第2話~魔王、動きます~

わたくしの名はステラ。魔王様にお仕えする元女神で奴隷のめいどでございます。


新たな魔王様にお仕えして数日。先代までの魔王とは全く違う…それでいて型破りな行動に驚きの連続でございます。まず魔王は玉座に座り、ただ魔物たちに命令を送るだけか、わたくしをいたぶることしか致しませんでした。ですが、新たな魔王様は違います。


「ステラー、暇だー。なんかすることない?」


「魔王様。魔王様にお仕事を与えるめいどはおりません。魔王様は何もしなくてよろしいのです。わたくしが全て行います故」


「それだと俺が暇すぎて死ぬー」


「!?」


魔王様は止まったら死ぬ魚…ではありません。魔王様です。仕事を求める魔王など聞いたことがございません。


「魔王様!?何をなさっておられるのですか!?」


「ステラー、ステラのベッドをゴンドが持ってきてくれたぞー!」


「魔王様!わたくしはどれ…いえ、めいどでございます。わたくしは魔王様と同じようなベッドで眠るなど、失礼に当たります。お気持ちは嬉しゅうございますが…」


「ステラってどうやって寝てるの?」


「(話を聞いてくださりません…)……こちらへどうぞ。わたくしのお部屋をご覧くださいませ」


わたくしのお部屋は何もなく、藁を敷いただけの寝床。奴隷に家具は必要ない。そのように言われて1万年程度でしょうか…。


「何もなーい!ダメー!」


「えっ」


そう言って魔王様はわたくしを魔王様のお部屋の隣のお部屋へと連れ、そこにベッドを置き、テーブルや椅子、鏡を置いていつでも明かりを灯せる魔法のランプで灯りもつけてくださりました。


「魔王様、わたくしにはもったいない調度品と寝具でございます。この大理石のテーブルと魔法のランプだけでも人間でしたら金貨が100枚は必要になります。侍従にはもったいなく思います」


「メイドなんだから奴隷のような部屋はダメだ。あそこは閉鎖!今日からここがステラの部屋!」


「……かしこまりました。ありがとうございます、魔王様」


「あとは服だなー」


裸での生活がほとんどだった故に、服を着ての生活は新鮮でございます。ですが、今は服を着ないと落ち着かなくなってきました。簡素な布ですが…。魔王様にベッドを運ばせるなど、めいどとしては失格でございますね…。


「薪でも割ってくるー」


「魔王様、お言葉ですが…炎の魔法石がありますので、薪を使わずともお料理にお風呂は問題はございません」


「暖炉がこの部屋にはあるぞー。寒い時にいるだろー。行ってくるー」


「ああ、魔王様!」


困りました。魔法石で暖を取れるのですが…仕方がありません。魔王様を失望させてはなりません。魔法石の上に薪を置いて、火を炊くと致しましょう…。寒さもわたくしにはわかりませんが。



「魔王様!?何をなされているのですか!?」


「風呂掃除ー。毎日きれいにしておかないといけないんだぞー」


「わたくしがやります!ああ、魔王様にお風呂を掃除させるなど!」


「じゃあそっち洗ってくれー。めっちゃ広いなー、この風呂!」


「全てやります!全てやりますので!」


「気にすんなー」


魔王様…わたくしからお仕事を取り上げる虐待なのでしょうか…?めいどとして、それは大変困ります。侍従は主人からお仕事をお任せされてこそのめいど。仕事を取り上げられてしまっては、侍従としての存在意義がなくなってしまいます。ですが、魔王様はわたくしの制止をお聞きくださりません。このような魔王様は奴隷に堕ちてから初めてでございます。ああ、今はめいどでございました…。


それからも、あらゆるお仕事を奪おうとされるので止めるのに苦労致しました。自ら率先してお仕事をする魔王様…これ、ありますでしょうか?


………


魔王城のご案内も致しました。ここは魔王様のお城。魔王様も自分の家ならば把握しておきたいとのことでしたのでご案内させていただきました。


「ここが宝物庫でございます。こちらには、むこう数千年は遊んで暮らせるほどの財宝がございます」


「すっげー!金ピカだー!」


「歴代の魔王が集めたものでございます。豪遊をして空っぽになったこともございます。魔王様もお好きなようにお使いください」


「それじゃあ農具買ってー。種芋とかニンジンとか花の種とか買ってー」


「魔王様は農夫になられるおつもりですか?あっ、こちらは海の上を歩くことができる指輪でございますね。こちらの腕輪は装備させた相手を洗脳し、意のままに操ることができます。わたくしに嵌めてお好きなようにしていただいても構いません」


「こんなゴミは燃えるゴミにドーーーーーン!!!」


魔王様。その腕輪を求めて3つの国が争い、滅んだこともありますし、これを求めて私財を失った富豪もおります。そのような魔具なのですが、ああ、何でも燃やす紫の炎の焼却炉で燃やしてしまいました。そのような行為はお好きではないのでしょうか。めいどにそのような行為はしないとのことでございました。


お次は美術品を集めた場所。こちらに関しても、悪趣味な絵画や装飾品が多いとのことで大半は燃やしてしまいました。


「どいつもこいつも気持ち悪い自画像なんか描かせやがって!ムカつくから焼却炉へドーーーーン!!!」


歴代の魔王の肖像画を燃やしてしまいました。魔王様は先代もその昔の魔王も全てお嫌いでしたか…わたくしも嫌な過去が語りきれぬほどございますので…良いでしょう…。


1つ気になりますのは魔王様が一点だけ残された肖像画。美しき金色の髪。海のような優しい青い目。素晴らしい三対の羽。雪のように白い肌。惹き込まれる微笑。なぜでしょう。わたくしはこの女性を知っている…はず。魔王様はなぜこの絵画だけをお残しに…?わかりません。後ろ髪を引かれる思いで美術品の部屋を後にしました。


そして最後に馬房です。


「おお、ナイトメアだー」


青紫の炎を纏った馬の魔物。ナイトメア。昔からこの馬房におります。魔王様とわたくしを見て警戒して嘶きます。これは警戒ではなく、敵対…でしょうね。


「ステラー、この子は?」


「はい。魔王様の乗り物となります。ですが…先先代魔王の頃からひどい目にあわされ、魔王はおろかわたくしにも敵意をむき出しにします。乗ることは暴れますし、その炎で身を焼かれるでしょう。申し訳ございませんが…代わりの馬ももうご用意できません」


「ホウホウ」


「魔王様、ですから危険ですと」


魔王様はわたくしの話を聞いていらっしゃいません。ナイトメアをなだめようと近づきます。ナイトメアは激しく暴れます。


「なあ、ニンジン食べるかー?」


どこから持ってこられたのでしょう…。ニンジンを一本手に持ってナイトメアに近づきます。おいしいぞー、と仰られますが危険です。お止めしなくては。


「魔王様…」


「ホウホウ。怖くないぞー。俺はいい魔王だー」


笑いながら歩み寄ると落ち着いた様子…え?落ち着いた?なぜ?どんなになだめても暴れ続けたと言うのに…?


「お、食べるかー?おいしいぞー」


少し匂いを嗅いだあと、ナイトメアはボリボリとニンジンを食べ始めました。魔王様は嬉しそうにそれを眺めておられます。すごい…どうしてなのでしょうか?ナイトメアは炎を消して魔王様に近づきます。


「ステラー!白馬になったぞー!」


「ナイトメアは人の里へ下りる際にナイトメアのままですと騒ぎになってしまいますので白馬に化けることができます。ですが、人間が飼い慣らしている馬よりも速く走ることができますし、空を駆けることもできます」


「空飛べるの!?お前すげえなー!」


ブルルル…と鼻を鳴らすナイトメア。いつの間にか撫でられております。手懐けるのが早すぎです。この一瞬で簡単に…。素晴らしいことでございます。これですと、外へ魔王様を乗せて行かれることも問題はないでしょう。そう告げますと魔王様は大喜びでございました。


「ステラー!この子の名前は?」


「魔王様、そのこの子は名付けられたことはありません。虐げるために存在していたと言っても過言ではございません」


「そうなのか。魔王たちはバカだったんだなー。じゃあ俺が名付け親だ!お前はイングウェイなんてどうだ?かっこいいだろ。男の子はかっこいい名前のほうがいいよな!」


魔王様がそう仰りますと、ナイトメアは怒りだしました。


「魔王様。この子は牡馬ではなく、牝馬だと言っております。怒っております」


「え?マジで?ごめんごめん。じゃあクレセントでどうだ?三日月って意味だ。きれいだろー?」


ブルルル…そう言って落ち着きを取り戻しました。大事に至らなくて安心しました。魔王様は馬の心も読める力をお持ちなのでしょうか?わたくしの心も簡単に掌握したお方です。動物の気持ちも簡単に汲み取ることができるお方なのでしょう。先代や歴代の魔王より…魅力的に感じられます。


………


「ステラー、暇だー」


魔王城を案内して数日…やはり暇を持て余してしまう魔王様。今日も暇だと何回お聞きしたでしょうか…。困りました。もうやることはございません。このままでは暴走してしまうのではないか…と思っていたその時です。パタパタと羽音をさせて戻ってきた魔物が一匹。コウモリの姿とは不釣り合いな一つの目。これがイービルアイの姿です。


「おや…イービルアイが戻って来ましたね。魔王様、何か魔王様にご報告したいことがあるようです」


「イービルアイ?」


「イービルアイは魔王城を中心に近隣諸国の情勢や人間の動きを監視する魔物です。これを使い、魔王城に侵攻する国がないか。人間が近づかないか。各国の情報を手に入れております」


「アイちゃん!」


「はい?」


「イービルアイだからアイちゃん!クレセントにも名前をつけたんだから今からお前はアイちゃん!」


イービルアイに名を…お優しい魔王様。このような下級の魔物にも名を与える。やはり、魔王様はこれまでの魔王とは気色がまったく違う…。イービルアイも魔王様の周りを飛び回り、喜んでいるように見えます。


「おほん…ではイービルアイ「アイちゃん!」」


「………あの」


「アイちゃんだぞステラー」


「……ではアイちゃんさん。映像を見せて頂けますか?」


………アイちゃんさんは自分がその目で見たものを魔力を用いて映し出すことが可能です。そして、魔王様にお知らせがある場合のみ、城に帰って来ます。戦の報告。侵入者の発見。国の滅亡などでございます。アイちゃんさんが映像を映し出します。


「これは………」


「戦か」


魔王様の目が鋭くなります。特徴的な十字架の教会…焼け落ちていきます。


「北の国、セントフレメンスですか。これは西の大国、アイアンクレスタとの国境近くの辺鄙な村ですね」


焼け落ちていく建物。横たわる人間の死体…セントフレメンスが攻め入られているのでしょうか?物々しい鎧。これはアイアンクレスタの騎士でしょう。


「…?妙ですね。確かにセントフレメンスとアイアンクレスタは隣国同士でありながら仲はよろしくありませんでした。ですが…アイアンクレスタが一方的に攻め入っているように見えます」


アイちゃんさんが映像をさらに続けます。アイアンクレスタ兵が笑みを浮かべて村の男を斬り捨てています。悲鳴をあげて事切れる男性。老人に若い男性は無慈悲に殺されていきます。


『男や老人は殺せ。女も若くて綺麗な女以外は殺していいぞ。子供は殺すな。食料や金目のものは奪え!いいな!ククク、楽なものだ。こんな簡単に人が殺せるのだからな』


『はい、副団長殿。我々カッツバルゲル団の恐ろしさをセントフレメンスの田舎者に思い知らせてやりましょう!』


『うむ。団長殿も良き考えだ。新たな国を作り、我らがアイアンクレスタもセントフレメンスも手に入れる!女も金も自在!そして子供は奴隷として売れば金にもなる!まずはセントフレメンスを攻め落とすぞ!この辺りの村を襲って資金稼ぎだ!』


『ハッ!』


ここで映像は終わりました。なるほど、アイアンクレスタのカッツバルゲル団と呼ばれる騎士の集まりが暴徒化し、まずはセントフレメンスの辺境の村で人をさらい、資金と食料集め…ですか。


「たぶん、こいつら王には黙ってやってやがるな。こんなもん、戦争じゃない。虐殺と略奪だ。こいつらは騎士じゃない。ただの野盗や蛮族と何が違う…」


魔王がやっていたようなことでございます。強い者が弱い者を殺し。弱い者から奪う。それが世の理。そうして人間は繁栄してきたと言っておりました。闇の部分しか見ない魔王だからこその言葉です。確かに…その通りですね。ですが、魔王様は激しく怒りのオーラを出しながら映像を見ておられました。


「魔王様。これは捨て置きましょう。両国の戦争で、こちらに飛び火するのであれば、迎え撃ちましょう」


「いや、それじゃあダメだ」


「え…?」


「こんなことをする奴らは人間じゃない。外道のやることだ…俺はこいつらが許せない」


そう呟くと魔王様は剣を手にどこかへと向かいます。早足で追いつけません。何という歩く速さでしょう。その先は…馬房…?まさか…!


「魔王様!?」


「クレセント、お前に乗せてくれ。どうしてもいきたい場所がある」


「魔王様、お待ちください!自ら戦火の火種へ飛び込むことはございません!お命が危のうございます!」


「ステラ。そうかもしれないけど、俺はあの外道達がこれ以上無駄な殺しや略奪を続けることが許せない。だから…行くぞクレセントー!出撃だー!」


いつの間にか鞍を装着したクレセントさんに跨り、空へと駈けてゆきます。


「ちょっとこの外道共殺してきまーす!いってきまーす!!」


「魔王様!お待ちくださいませ!魔王様!魔王様!?ゴンド様!魔王様を追いかけてください!えっ!?ナイトメアに走られたら自分では追いつけない!?そんな…!魔王様ああああああ!!!!!


わたくしは魔王様と叫ぶことしかできませんでした。


/セントフレメンス 辺境の村


村ではカッツバルゲル軍による虐殺と略奪が横行していた。この村もその一つ。ゾブリ、と言う音と共に一人の老人の胸に剣が突き立てられた。


「おじいちゃあああああん!!!」


「うるさいぞ小娘。おい、男と老人は殺せ。子供と女は殺すなよ。ああ。醜い女は殺しても構わんぞ。ククク…ここも上々だな」


「クソォ!やめろ!子供も妻も渡さんぞ!」


「うるさい男だ」


「グワアアアア!」


騎士が村人を痛めつける。まだ殺さないらしい。お父さん!と子供が叫ぶ。騎士は下卑た笑みを浮かべて見下ろしている。


「グリズ様。なかなかに金貨などはありました。食料もたんまりと」


「よいぞ。全て奪え。貴様らの物は我らの物だ。子供は良い働き口になる。奴隷としてこき使ってやる。女は慰み者…そして良い金になる。子供もな。安心しろ。貴様らよりはずっとあとになるが…惨めな奴隷となった後、死んだら会える」


「貴様ら…それでも人か!神にでもなったつもりか!?」


「ハハハハハ!我らは新たな国の王や大臣となる者だ!俺は大臣となり、王の手足となって貴様らを好き勝手してやる!」


「新たな国だと…!?」


「そうだ田舎者。もはや我々はアイアンクレスタの一騎士団でいるには力が有り余っている!腑抜けた王はさっさとこの貧乏くさい国を滅ぼして領土を拡大すれば良い!そしてあの腑抜けも我々が倒し!アイアンクレスタとセントフレメンスも支配する!」


言っていることがめちゃくちゃだ。そのための土台のために、近隣の村まで全て…!


「この外道め…神罰を受けろ!」


「やかましい!我らに神罰など…ふん、ならば貴様も死ね!」


「やめろおおお!」


「ウェイド!?」


「小僧、この未来の大臣、グリズ様の鎧に石を投げたな?奴隷如きが!ククク、まあ良い。貴様には惨めな奴隷としての未来がある…せいぜい生きて悔やめ。しかし、しつけのなっていないガキは親の責任だ。よって、貴様は死罪だ。ここで首を刎ねてやる。死ぬが良い」


「あなた!!!やめて!殺すなら私を!主人を殺さないでえええええ!!!」


「お父さん!やめてえええ!!」


父と呼ぶ娘である少女が叫ぶ。どうしてわたし達がこんなことに…?わたしたちが何をしたって言うの?やめて。もうやめて。壊さないで。殺さないで。やめて…誰か…神様でも悪魔でもいい…誰か…助けて!!!


少女が心の中で目の前で殺されそうになっている父を助けてと懇願した時。


「呼ばれてないけどジャジャジャジャーーーーーーン!!!!!!!」


ザン!!と言う音と共に空から何かが降ってきた。村人も。騎士達も時が止まった。しかし、時間だけは正確に動き、村娘の父を殺そうとしていた騎士は…ズルリと縦に真っ二つになって割れた。ヒイイイイ!と言う村人の叫びと、うわあああ!?と言う騎士団の団員達の動揺の叫びが周囲の響き渡った。そこには黒い剣に黒い鎧。真紅の眼をした男が一人、不敵に笑っていた。


「何者だ貴様!!!貴様、セントフレメンスの騎士か!?」


こんな騎士は知らない。村の人たちもアイアンクレスタの騎士ではないのかと思うくらいだったが、男は能天気に言った。



―どうも。通りすがりの魔王です。



と。魔王と言う言葉に周囲の人間は驚愕し、恐怖した。魔王。厄災をもたらし、死を運ぶ存在。村人達は全員死を覚悟した。


「魔王だと!?馬鹿め!魔王は数年前に勇者に討たれたわ!出鱈目も大概にしろよ貴様ァ!」


「俺が新しい魔王だー。怖いだろー。頭が高いぞー」


「ふざけおって…おい、こいつも死罪だ。我が兵を殺したのだ。殺せ!」


身構えた騎士達に囲まれる…魔王と名乗る男、フォール。しかし、フォールは意にも介さない。身構えもしない。笑みを消してグリズと言うちょっと偉そうな男に問う。


「お前さ。ここの人達は平穏に暮らしてただけだろ。何でこんなことするの?」


「ハッ!知れたこと!腑抜けた王に代わり、この国を滅ぼしてやろうと思ったからだ!」


「そうか。アイアンクレスタの王は無関係か。ならいいや。そうか」


「わかったか!では死ぬが良い!」


「お前らが好き勝手に暴れてただけか…平穏に暮らしてた人たちの村を焼いて、平穏に暮らしてた人たちを殺してまわって…金や食料を奪って…女の人は娼婦だ?子供は奴隷だ?」


「我々の躍進の踏み台になるのだ!強き者が殺して奪って何が悪い!この世は弱肉強食だ!強い者が勝つ世界なのだ!フハハハハハ!!!」


「お前らのやってることは騎士なんかじゃない。お前らのやってることは野盗と何が違う…!」


「我らには崇高な目標がある!ただの金や欲を満たすための野盗と一緒にするな!」


「お前らのやってることは野盗と何一つ変わらない!何一つだ!いや!お前らは外道だ!!!俺は外道が大嫌いだ!!!!!お前ら全員首置いてけええええええええ!!!!」


「馬鹿が…!殺せ!!!」


フォールの怒りにグリズだけは部下に命令を下すが、フォールの殺気にうろたえる騎士達。その中でも必死にフォールを狩ろうとする騎士達が数名。動いてフォールを殺さなければ自分の命がないからだ。カッツバルゲル軍団は恐怖で部下を支配する。使えぬ者は殺す。補充など後で金を出せばすぐに強い奴は集まると。そうグリズも団長も思っている。


「雑魚っぱA、B、Cの攻撃だー」


騎士たちよりもフォールが早く動く。フォールのスピードに騎士たちはついていけない。


スヒン。


剣の振りが早すぎて騎士たちは自分の首が飛んだことさえわからない。


「魔王の攻撃。雑魚っぱは死ぬー」


「なっ!?」


周囲の棋士たちも、村人たちも何が起きたかわからない。フォールの剣はそれほどまでに研ぎ澄まされており、洗練されている。一切の無駄なく外道共を両断する。


「ヒ、ヒイイイイイイイ!」


「雑魚っぱー…ええっと、忘れた。逃げ出したー。しかし、回り込まれてしまった。魔王の攻撃ー。雑魚っぱは死ねー」


グリズは次々と部下の首が飛んでいく様に失禁して腰を抜かしている。実力が違いすぎるのだ。あれはもはや人ではない。そう、それは絶望と死をもたらす……魔王。


「オラー、逃げるなー。お前は後でころーす。堪忍袋の緒とアキレス腱が切れたー」


「ギャアアアア!!」


騎士の一人の足を斬り、逃げられなくする。そしてフォールはグリズの下へ狂気の笑みを浮かべながら手に死を撒き散らす黒い剣を持って近寄ってくる。


「ひ、ヒイイ!!やめて!!殺さないでください!!助けて!!お願いしますうううううう!!」


「お前さ。その言葉を襲ってきた村の人たちに言ってどうした?」


「え……?」


「助けてとか、殺さないでとかを村の人たちに言って、一人でも殺さなかった。助けたことはあるか?」


「あ、う……」


殺さなかったことはない。助けたことはない。一度たりとて、カッツバルゲル軍団は村人を助けたことはない。笑いながら殺し、犯し、拉致し、奪った。笑いながら殺した。殺した村人たちを笑った。泣きながら助けを懇願する人々を焼いた。剣で貫いた。彼らはまさに外道だった。騎士の誇りも何もない。フォールが言う通りの外道だった。そして自分が助かりたいがために、外道は平気で息をするかのように嘘を吐く。


「助けました!殺しませんでした!!だから!お願い!!助けてくだしゃいいいいい」


「嘘だな!お前の目は嘘をついている目だ!お前は外道だ!!外道は首置いてけえええええ!!!」


スパーン!とフォールは何の躊躇いもなくグリズの首を刎ねた。フォールに嘘は通じない。一瞬で嘘を見抜く。魔王は外道を許さない。


「さーてと」


そう言って斬られた村人に近づく。悲鳴があがる。村人も完全に恐怖に支配されていた。しかし、魔王と名乗る男だけは笑っていた。


「お、お父さんに……て、を出す…な!やめて……お父さんを殺さないで!!」


「わかってるよ」


フォールは少年の頭を撫でて父親の下へ歩み寄る。そして、手から温かな光が溢れ出す。その光は、少年の父親の傷をみるみるうちに治していく。皆は呆気に取られていた。絶望と死を撒き散らす魔王が…傷を癒した…?


「これで大丈夫です。俺はこれからこいつらの親玉を殺してきまーす」


「は、はい?」


「外道は親玉を殺さないとまた湧いてきます。いくらでも。だから元を断たないとダメです。だからちょっといってきまーす。オラー、お前にはお前らの頭の下へ案内してもらう。今死ぬかあとで死なないかもしれない選択肢。選ぶならどっち?どっちなんだい?」


「あがががが!は、はい!案内しますうううう!」


「クレセントー!もう一仕事頼むわー!」


白い馬がいななきをあげて駆け出す。生き残った兵士は首根っこを引っ掴まれたまま引き摺られて行った。


「助かった……の?」


「いや、あの男が油断させて後で殺しにくるのかもしれない!教会の地下へ隠れよう!今のうちに!!」


少年と少女の父親が率先して村人を誘導する。命拾いしたものの、どうなるかわからない。今はこれが最善なのだと信じて。



「グリズ副団長おっせえなぁ。また気に入った女いたぶってんのかね」


「おい、声がでかいぞ。殺されるぞ」


団長がいる村とグリズ副団長がいた村の中継地点。ここに下っ端の騎士が伝令役として待機していた。騎士たちは暇を持て余し、雑談を繰り広げていた。それほどまでに退屈だった。しかし、後でおこぼれの女をもらえるかもしれないし、食料にもありつける。彼らはそれくらいの気分でしかなかった、しかし、伝令が遅い為、一度団長に相談した方が良いとは考えなかった。自分たちは強者で、死ぬことはない。それしかなかった。しかし、それが誤りだった。彼らは近づいてくる死にまったく気づいていなかった。


しばらくして馬が走る音が聞こえてきた、ようやく伝令が来たか。やれやれ。早く戻って小さな女の子を…。


「おい、あんな白い馬見たことあるか?」


「いや?でもまあ、大丈夫だろ」


やがて姿が見えてきた。何やら恐怖で顔が引き攣った仲間。何かあったのか?そう思った時には遅すぎた。その背後に、真紅の眼を爛々と輝かせ、狂気の笑みを浮かべた黒い男に気付いた時、それは眼前にまで迫っていた。「な……」と声をあげたときには…


スヒン


首を刈り取られてしまい、伝令役の騎士二人の人生はそこで幕切れとなった。外道は全員殺す。それが魔王フォールのやり方だった。


………


「遅い」


しわがれた声で苛立ちを露にする白髪混じりの騎士。カッツバルゲル軍団の団長、ガイストがグリズたちの帰りが遅いことに怒りを隠し切れないでいた。あいつは時間をかけていたぶる嗜好がある。面倒なことに自分の時間を使われることが嫌いなガイストは帰ってきたら見せしめにあいつの部下を2、3人殺そうと思った。誰の時間を無駄に使わせたのかを思い知らしめてやろう。


「ガイスト様。伝令の騎士二名も帰ってきません」


「愚か者共が。グリズの下っ端も伝令も殺してやるわ。私の時間を無駄にしよって」


「左様でございますね。首を刎ねましょう」


「死んでもその辺で騎士は補充できるからなぁ」


「ハッ!」


ガイストは苛立ちを隠せない。一人くらい拐ってきた子供を殺してやろうか…と思うくらいだ。グリズめ。覚えておれ。


「て、敵襲ウウウウウウウウウ!!」


「敵だと?」


「王!黒い剣を持った何者かが攻めてきました!」


「慌てるな。貴様らはカッツバルゲル軍団だろうが。敵はない。殺せ」


「し、しかし!外の者がバタバタと殺されていきます!も、もうすぐ側まで!ガァッ!?」


「ならばさっさと殺しに行かんか!王を守らずして何が騎士だ!」


報告に来た騎士を蹴り飛ばして防衛に当たらせる。この私を殺しに来たか?ふざけおって。私はカッツバルゲル軍団団長。そして建国して王になる者。ここで死んでたまるものか!


しばらくは外が騒がしかったが静かになった。シーン…と静寂が包む中、新兵だけが「ひ、ひいい…」と怯えた声を出す。殺しも犯しもしない情けないやつだが、いずれ働く口にはなる。だからこそ置いているのだが…鬱陶しいな。殺してやろうか。


「おい、誰かおらんのか!賊の首を早く持って参れ!」


「はーいただいまー」


………寒気が疾った。今のは誰だ?我が国の騎士共ではない気がする。濃い死の匂いがドアが開いたと同時に漂ってきた。濃い血の匂い。一人殺すのにこんな血の匂いがするか?否、まさか。現れたのは自分の部下。名前も知らんが。しかし…その騎士は舌をだらしなく垂らし、ぐったりしている。それはそうだろう。首には誰かの手の跡がしっかりとついていた。首を絞められ、窒息死したのだろう。顔は赤紫色にパンパンに腫れ上がっている。


「すみませーん。賊は殺し損ねましたー。自分たちが死にましたー」


ドシャリ。騎士の骸が転げ落ちる。新兵が「わあああああ!?」と悲鳴をあげる。現れたのは黒い騎士。笑みを浮かべて入ってくる、濃い死の匂いを撒き散らしてやってきた。こいつは死神か。悪魔か?


「どうも、通りすがりの魔王です。カッツバルゲル軍団とか言う外道を殺しにきましたー」


「魔王…だと?ふざけたことを申すな。魔王は勇者に討たれた。貴様のような奴が魔王だと?笑わせおる」


「そんなこと言われても俺が魔王だ。お前が団長か」


「貴様は何者だ?」


「だから魔王だって言ってんだろー。お前さ、国を建国して戦争するためにあちこちの村襲って殺して犯して奪ってってやってるんだってな」


「弱いものから奪って何が悪い?村人共はおとなしく私に平伏せばよかったのだ。抵抗するから殺した。美しい女がいれば貴様も抱きたくなるだろう?腹が減れば食うだろう?私は王になる者。それくらいして当然だ」


「なるほど。お前は臭い。とても臭いんだ。王の器じゃないね。それに、お前のような欲望に正直な奴が王になったらどうなるか…それはな。サウンズアスールのクソッタレた王と同じで、悲劇しか生まないんだよ…!お前は王にはなれない。お前は外道だ!俺は外道が大嫌いなんだ!グリズとか言う奴や雑魚っぱと同じ、首置いてけ!お前みたいな奴は殺してもいいんだよなァ!」


「フハハハハハ!己が実力もわからぬか!私はアイアンクレスタ最強の騎士!カッツバルゲル軍団にして新たな王!ガイスト様だ!貴様のような青瓢箪に、この剣を防げるかァアアアア!!!」


凄まじい踏み込み。そして、落雷の如き振り下ろし。ガイストは確かにアイアンクレスタ最強の騎士とまで言われた男。負けはほとんどなかった。強さこそが正義。弱い奴は死に、殺し、強き私がいきるのだ。だから貴様もそうなるのだ!


 

ガキイイイイイイイイン!



重い金属音。剣ち剣がぶつかり合う。負けるはずがない。力比べなど。この剣ごと叩き斬ってくれよう!腕の筋肉が隆起し、血管が浮き出るほどの力を込める。


「……?フン!!!」


動かん…だと!?私は大木相手にでも斬りつけたか!?この男のどこにそんな力がある!


「お前、力弱いな?アイアンクレスタの騎士の最強ってこんなもんか?どっこいしょー!!!」


「ぬおおおおお!?」


こちらの腕が折れるかと思った。黒い騎士。フォールが剣を振り抜くとガイストは強烈な力で吹き飛ばされた。教会の地面を滑るガイスト。長椅子などを破壊して飛んでいく。


「む、むううう!!」


「こんな実力しかないくせに。王様だ?しかも国を建てるのに自分たちは金なし。今から食料を確保して金作って建国?頭悪すぎだろ。戦争起こすにも莫大な金がいる。兵站もいる。人も少なすぎる。国相手に喧嘩売るってのはな。奴隷売った端金じゃできないし、兵士だって何万何十万だっている。お前みたいに頭が悪くて計算もできない奴が、王になんかなれるわけないだろ」


ガイストはプライドが高い。自分を見下す奴が嫌いだ。だから…自分より若い小僧にバカにされるのだけは我慢ならなかった。そして、剣で負けるなどあり得なかった。


「ふざけるな小童ァ!この私を馬鹿にしておいて、生きて帰れると思うな!貴様の首を取り、私こそが最強であることを示してやる!」


「あっそう。力では俺が勝ったから速さ勝負しようぜー?」


ふざけよって。私の本気の速さには誰もついてこれん。一瞬でそのなめ腐った顔を絶望の顔に染めて首を刎ねてやる。ククク。ガイストは舌なめずりをして勝利を確信した。しかし、フォールの見下しはまだまだ続く。


「俺、剣を鞘に収めるよ。お前がきたら抜くから、いつでもかかってきていいよー」


「何ィ!?」


東洋の国の抜刀術と言うやつか!?馬鹿め。それはあのカタナと言う武器だからできる技量。両刃の剣ではそれは不可能!この青瓢箪、慢心したな!私をなめ腐ったこと、あの世で後悔するが良い!


「馬鹿めが!!!!ならば一瞬で貴様を両断してやろう!!ウオオオオオオ!!」


瞬足。一瞬でフォールの懐へ飛び込むガイスト。間合いに入ったがまだフォールは剣を抜いていない。馬鹿め!速すぎて見誤ったな!これで…


「終わりだ小僧ォォォォォォ!!!!!」


 

スン…


 

フォールの脳天に剣が落ちると思ったその瞬間。自分の腕が軽くなった気がした。しかし、勝った。ガイストはそう思った。しかし…フォールに剣は届いていなかった。なぜなら…ぼとり言う音。剣がカランカランとやかましい音を立てている。あれは私の剣。


「何?」


理解できなかった。あそこになぜ私の剣がある?私は確かにこの男の頭を…刎ねて…いない?ボトボトボトと嫌な湿った音がする。自分の周りに血の水溜りができていた……ガイストの両腕が、なかった。


「ガッ!?うわあああああああああああああ!!!!」


「お前遅すぎだわー。あれだけ待ってやったのに見て回避して腕落とすの余裕だったわー」


「あ、あああああああああああああ!!」


「うるせえよ」


「フガッ!?」


跪いて自分の腕がないことに悲鳴をあげていたガイストに蹴りを入れた。鼻が折れて鼻血が出る。呼吸ができない。さらに髪の毛を思い切り掴まれて間近で睨まれる。


「あ、ああうあ…ひ、ひいい…」


「お前のクソみたいな野望のせいで、どれだけの人が死んで泣いたと思ってんだ」


「うぐ、あ、ああ…しゅ、しゅみませ…」


「おとなしく騎士やってたらよかったなぁ?」


「は、はひ……」


「もう剣も握れないねぇ?」


「はい…そうでしゅ…だから、騎士、やめましゅ!王も!なりません!だから…たすけ」


「お前って弱いやつだよなぁ?」


「はいいいい!私は弱いです!だから!ゆるしてええええええ!」


「お前さっきなんか言ってたよな?弱い奴は、なんだって?」


「えっ」


瞬間、ガイストは凍りついた。魔王と名乗る男の真紅の眼は、確実に今から殺すと言う殺意をひしひしと伝えてきた。


「弱い者からは奪っていいんだよねぇ!?だったら俺が最強でお前は弱いから!お前の命を奪いまーーーーーす!!」


「ああああああああ!!!やめてください!!助けてえええええええ!!!!」


「外道は死んで当然地獄行きいいいいいいいい!!!首置いてけえええええええええ!!!」


「わあああああああああああああ!!!?!?!?」


スパーーーーン!とフォールはガイストの首を刎ねた。ゴロゴロと転がるガイストの首が新兵の前に転がった。そこで新兵は失神し、意識が飛んだ。


「地獄で亡者相手に建国でもしとけ、バカが。冥界の管理人が許してくれるとは思わないけどな」


首のないガイストの胴体に吐き捨てるようにそう言った。戦争など、悲劇しか生まないのだ。その前に、こいつらは外道だった。外道は殺す。容赦なく。それが、自分が殺してしまった人々へのせめてもの罪滅ぼしになるのなら。だって俺は、真の外道なんだから。


………


日が山に落ちるのと同時に、魔王様がお帰りになられました。濃厚な血の匂いを振り撒きながら、ですが。魔王は人々に恐怖を与え、理不尽に死を振り撒く者。魔王様に逆らう愚か者共を粛清されたのでしょう。さっそく、魔王様としてのお勤めを果たされたのですね。わたくしはアイちゃんさんを通して見ておりましたが、素晴らしい粛清ぶり。先代魔王にも劣らぬ…いえ、これを申してしまうとお怒りになられるでしょう。


そして村の人間に恐怖を与え、信仰を得られたようでございます。重ねて、魔王様の手腕は今までの魔王よりも優れておいでの様子です。


「ただいま、ステラー!」


「おかえりなさいませ、魔王様。お疲れ様でございました。ですが、魔王様。お言葉ですが急に飛び出していかれますと、わたくしはおろかゴンド様も追いつくことができません。お一人では危険でございます。どうか、ご自身の御身のためにも、無理な外出はおやめくださいませ」


「わかった。ごめんなステラー」


「はい。出過ぎた事を言ってしまいました。罰は如何様にも。本日はいかがなさいますか?首を刎ねますか?それとも、臓腑が潰れるほどわたくしを犯しますか?」


「ステラー、これ切ってくれない?」


「………?これは、ニンジンでございますか?」


「村の人にいっぱいもらったんだー。小麦ももらったぞ!パン作ろうぜパン!これはクレセントのご褒美だぁ。で、こっちのニンジンはなー」


厨房に入られた魔王様は器用に包丁でニンジンの皮を剥き、棒状にしてしまいました。こちらはクレセントさんにでしょうか?


「あーん」


「魔王様!?」


「うんうん、甘くてうめー!ニンジンのスティックサラダ、俺好きなんだよ。甘くて美味しいぞー。はいステラ、あーん」


「あ、あーん…」


しゃきしゃきとして素晴らしい甘味…これは、新たな発見でございます。ニンジンは生で食べても…おいしゅうございます。


「魔王様。魔王様のお好みでございましたら、毎日の夕食にお出ししましょうか?」


「おねがいしまーす!」


ふむ。魔王様の好みがわかりました。これは毎日お出ししましょう。わたくしもこれは毎日でも召し上がりたいものです。それでは、夕食の準備に…ああ。


「魔王様。魔王様から濃い血の匂いが漂っております。先に湯浴みになさいますか?」


「こんなんで飯食ってもおいしくないしな!先に風呂だー」


「かしこまりました。ではお背中をお流し致します」


「ステラの背中も洗うからなー」


「ありがとうございます、魔王様。すでに準備はできております。参りましょう」


「はーい。ステラー、今日は髪も洗ってあげよっかー」


「い、いえ…わたくしが洗いますので…」


「ちぇー」


湯浴みをし、血の匂いを流し、遅い夕食となりました。本日は牛テールのスープ。ニンジンのすてぃっくさらだ。ライス。あとは牛肉のステーキ。魔王様はおいしいと仰ってくださり、完食されました。洗い物を手伝うーと仰られましたがお断り致しました。めいどのお仕事を奪わないでくださいまし…。


本日も驚きの連続でございましたが魔王様のお力がわかり、良い日でございました。この調子で人々に恐怖をもたらし、信仰を集めれば、世界を征服する日も遠くはないと思います。


「ステラー、村の人の復興の手伝いを明日してくるわー!


「かしこまりました」


さっそく支配地の平定でしょう。支配して放置しておくとよくないことになりますからね。魔王様の魔王様としてのお勤めは、まだまだこれからでございます。


明日はどのような驚きをもたらしてくれるのでしょうか。できれば…何事もなくお城にいてほしいのですが、叶いそうもありません。

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