意気揚々と農具用品や種などを求めて町を歩く。町は畑なども多い。働いてる人に聞けば間違いない。そう思っていたのだが…。
「うん…しょ!よい……しょ!」
(……?何で大人があそこでダベってて子供が働いてんだ…?あの首の木のチョーカー、怪しいな。見たことあるぞ)
あの木でできたチョーカー。子供たちにつけられている。見たところ10歳くらいの男の子達。畑を見回すと子供たちが働いているところがほとんどだ。大人は仕事をしていない。
(……普通なら国の貴族とかが飛んできて大騒ぎになるはずなんだけどなぁ…ん?)
「オラ、さっさと歩け。ヒヒヒ」
「うう…」
「いやぁ…」
少女だ。美しいブロンドヘア。プラチナブロンドまでいる。顔つきも美しい。人間とは違う。何より、先端が尖った耳。
(エルフ?エルフはこんなとこにいるはずがない。各地の森で生活している。あの子達にも木のチョーカー…奴隷か。奴隷は世界の条約で禁じられているはず。しかも、何で大っぴらに町中を歩いてるんだ?)
エルフ。清らかな森に住まい、人間たちに干渉することなく。人間たちもまたエルフたちに干渉しない。そうエルフと人間の間で条約が締結されている。そして奴隷。これは全ての人間が平等にと言う約束事の下、世界条約で所持、売買が禁止されている。発覚した場合には即座に所有者、売人は死罪だったり永久に禁錮刑になる。しかし、この町では奴隷が働き、歩いている。町公認の奴隷?んなわけあるかよ。
(ふーん…この町、いろいろありそうだねぇ。とりあえず、この町自体が外道の巣っぽいし、いろいろと話を聞いてみようかな)
フォールは奴隷がこれだけ堂々と歩いていることが気になった。そして奴隷を買っている奴らがいる。外道共は…殺さなきゃなァ…!
「こんにちはー。すみません。ちょっと聞きたいんですけど」
フォールは働く子供たちを横目にだべっているだけのガラの悪そうな男たちに声をかけた。
「ああ?何だ、旅の人間か?何かようかい?」
「俺、農具を買いたくて来たんです。いい農具を売っているお店を教えてください」
「ふーん。それならここを行った先の大通りにいいとこがあるぜ。そこへ行くといい」
「ありがとうございます。それからー…奴隷を買いたいんですけど、どこで買えますかね?」
その言葉に男たちの顔色が変わった。見た目は騎士でもない。農夫だろうか。いや…奴隷を買いに来た商人か。馬鹿正直に…馬鹿だなこいつ。
「…知らねえな」
「じゃああの奴隷は何ですか?あの木のチョーカー、奴隷のチョーカーですよね?」
「大きな声で言うんじゃねえよ。俺らは知らねえよ。どっか行け」
(こいつら馬鹿すぎんだろ。自分達、奴隷を飼ってますって言ってんのと、どこで売ってるかを知ってるってことだ。まだここで事を荒立てたくないな…)
「わかりました。とりあえず、農具だけ買います!お金はいっぱいあるんで!」
シッシッと追い払われた。
(こういう時、多くの情報が集まるのは…好きじゃないけど酒場か。行ってみるか)
情報収集のために歩くフォールを見ながら、ヒソヒソと話をする男たちにはフォールは気づいていない。いや、あえて気づいていないふりをしているのだ。
………
「…いらっしゃい。何だ、旅の…商人か?」
酒場のマスターらしい男がぶっきらぼうに挨拶する。どうも農業の町の割には治安が悪そうな気がする。こっちは商人に見られている。鎧も着てないし剣も持ってきていない。好都合だ。
「何にするんだ?」
「とりあえず豚の山賊焼きー。あと麦酒」
「はいよ」
周囲を見渡してみても農作業者がいない。商人らしい男やゴロツキのような男たち。どうもおかしい。ステラが言っていた町とは違う町に思える。まあ、これなら話は早い。
「マスター、ちょっと聞きたいんですけどー」
「なんだい?」
「俺、奴隷を買いに来たんです。奴隷はどこで買えますか?」
何の捻りも隠すこともなく、真正面から奴隷の事を聞いてみた。瞬間、酒場が静まり返る。
(へえ…こいつらグルかな?)
「兄さん、大っぴらにそんなもん聞くんじゃねえ。貴族や騎士が飛んでくんぜ」
「大っぴらに歩いてるし、働いてるんだから大丈夫でしょ」
ニタァ…とフォールは笑ってみせた。
「………」
「俺、金だけは持ってるんです。畑がでかすぎて安い働き手がほしいんです。それなら奴隷が一番効率がいいなって。ブローカーとかいません?」
しつこく食い下がってみる。マスターは心底嫌そうな顔をしているが、金と言う言葉には反応していたことをフォールは見逃さなかった。
「んー、困ったなぁ…金はいくらでも出すから、働き手とー…きれいなエルフがほしいんだけどなー」
「俺は知らねえよ…」
チッ、使えねえな。それにこの山賊焼き、クッソまずい。ステラが焼いたやつが最高だなやっぱり。そう思っていた。米の盛られた器を持ち上げた時だ。紙切れが挟まっていたことに気が付いた。紙切れには地図が書かれており『ここに行け』と書いてあった。路地裏のバー。そこがどうも仲介所のようだ。
「ごちそうさまでした。ありがとうございました」
「お、おい!金貨1枚って!」
「おいしかったのでお礼でーす」
奴隷の仲介の紹介料も含めている。それと同時に、金にがめつそうな奴らを釣りだすのにもいいと思ったからだ。
(さて、ここからが本番かなー?)
酒場を後にするフォール。ガラの悪そうな男が何人か時間を置いて酒場を出て行った。
「こんにちはー。奴隷くださーい」
何かが腐ったような臭いのする路地裏のバー。ボロボロだ。とてもじゃないが営業しているとは思えない。そんな中にこんなことを言いながら入るフォール。普通ならば命が惜しくて近寄らない。そしてこんなことを言わないが、フォールは平気で言う。
「お前が町でうろうろ聞きまわってるって商人か。ヘッ、金持ってそうには見えねえなぁ」
「言ってくれればいくらでも出すよー。奴隷売ってくれー」
金貨がぎっしり詰まった革袋をチャリチャリと鳴らしてみせた。食いついたようだが素直には話してくれそうにない。
「なー、俺早くきれいなエルフほしいんだよー。教えてくれよー」
「へえ、金持ちじゃねえか。だったらよぉ…」
ダガーや麦酒の瓶を持って下卑た笑いを浮かべるゴロツキたち。
「有り金置いて町出てけ。テメエに教える話なんてねえよ」
「えー、ひどすぎない?酒場にいた商人共も奴隷商人だろー?あいつらには売って俺には売ってくれないの?」
「なめたこと言ってんじゃねえぞ!さっさと有り金置いて失せろ!死にたくねえならな!」
「ふーん…奴隷売ってくれないのかー…じゃあお前ら、殺しちゃおうかなー」
「馬鹿が。こっちは3人だぜ?これが見えねえのかよ?」
「じゃあボコボコにしたら話してくれる?」
フォールは退く気はない。たかだか3人のゴロツキなど、フォールの敵ではない。ゴンドが3人いたら…やべえなぁ…と思うくらい。
「テメエ…今言ったこと、地獄で後悔しろよ!!!」
3人が一斉に襲い掛かる。しかし、こんな連中はフォールの相手にもならない。あっと言う間に全員地べたを這うことになった。
「なあ、奴隷売って?」
「ひ、ひいい…」
「もう一回言うぞー。奴隷売って?じゃないと…お前の頭をこのままトマトみたいにしてやろうか?」
「ひ、ひいいいいい!!!あ、明日!明日の夜に開催しましゅうう!!」
「ふーん。それってエルフ?極上のエルフがほしいんだけど」
「あ、明日…は…出ます…ですけど…あんたらには買えましぇん…」
「なんで?」
「そ、それはぁ…」
「早く言えよ」
「ガアアアアア!!!やめ…ちゅぶれ…ちょ、町長です!町長と城の貴族様が金を出し合って買うからです!」
「国の貴族も関わってんのか」
ゴロツキ共が言うには、この町は町ぐるみで奴隷の売買をしていると言う。ハイデルヴルグの貴族がここに送り込んだ有能な奴隷商が町長なのだそうだ。貴族が管理しているので騎士たちはここには来ることはない。騎士たちや他の貴族が見回りに来る際は奴隷たちを隠すようにしているようだ。
そして、翌日の夜にはどこから連れてきたかわからないが、東の神聖な森から連れてきたと言うエルフの王女が売りに出されるのだそうだ。これを町長と貴族がグルになり、落札をし、遊ぶつもりらしい。そのためにこいつらはやって来た商人たちがどこまで金を出せるかと言う情報を聞き出し、それ以上の金を出して落とすつもりだ。八百長か。なめてやがる。
「じゃあ、やって来た商人たちはたっかい参加費を払わらされるだけ払わされて、その1人のエルフの女の子のために負けるんだ」
「そ、そうです…」
「外道だよなぁ。腐りきってるよなぁ…」
「で、ですから…商人さんも…帰った方が…」
「いいこと思いついた。お前さ…死にたくなかったら俺の言うことを聞け。じゃないと殺す」
「ひっ…ひいい」
「聞くか?聞かないのか?今死ぬ?後で死ぬ?」
「死ぬしか選択肢ないんスか…?」
「お前らがしっかり俺の言うことを聞いたら生かしてやる。町長と貴族は絶対殺す。俺の言うことが聞けないならお前らもまとめて殺す。魔王、嘘つかない」
「ま、魔王!?」
「で?死ぬ?」
「い、いえ…!」
「じゃあ交渉成立ねー。約束破ったら楽に死ねないようにしてやるー」
「は、はいいい…!」
こうして交渉(物理的に)は成功した。恐ろしい笑みを浮かべて「明日が楽しみだなぁ」と言って笑うフォールにゴロツキは今すぐ殺されるのでは…と白目を剥いて最後には気を失った。
………
「皆さま、お待たせいたしました!!!これより、オークションを開催いたします!!!今日は極上のエルフでございます!!!!」
うおおおおお!!と会場が熱気に包まれる。その中にフォールはいた。酒場にいたゴロツキはハラハラした表情でフォールを見ていた。フォールは意にも介さない。
(…あのてっぺんハゲが町長で派手な服を着てんのが貴族か。殺したくなるような顔してるなぁ)
ターゲットを補足したフォール。あれらは絶対殺すとして、まずは奴隷の子かな…。金銭感覚がおかしいフォールはとんでもない金貨を持って来ている。1人でもいい。目の前にいる助けを求めているであろう奴隷のエルフを放っておくことはできない。
「さあ、商品の登場です!何と今回はぁ…神聖な森のエルフの国の王女でございます!」
現れえたのはまだ自分よりも少し年下に見える女の子。プラチナブロンドの長く美しい髪。エメラルドブルーの瞳。白い透き通るような肌。高貴な印象に見えるその子は、明らかに絶望し、目の前で欲望にギラついた目で自分を見る男たちに怯えていた。
「何と美しい!これは絶対落とさせてもらいますよ!」
「いやいや、私が!」
俄然やる気を漲らせている商人たち。絶対に落とせない非売品を前に、やる気になっている。そんなに躍起になるもんかね。何より、汚らしい目をしてやがる。全員殺したくなるな。無機質な目で商人共を見る。
エルフの少女には優し気な視線を送る。ただ1人だけ篭った感情が違うためか、少女はフォールと目が合った。フォールはスッと微笑んだ。
「商人共の出せる金貨の上限はいくらだ」
町長たちが不正に出るならこちらも不正でやり返す。それを思いついた。なのでゴロツキ共の命と引き換えに参加する商人たちの出せる金額の上限を聞く。
「はい…商人たちは金貨500が限度のようですぜ…」
「じゃあ、町長と貴族は?」
「そうですね…貴族と組んでも…1000が限度でしょうね…」
「そっか。それだけ分かれば十分だ。生かしておくよ」
それだけ分かれば本当に充分だ。絶対の自信を持ってフォールはオークションに挑む。目標はこの子ただ1人だし。町長を見やる。下卑た笑みを浮かべてもう勝った気でいる。負けるかよ。俺は無敗の魔王様だ。
「それでは始めましょう!まずは金貨200から!」
「250!」
「270だ!」
オークションが始まった。フォールはまだ動かない。新入りと言うこともある。こいつらはどうも常連らしいからな。全員殺してやりたいが今は動けないし、こいつらはオオネズミのように涌く。潰しても仕方がない。
新入りは空気を読んで落札しない…そう思わせている。隣の商人はやらないのかい?となれなれしいし、息が臭い。殺すぞ。
「500!!!!」
「500が出ましたあああああ!!!」
いつの間にか白熱して500まできたか。まだ動かない。そろそろ、町長共が動くだろう。
「600じゃ!」
動いた。おおお、とどよめきがあがる。町長が動いた。お世話になっているから落とさせてやりたい。そう思っている商人が多いだろう。しかし、あれほど極上の女。しかも成人もしていないような貧相な体。あれを汚したい。そう思うと負けられないが…600ではもう誰も動けなかった。
「クソー!これは出せん!」
「俺もだ…」
「600!!金貨600枚でそちらのジェントルメンがあああ「おい」」
落札を決めようと木槌を打ち鳴らそうと司会者が手を振り上げたと同時に、1人の男が声をあげた。
「はい?あなたは新入りさんですね?何か用ですか?」
「そうじゃ、はようせい。儂のものじゃぞ!」
「俺はまだ降りるとは言ってないぞ。650だ」
「何ィ!?」
「ちょっと新入りさん!ここは空気を読むべきでしょう!」
「俺はあの娘が気に入った。だから是が非でも落とす」
「くうぅ!!700だ!」
「750」
町長が声を上げた瞬間にフォールも金額をつり上げる。フォールはまだやる気だ。退く気はない。
「くうう…820!」
「820出ましたああああ!!?!?!」
「850だ」
「850!!!過去最高の金額が出るかあああ?!」
「き、貴様!!!金はちゃんと持っているんだろうな!?」
「持ってるから言ってるんだ。降りるのか?」
「900じゃあああ!!」
「950」
うおおおおおお!!!
会場の盛り上がりは最高潮だ。恐ろしい金額に戸惑う商人もいる。フォールは涼しい顔をしてまだやるぞ、と言う状態だ。
「おのれぇ…貴様…儂を誰じゃと思っとる!」
「知らねえよ。早くしろ。降りるのか?やるのか?」
「くううう…1000じゃ!!!」
「1000来ましたアアアアア!!!過去最高記録タイです!!!」
「どうじゃ小僧!!!これで儂の勝ちじゃああああ!!」
「1500」
「せ、せんごひゃくうううううう!?!??!!落札です!!!過去最高記録の金額で!!!!紅い眼の若い商人さんが落札でえええええええええええす!!!!!!」
喉が裂けるんじゃないかと思うくらいの声量で司会者が叫び、木槌を振り下ろした。司会者はどうやら町長とグルではないらしい。ふう…まだだ。まだ殺すな。フォールは町長達に溢れ出る殺意を抑えながらオークションを終えた。
………
「たしかに、金貨1500枚ですね。今後ともご贔屓に…!ほら、さっさと行け」
「は、はいっ…」
金貨を支払い、プラチナブロンドのエルフを手に入れた。資金に関してはフォールの金銭感覚がだいぶおかしいので事なきを得た。少女はガタガタと震えており、今後の未来を想像して顔を青くしていた。
(心配ないよ。君に酷いことはしない。ここから逃してあげる)
「ふぇっ?」
少女が声をあげる。今日はもうどうしようもない。宿屋に連れて行って休ませるか。そう考えて会場を後にしようとした。
バタン。ガチャ。ガチャ。
ドアが閉められ、鍵も掛けられた。そして、ゴロツキがフォールと少女を見て笑っている。手にはダガーや剣などを持っている。そして、下卑た笑みを浮かべた町長と貴族がやってきた。
「逃がさんぞぉ、小僧ォ…」
ひっと少女が声をあげる。震えが増す。フォールは冷めた目で町長達を見る。
「儂のエルフをまんまと…そいつは返してもらおうか」
「なんで?」
「儂が落とすはずだった娘だ!そんな極上のエルフを手放してなるものか!」
「この娘を手に入れてどうするんだ?畑で働かせるのか?」
「そんなわけあるか!バカか貴様は!その娘は儂と貴族様で共有して遊ぶのだ。犯し甲斐があるだろぉ?貴様もどうせ遊ぶんだろう?」
「お前らと一緒にすんな。この娘をどうやってここに?」
「儂らが金を出して雇った野盗に国を襲わせたのよ!!!大量に人間を投入してなぁ!女王も連れてきて親子で楽しもうと思ったが…思いの外抵抗が激しくて殺したよ!そいつの目の前で!護衛も!母親も!そいつの国は滅んだよ!!」
「う、うううう…お母様……みんな…」
「そう…か」
ギリリ…と拳を握りしめる。あー、もういっか。そろそろ……。
「だったらなおさらこの娘は渡せないな。お前らみたいな外道…ド外道に渡す気は絶対にない」
「ククク…馬鹿な判断だ。ならば命と引き換えにそのガキを置いて行ってもらおう。貴様、金も持っているな。その金も頂くとしよう」
「うるせえ…お前らこそさっさと失せろ。俺がブチギレる前に…」
「愚かですねぇ…わからないのですか?これだけの数の凶器があなたを襲うのです!死にたくなければ彼女を渡しなさい」
「元はと言えばお前が…お前とそこのハゲがいなけりゃこの町も変なことにならなかったし…この子も不幸になることはなかった…!」
「何を言っているのですか?まさか…私達のことを嗅ぎつけた他国の貴族ですか!?」
「何じゃと!?貴様、どこぞの国の犬か!どこの誰じゃ貴様!名を名乗れ!!」
町長がそう言い終えると、もういいや。殺そ。フォールの頭の中でプツンと言う音が聞こえた気がした。
「俺は魔王だ…!よくもこの子の親を殺してくれたなァ…テメエら頭捻り潰して、全員地獄へ送ってやる!!」
数人の外道と町長、そして貴族相手にフォールが吼えた。今回は首を置いていけとは言わない。全員めちゃくちゃにしてやる構えだった。それほどまでに頭に来ていた。容赦なく殺す。
「相手は丸腰じゃねえか!全員やっちまえ!!!」
毎度のことながら彼らは相手の力量が把握できていない。把握できない。魔王と言う言葉は信用できないだろうが、自分と相手の力量くらいは把握できないとすなわち、死である。フォールと言う絶望を引っ提げた死神相手に健気な武器を持って襲い掛かるなど…自殺行為だった。
「愛と正義の魔王パーンチ」
「けぺっ!?」
魔王のパンチがゴロツキAの顔面に命中。ゴロツキAの頭はスイカのようにはじけ飛んだ。
「勇気と希望の魔王キーック」
「おごっ」
魔王の回し蹴りがゴロツキBの横腹を捉えた。ゴロツキBは両断されてしまった。
「えーっと…努力と友情の魔王チョーップ」
「えへ?」
魔王のチョップがゴロツキCの脳天に炸裂。ゴロツキCは頭から縦に両断された。
「ネタ切れだこのやろー。魔王投げだー」
「おわっ?!ブベラ」
ゴロツキDを壁へ思いきりぶん投げた。ゴロツキDは壁にへばりついて弾けた。
ようやくこの男の恐ろしいまでの力と強さに気づいたゴロツキ共は逃げ出そうとする。しかし、自らで鍵をかけてしまい、慌てているのか思うように扉が開けられない。
「まてまてー。お前らは宣言通り握りつぶしだー」
「ぷぎっ」
「ぶひっ」
頭を握りつぶされる。強靭な握力は人間の頭などトマトをつぶすくらい簡単だった。
「な、なんじゃ…き、貴様は…」
「ひっ!?」
「だから通りすがりの魔王だって言ってんだろうが。国を滅ぼして…親を殺してまでこの子がほしかったのかよ、テメエら…」
「だ、だったら何が悪いのじゃ!?どの国でもエルフを望む奴らはいくらでもおる!儂らはその需要を満たしてやっておるだけじゃ!」
「じゃあ何でこの娘は自分達で楽しもうとしてたんだよ…!」
「儂らも同じじゃ!良いものは独占したいものだろう!?それの何がブギャッ!」
「テメエ黙れ。もううぜえ」
町長に蹴りを入れて黙らせる。サウンズアスールの時もそうだったが、こいつらの身勝手な理由で好き勝手殺して奪っていく様が気に入らない。ひどく気に入らない。そのせいで俺はこうなったわけだし、ステラだって心にも傷を負っている。それが許せない。だからこういう奴は殺した方がいいんだ。
「おい貴族。お前、エルフの国を金使って滅ぼしたろ。その滅ぼした連中はどこにいる?」
「ひいいい!知らない!わた、私は単にエルフを仕入れただけだ!!!あいつらのことは知らん!」
「嘘つけよテメエ。嘘をついている目してるよなァ!?噓つきは舌を引っこ抜かれるんだぜ!」
「あが、あがががが!アバーーーーー!!!」
フォールは力づくで貴族の舌を引きちぎった。大量の血が噴き出し、貴族はそのままのたうち回って死んだ。しまった。怒りに任せて殺してしまった。こいつからは聞き出す必要があったんだけど。まあ、いいか。
「な、なんてことを…貴様…貴族様を殺して…どうなるかわかっているのか!」
「知るかよ。それよか自分の身を心配した方がいいんじゃねえのか?雇われ町長。テメエらは子供の未来を奪ってエルフの穏やかな生活を奪った腐れ外道だ…首置いてけええええええ!!!」
「ギヤアアアアア!!!!!」
グシャリ。首を置いていけではなく、首を踏みつぶしてしまった。辺りは濃い血の匂いで満たされる。そんな中、フォールはエルフの娘に返り血まみれの状態で笑った。
「もう大丈夫だ。君を元をエルフの国に連れて行ってあげる」
「え…あの…も、もうわたしの国は…」
「ないのか…じゃあ、他のエルフの国に保護してもらおう。王女なら問題ないだろ?」
「いえ…それが…エルフの国は過去の問題から…ほかのエルフの国の者には排他的です…ですから、わたしは形式的に保護されても、排除されるか…追い出されるか…どのみち、死ぬしかありません…」
「…なんだそりゃ」
同じ種族。しかも王女と言う身分がある娘でもそのような差別があるのか?エルフも一筋縄ではいかないのか。人間と同じで…汚い根性に成り下がっているのか。このまま彼女を放っておくわけにはいかない。方法は、ただ一つ。
「じゃあ、うち来る?」
「えっ?」
彼は笑いながらそう言った。
………
魔王様が農業の町へ行かれて2日。何かあったのではないかと心配で仕方がありません。アイちゃんさんも途中から姿を見失ってしまったがため、魔王様の行方がわからなくなってしまいました。
わたくしは頭を触りながら魔王様の安否を心配する以外ありません。ゴンド様も動くに動けず、困り果てております。
ああ、魔王様…魔王様との生活は…これでお終いなのでしょうか?安寧の日々は終わり…また新たな魔王に…。
「いや…」
わたくしはその生活を想像し、言葉を漏らしてしまいました。この時まだ、わたくしは魔王様に依存をし始めていると言うことに気が付いておりませんでした。たった数ヶ月だと言うのに…わたくしにとっては一瞬の時間だったと言うのに、時間の流れが長く感じております。それくらい、魔王様との生活は…楽しい、ものだったのでしょう。ゴンド様に捜索をお願いしようかと思っておりましたら…。
「ステラー、ただいまー。ゴンドもただいまー」
陽気な声が聞こえます。それは紛れもなく…!わたくしは駆けだしておりました。躓きそうになりながらも駆けだします。
「魔王様!!」
「ステラ、ただいま。遅くなっちゃった。ごめんごめん」
「……魔王様。おかえりなさいませ。ですが…外泊をされる際は一言仰ってくださいまし。城主が無断でお城を空けられますと、何かあった際には…」
「うん、ごめん。本当にごめん。あと、金貨1500枚使っちゃった」
「金貨に関しては問題ございません。魔王様、農具は買えましたか?」
「買えたよー。それと、この娘買ってきちゃった」
奴隷をそんな風に買って来たと言ってはいけませんよ、魔王様。魔王様は事の成り行きをお話してくださいました。なるほど…エルフの王女でございますか…年齢は…なるほど、まだまだ齢100を過ぎたばかりの少女でございますね。人間で言えばまだ15か16歳ほど…。
「あ、あの…わ、わたし…ここでなんでも致しますっ!どうか、どうか殺さないでください!」
「殺さないよ。大丈夫」
「は、はいっ…」
「魔王様、お言葉ですが…エルフはこの魔王城では生きていけません。エルフは神聖な森に住まう種族。先代魔王の瘴気は消えたとはいえ、ここの空気はエルフには適しません。数ヶ月で命を落とすでしょう」
「ええっ!?じゃ、じゃあわたしは…」
「何とかならないか?」
「はい。失礼ですが、お名前は?わたくしはステラと申します」
「わ、わたしは、ネージュと申します…」
「ネージュ様、こちらへ。このお城で生きていくための儀礼を施し致します。そうすればこのお城で生きていくことが可能です。ですが、貴女は魔の者となります。そして、エルフとは違い、命は魔王様がお亡くなりにならない限りは半永久的に生きることになります。それでもよろしいですか?」
ネージュ様はしばし考え込んでおられましたが、よし…と言うお言葉と共に頷き、わたくしを見つめてお応えになりました。
「…わたしの命は魔王様のものです。どうか、わたしもこの城の一員にしてくださいっ!魔王様に救われたこの命を…魔王様に捧げます!」
「かしこまりました。では、こちらへどうぞ」
「おーい、俺に命を懸けなくてもいいからなー」
そしてわたくしはここ数ヶ月で回復した魔力を用いてネージュ様を魔に堕としました。エルフからダークエルフへ。白金の髪。雪のような白い肌は変わらず碧眼から真っ赤な瞳へ。魔王様が生かしたエルフ。ならば死なせるわけにはまいりません。これしか方法がございませんでしたが…。
「魔王様!これでわたし、ずっと魔王様のお側にいられますっ!どうぞよろしくお願いいたします!」
「おー!よろしくなネージュ!ステラー!風呂に入るー!」
「はい魔王様。お背中をお流しいたします」
「わ、わたしもお手伝いしますっ」
「よーし、じゃあ俺がステラとネージュの背中を流すー」
「はいっ!」
こうしてネージュ様と言う新たなお仲間が増えました。お一人増えただけでも賑やかになりますね…。良いことでございます。魔王様はこれでエルフの国を制圧できる可能性を持ちました。良い交渉のカードになると思います。もっとも…魔王様はそのようなお考えは持っていらっしゃらないようですが…。
しかし、このネージュ様が魔王様の躍進に大きな役目を果たすことになるのでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます