第3話~魔王、海に出る~

わたくしはステラと申します。星と言う意味の名を頂いた、魔王様に忠誠を誓い、お世話をさせていただいております元奴…いえ、めいどの堕ちた女神でございます。


先日、魔王様はセントフレメンスの小さな村々を襲ったアイアンクレスタの外道に成り下がった騎士たちを滅ぼし、平定を取り戻しました。此度のことで、アイアンクレスタもセントフレメンスの王たちは魔王様の恐ろしさを思い知った事でしょう。アイアンクレスタのカッツバルゲル軍団は全滅。魔王様の強さを知るには十分でございました。


さらには、セントフレメンスからほぼ騙されたかのように入団した新兵を連れ、アイアンクレスタへ単身で乗り込みました。


………


「陛下…セントフレメンスの王から怒りの手紙が…」


「…内々で収めることは無理であったか…セントフレメンスに特使を出せ。詫びを入れるしかあるまい…そして、此度の件は余が無力だったが故の過ち…責任を取り、余の首をセントフレメンス王に差し出せ…」


「陛下!なりません!陛下の首では代償が大きすぎます!」


「良い…これが責任を取るには最適であろう…」


アイアンクレスタ王は自らの首を差し出すことで責任を果たす考えだった。この王は厄介ごとを嫌う。今回のような国の大失態においては、雲隠れして大臣たちで何とかしてほしかった。どうにもならないなら、これで逃げれば良い。そんな浅はかな考えだった。


「おいお前、そんな責任の取り方があるかよ」


「何奴だ!」


「ひ、ひいい…へ、陛下ぁ…」


若い新兵が恐怖に歪みきった表情で謁見の間に駆け込んできた。


「何奴じゃ…お前は…ああ、カッツバルゲルの生き残りか…?何が起きた。報告をせい…!」


「あんたの首を刎ねたところでセントフレメンスの村の人たちは何にもならないんだよ」


フラリと新兵の後に現れたのは黒い騎士。手には黒い剣。真紅の眼は王に対して怒りの眼差しだったように思う。本来ならば、剣を片手に王の前に現れたなら即刻死罪だ。国民であれ、そうでないであれ、である。しかし、その騎士はただものではないとそこにいた騎士たちでさえ思い、動けなかった。殺気が凄まじかった。濃い血の匂いを漂わせ、その男はやってきた。どれほどの人間を斬ったのだろう。吐き気を催すほどであった。


「何者…じゃ…?」


「通りすがりの魔王です」


「魔王じゃと!?」


アイアンクレスタから魔王城の距離は近い。それ故に魔王が生きていた頃は戦々恐々だった。いつ攻め入られるのか。隷属の身分に落とされるのか。勇者が魔王を倒し、平穏が訪れたかと思ったが、それは脆くも崩れ去った。新たな魔王が生まれた。この国はもう終わりだ…。


「ま、魔王が何用じゃ…この国を滅ぼしにきたのか…?」


「余りにも無責任すぎて滅ぼしちゃおっかなーって思ったけど」


その言葉に王は肝が冷えた。殺される…今しがた首を刎ねよと言っていた王だったが、死にたいはずがない。平穏な余生を過ごして次の王に全てもう任せたい…そう思うばかりである。


「条件次第では滅ぼしたりしないからよく聞けよ王様ー」


尊大なのか寛大なのか。条件次第では生かしてくれると言う。やはり魔王の下に降るしかないか。事実上、アイアンクレスタは滅亡だ…父や祖父たち歴代の王に何と詫びれば良いのか…。


「セントフレメンスの村の人たちに復興が完全に終わるまで支援を出せ。支援金と食料。家の建て直し。そういった建築資材の支援もだ。全部支援しろ」


「な、何と…そんなことで良いのか…?」


「そんなことだァ?」


間の空間が凍った。そんなこと。この王はそんな言葉を漏らしてしまった。それが魔王の怒りを買った。恐怖で震え上がる騎士たち。騎士たちも戦争を体験したわけではない。殺気を知らない。平和な国だから。


「元はと言えばお前らがあいつらを放置してたのが問題なんだろうが…なめたこと言ってんじゃねえぞ。殺すぞ」


「申し訳ない…!そうじゃな…あれは我々が力及ばぬばかりに目を離したばかりに…そうじゃな。余の首を刎ねただけでは被害に遭った民には何もない…しっかりと逃げずにその責任を果たそうではないか」


「当たり前だ。それからセントフレメンスにも賠償金を払え。国にも責任を取らないと攻め滅ぼされるぞ。それとも、俺が今この場で滅ぼしてやろうか?」


「待たれよ魔王よ…わかっておる。特使を派遣し、言い値の賠償金は払う。そのように話をせい。良いな」


「ハッ!」


「わかればよーし。村の人たちへの支援も一月以内だ。一月以内に支援を始めていなければ滅すからな」


「相わかった…そのようにしよう…」


逆らえばどうなるかわからない。ならば…従うしかない。属国に降ることは免れたが…魔王の監視の目がある。戦争行為などしないが、用心せねば…。


「新兵。お前も村へ帰って復興の手伝いをしろー。俺も手伝う」


「えっ!?ま、魔王様が…ですか?」


「男の手は必要だろー?オラ、行くぞー。じゃあ俺は忙しいから。じゃあねー。言ったことは守れよー」


「う、うむ!!」


この新兵は元々は家で畑を継ぐつもりだったのだが、カッツバルゲル軍団が建国をした際に奴隷にするため、拉致された。誓って殺しや暴行は働いていなかったため、一命を取り留めた。


「ま、魔王様…またこれに乗るのですか…」


「これしか馬がないんだー。我慢しろー」


「はい…」


「いくぞクレセントー!」


「わあああああああああ!!!!!」


こうしてアイアンクレスタは滅びずにセントフレメンスへの多額の賠償金と村人たちへの復興支援をするだけで滅びずに済んだ。危うく傾きかけもしたが、それはまたフォールが救ったのは後の話。


「皆さんへはアイアンクレスタから支援金が来るはずです。一ヶ月以内です!それまでは教会で生活してください!」


新兵がそのように説明すると顔を見合わせていた村人たちは安堵と喜びの表情に包まれた。後ろにはフォールがいたが、フォールが喋ると恐怖を与えそうだったので喋らなかった。新兵ことフィンが全てを説明するとフォールへの感謝の声もあがった。魔王様、ありがとうございますと。


「俺も畑仕事なんかは手伝いますし、物資の運搬なんかも手伝います。頑張って復興しましょう。オー。作戦は『みんながんばれ』です!」


「「「オーーーーー!!!」」」


「あ、食材はあいつらが奪ったやつ、みんなで分配してください。でも、ちょっとだけ分けてくれると嬉しいです」


この言葉に鼓舞された村人たちは家を建て直したり畑を耕す。食料も潤沢だった。フォールにもっと持っていってくれと言ったがフォールは聞かなかった。さらにフォールも毎日のように手伝った。


「魔王様すげえ…あれ、一人で持てる資材じゃない…」


「魔王のパワーは丸太くらいらくしょー」


「魔王様、はやーい!」


「魔王の畑耕しは最速だーーーー!」


さらにフォールは亡くなった村人たちの共同墓地を作り、丁寧に葬った。これもまた、フォールを信頼する大きな結果となった。優しき魔王。魔王?と村人たちは警戒もしないが、魔王様と慕った。


「魔王様ー!村の小麦でパンを焼きました!」


「腹減ったー!食べるー!」


「魔王様。慌ててもパンは逃げませんよ。ふふふ!」


「うめえうめえ!」


復興は順調に進んでいったのだった。


………


というわけでございます。魔王様の敵対しそうな勢力を潰し、村人からは信仰を集める。自分達の村の農作物を供物として魔王様に捧げる、早くも小さな村々ではございますが支配下に置かれました。恐怖を与え、さらに信仰を得る。魔王様の手腕は素晴らしいものがございます。恐怖と暴力だけでは支配できない…飴と鞭でございますね。この調子でいけば、魔王様が世界を支配する日も遠くないのかもしれません。わたくしは魔王様が世界を手中に収めるまでお側にお仕えする所存でございます。そうして村が復興してしばらくして、またしてもよからぬ報せが入ってまいりました。


「ステラー。俺、海鮮が食べたーい」


「魔王様。申し訳ございません。ここは海より遠い地…新鮮な海産品はゴンド様でもお届けするのは難しいかと…」


「んー…ダメかぁ」


「誠に申し訳ございません。罰は如何様にも…罰としてわたくしをなます切りにでもされますか?」


「ステラー、暇だー。復興の手伝い行ってきてもいい?畑の勉強したいんだよ」


「魔王様は勤勉でいらっしゃいますね。ですが、連日の重労働はさぞお疲れでございましょう…本日はお休みくださいませ。そもそも、魔王様が自ら復興作業を行われるのも、民への威厳が…いえ、自らも指揮されることで信頼を得られるのでしょうけど…」


働きすぎです。魔王様は疲れていないと仰られますが、働きすぎは体に毒…もう一月、ずっと復興をお手伝いなされております。お体に何かあってはわたくしも気が気ではございません。ですので、お休みいただかなくては…。そう思っておりましたが、不幸にもアイちゃんさんが戻ってこられました。嫌な予感が致します。


「アイちゃんだー。何か報告かー?」


「はい。アイちゃんさんは魔王様に何かお伝えしたいことがあるようです」


さっそくアイちゃんさんが映像を映します。これは…アイアンクレスタの西の小さな漁村。村の皆様は何か疲弊されております。その次に映されたのは大海原。多数の船が海に大砲を撃っております。


「軍の船か」


「アイアンクレスタではないようですね。アイアンクレスタは海軍を持っておりませんので。しかし…一体何を?」


そう言っておりますと海から触手が伸びて船を絡め取り、次々と沈めてゆきます。もちろん、人間も…。全ての船を沈めたのち、現れたのは巨大なイカの化け物。


「クラーケン…!」


「クラーケン?」


「恐ろしき巨大なイカの化け物…性格はきわめて凶暴です。海の王とも言われております。かつての魔王と対峙し、魔王が勝利して今まではおとなしかったのですが…」


クラーケンは高笑いを浮かべております。そして、アイちゃんさんに気がついていたようでございます。


「フハハハハハ!俺様に楯突こうなどと甘いわ!この海の王クラーケン様に敵うはずがないだろう!愚かな人間共め!ククク、そこにいるのは魔王の使い魔か。魔王が復活したと聞く。良いか魔王!聞くが良い!復活したばかりの貴様など簡単に滅ぼせよう!死にたくなければ大人しく戦わずして敗北を認め、首をよこすがいい!その時には貴様の奴隷である美しき堕ちた女神を差し出せぃ!


奴隷は奴隷から解放してやろう!そして我が妻になれ!俺様の子を産み、そして子と共に世界を支配するのだ!良いな魔王!奴隷をよこせば我が配下にしてやらんこともないぞ?フハハハハハハハハハハ!」


「くっ、クラーケン…力をつけて傲慢に…」


ですが、魔王様は確かに魔王様として力を蓄えておられる最中…今のクラーケンではひとたまりもないでしょう。わたくしの体を差し出すだけで魔王様が生きることができるならば…。


「魔王様。クラーケンの言う通り。わたくしはクラーケンのもとへ行けば魔王様は生きていることができます。どのくらい先になるかはわかりませんが、お力を溜められた際には、クラーケンを討ち取れば…わたくしは元より奴隷。クラーケンの仕打ちに耐えることもできましょう。魔王様。おせわになりました。どうか…健やかに…」


これしか方法はございません。魔王様を信じ…わたくしは不本意ではございますがあのイカの化け物の子を孕むこともできましょう。拒み続けてみせましょう。八つ裂きにされようが…わたくしは長きにわたって魔王の仕打ちを受けてきました。何の…問題も…ございま、せん…。魔王様と離れるのは…自身を引き裂かれるかのような思いではございますが…。わたくしは立ち上がり。深海の宝玉と言う海の上を歩ける指輪を宝物殿に取りに行き、魔王様に差し出します。


「魔王様。こちらをわたくしに。そうすればわたくしは海の上を歩くことができ、クラーケンの下へ参ります。これは魔王様の宝物。ですので、魔王様からわたくしに嵌めてくださりますれば、わたくしはすぐにでも参ります」


そうして手を魔王様に差し出しました。そして指輪を嵌めるために魔王様は手を取り…わたくしを…抱きしめ…て!?


「魔王様!?」


わたくしは魔王様に抱き寄せられました。わたくしは混乱し、悲鳴のような声をあげました。そして、頭に優しい感触。わたくしは頭をなでられているようです。


「魔王様!?いかがなされたのですか!?魔王様!?」


「ステラは渡さない」


「は…い?」


「ステラは俺の仲間だ。いなくなったら寂しい。ゴンドも寂しがる。だから、行かせない」


「あう…あ…う…魔王様…?あの…手を…」


「ほら、ゴンドも寂しいってさ。それに、ステラの顔、すごく嫌そうだった。だから、俺がステラを守るよ」


「魔王様。わたくしは平気…ひゃうう!?」


ギュウ…と強く抱きしめられわたくしはもう何も言えませんでした。行きたく…ない。わたくしも、魔王様と離れることなど…絶対に嫌でございます!わたくしのお仕えするお方は魔王様ただお一人なのです!!


「魔王…様。わたくし、ステラも…魔王様のお側に…永遠に…」


「わかった。じゃあ、あいつは敵だ」


「はい…あの、魔王様。頭の手を…」


「俺を馬鹿にするのは構わない。けど、仲間を馬鹿にされるのは大嫌いだ」


魔王様はわたくしの頭を撫でながら仰られます。あ、手が離れ…もっと…いえ、よ、よかった…。


「ステラを妻にする…?あんな生臭そうなイカ野郎が?しかも子供を産ませる?無理やり?あんなイカ野郎にステラを渡してたまるかよ…!」


「魔王様…ひっ!」


魔王様のお顔は憤怒に満ち溢れておりました。魔王様の激怒。それは、わたくしを恐怖させるのには十分でございました。


「こいつマジでなめてるねえええええ!!!!」


わたくしは恐怖のあまり硬直してしまいました。ですが、すぐに表情は優しい笑みに戻られました。そして、再びわたくしの頭を撫でてくださるのでした。あっ、魔王様…きもち…ふぁあ…。


魔王様は撫でて頂いた自分の頭を触っているわたくしを置いてどこかへ向かわれました。しばらくして、わたくしは自我を取り戻し、魔王様を探しますが見当たりません。


「魔王様…魔王様?まさか!!」


魔王様はクラーケンを討ち取りに行かれるのでは!?そう思ったわたくしは馬房へ向かいます。深海の宝玉も魔王様がお持ちです!いけません!わたくしは駆け出します。しかし、わたくしは魔王様がアイアンクレスタで見繕ってくださっためいど用の「めいど服」と言う服のスカートの裾を踏んづけてしまい、転んでしまいます。


「あうっ!!いたたた…はっ!魔王様!?魔王様、お待ちください!」


「ちょっとあのクソイカ野郎をイカ焼きにしてきまーす!いってきまーす!」


「魔王様!!お待ちくださいませ!クラーケンを侮ってはなりません!魔王様!お戻りください!魔王様ああああああ!!!!」


わたくしはまた、魔王様を叫ぶかのように呼ぶことしかできませんでした。ああ…なんとわたくしは駄目なめいどなのでしょうか…わたくしは…無力でございます…。


/アイアンクレスタの漁村


「クッソー、装備した奴にしか効果がない指輪とか魔王しょぼすぎだろうが。マジで殺すぞー」


意気揚々とクラーケンを殺しにきたフォールだったが、深海の宝玉は装備した者しか水面を歩くことができず、クレセントに乗って行こうとしたがクレセントが溺れそうになってしまった為、仕方がないので漁村へとやってきた。ひとまず宿屋の馬房にクレセントを預け、港へと向かう。ここからでは歩いてクラーケンの棲家へ行くには遠すぎる。なので漁師に船を出してもらおうと思った。その為に金貨も多めに持ってきている。出鼻を挫かれたしクラーケンはムカつくし。今すぐ殺しに行ってやるから待っとけ。


「こんにちはー」


港に行くと漁師が数名投網を修繕していたので声をかける。こんな漁村に旅人…?こんな時に?


「何だい旅の人」


「すみません、船を出すことはできませんか?ちょっと向かって欲しいところがあるんです」


「おいおい、アンタ…状況を知らないのか?今は海にクラーケンってヤバい魔物が出るから船は出せねえよ」


「金貨200枚出します!そのクラーケンをぶっ殺しに行きたいんです!」


「「「金貨200ぅ!?」」」


金貨200枚など庶民には無縁な額だ。そもそも金貨1枚でさえ滅多にお目にかかれない。本当に大漁の時にしか見たことがない。大富豪か?いや、それよりも今この変わった少年は何と言った?


「クラーケンをぶっ殺すだァ!?んなことできんのかよ!」


「はい!やってみせます!」


自信たっぷりな少年。クラーケンを倒してくれるのは願ったり叶ったりだが…。


「オレはいいぜ。ただ、無断で船を出すわけにはいかねえ。村長に話をして許可が出れば、だ」


「おい、大丈夫なのかよ!?」


「クラーケンの棲家の手前でおろしてくれればいいです!俺、海歩けますんで!」


そう言うと少年は海の上をピョンピョンと跳ね回り、走り回る。こりゃあ本物か…?訝しんでいた漁師達も期待を持ち始めた。


………


「ふむ…クラーケンがいなくならなければ我々は死ぬしかない…国もセントフレメンスへの支援でこちらへ手が回らぬ様子。そもそもアイアンクレスタは海軍がない。藁をも掴むとはこう言うことか…旅のお方、お任せできますか」


村の人のことを考えればこのままでは職を失う。皆漁師としてのみ生きてきたため、職を失えば飢えるだけだ。村長は旅人の身の危険も案じたが、それよりも長として村の人々を守らなければならなかった。この少年は自信満々であるし…ここは村の人々を取らせてもらおう。


「ありがとうございます。漁師さんは守りますので安心してください」


「どうか、よろしくお願いいたします…ところで…あなたは一体?名のある騎士…ではなさそうですが…」


「ああ、俺は通りすがりの魔王です」


それを聞いた村長は泡を吹いて倒れた。


………


「ありがとうございましたー!危ないので離れててくださいねー」


「日没までに戻らなかったら置いて帰るからな。こっちも命かかってるからな」


「はい、それで大丈夫でーす。じゃあ、いってきまーす」


呑気に動物でも狩りに行くかのように手を振って海を歩いて行った。大丈夫なんだろうか…本当に。漁師達は心配になってきた。


「さーて。じゃあ始めますかー」


フォールはクラーケンの棲家へ歩いてやってきた。ステラにふざけたことをぬかしやがったこいつだけは絶対に許さない。必ず殺す。そう思ってフォールは担いでいた皮袋をひっくり返した。中身は…漁村でかき集めた生ゴミ。


「やーいイカ野郎〜!出てこいこのやろー!俺と勝負しろー!」


思い切り挑発する。フォールはクラーケンがプライドが異常に高く、こう言うことをすればすぐ激怒して出てくるだろうと思った。自分を挑発している様をアイちゃんを通して見ていた時にこれを思いついていた。


予想通りに水中から丸太のような触手がフォールに襲い掛かる。フォールはサッと避けて攻撃を回避する。


「このクラーケン様の棲家にこんな汚く臭いものを投げ捨てて俺様と勝負しろだと…?随分とふざけた真似をしてくれたな」


「ふざけてんのはお前だろ。お前は殺す。絶対にな」


「ワハハハハ!この俺様を誰だと思っている!?貴様…許さんぞ?死ぬ前に名前だけ聞いておいてやろう」


名乗れと言うのでサラッと挨拶だけしておこう。


 

―どうも。通りすがりの魔王です。


 


と。それを聞いたクラーケンは高笑いを浮かべた。


「ワハハハハハ!貴様が!?魔王!?年々魔王は弱くなっていきおるわ!!!貴様のような青瓢箪が!!フハーハハハハ!!命乞いにでも来たか!?しかし、あの女神の奴隷はいないようだなァ!」


「奴隷…?誰が?」


「女神の奴隷が貴様のところにいるだろう!そいつを寄越せと言っているんだ!」


「奴隷なんかいねえよ。テメエ…誰を奴隷だって言ってんだ…?」


フォールの語気が強くなる。フォールは怒るとかなり口が悪くなる。敵対しているならなおさら。


「奴隷だろう?こちらに寄越せば命だけは助けてやる。我が子を孕ませ、産ませ、そして陸を探し回らせて俺様を陸に上がれる進化の秘宝を手に入れる!そしてこの俺様が魔王として降臨するのだ!」


「お前、頭悪すぎだろ。今からそんなあるかもわかんねえもん見つけさせて魔王になる?ふざけんのも大概にしろこのクソイカ野郎…!ステラはテメエには渡さねえ!ステラは俺の仲間だ!渡すわけがねえだろうが!!ふざけやがって!テメエは外道だ!俺は外道が大嫌いだ!!死んでいいねぇ!!!」


「馬鹿めが…おとなしく奴隷を差し出していればよかったものを。死ぬがいい!」


クラーケンの太い足がフォールを襲う。フォールは素早くそれを避ける。これくらいで死なれては俺様を愚弄した罪は晴れん。さあ、もっと抵抗しろ。最後に笑うのはこのクラーケン様だ!クラーケンは絶対の自信を持っていた。海で負けるはずがない。海の王。暴君。それは揺るぎないのだ。


「遅え!!その足切り落として刺身にしてやらああああ!!!」


「むっ!?」


速い!!一足でクラーケンの下へ飛び込み、その足を切り落とそうとする。黒い剣が物凄いスピードでクラーケンの足を襲う。剣はクラーケンの足へ食い込み、そのまま切り落とす…はずだった。


「………!!」


斬れなかった。まるで手応えがなく、ぐにょん…と気持ち悪い感触がフォールの腕に残っただけだった。そして、その足はそのまま勢いをつけてフォールを横薙ぎに吹き飛ばした。


「ぐう!?」


水面を転がるフォール。しかし、すぐさま立ち上がる。


「痛えなコラ!死んだらゴフッ!どうすんだ!」


「そのまま一撃で死んでいた方が幸せだったかもなぁ。次はどう出る?魔王よ」


(何が起きたかわからない…確かめないといけないな。もう一発は覚悟するか)


フォールは魔王討伐の頃からの数えきれない戦闘を繰り返し、経験は歴代の魔王など比べものにならないし、人一倍である。故に戦闘に関する勘と引き出しは無数にある。もちろん、こう言った触手を持った魔物や多足の魔物との戦闘も数多い。だからこそ、相手の出方を伺うために一発もらうことも計算に入っている。


「一発斬るまでお前を斬るのをやめなーーーーーーい!!!」


「むぅ!?」


またしてもフォールの疾風の一撃。やはり一撃目と同じようにクラーケンの足はぐにゃり…と剣を受け流した。


「同じことをしても通じるわけがなかろう!!」


「チィ!」


またしても弾き飛ばされる。しかし、今度は完全にガードしていたため、ダメージはほぼない。お前も同じことじゃねえか。そう思っていた。


三度目の斬りかかり。先ほどよりもスピードが増しているが同じこと。グニャリ…と足で剣を受け流す。トドメだ!とクラーケンは笑いながら足を上げようと思った。しかし、先ほどとは違う。フォールはニヤァ…と笑った。クラーケンはその笑みに薄寒さすら覚えた。


「東国の秘剣!燕返しだーーーーー!!!」


「ぬおぉ!!??」


振り下ろした剣を返し、そのまま振り上げる!クラーケンの足を斬り飛ばした!三度斬り飛ばせなかった足をついに斬り飛ばしたのだ!


「ぬうう!?なぜだ…!なぜだ!」


「お前の動きを読んだんだよ。一発目はマジでわからなかった。二発目で確かめ三度目で成功だ。二度もやればわかる。斬られる瞬間に力を抜いた。だから俺の剣の力が全部逃げて斬れなかった。これが種明かしだ」


(此奴…ただの戦闘狂ではないのか…)


フォールの戦闘能力は高い。クラーケンの足はフォールの剣がぶつかる瞬間に力を抜いた。結果としてふにゃふにゃした足はフォールの剣の力を散らしてしまい、斬ることができなかった。二度目でそれを見抜き、三度目は力を抜いて攻撃に移るため、力を入れた瞬間に切り返した。油断したクラーケンの足は斬り飛ばされたのだ。


「もうめんどくせえ。お前の足を全部ぶっ飛ばして終わりだ!」


「小癪な!やれるものならやってみるがいい!」


「行くぜオラアアアアア!!俺の剣は!風をも斬り裂ーーーーーく!!!断空剣<ウィンドスラッシャー>!!!」


フォールが剣を振るうと真空の空気を斬り裂く衝撃波が飛ぶ!その衝撃波はいとも簡単にクラーケンの足を全て斬り飛ばした。


「何いいいいいい!?」


「お前は開きになっとけええええええ!!」


フォールが加速してクラーケンへと飛び込む。しかし…


「ブッ!」


「!?ぐあ!!」


クラーケンが何かを吐き出した瞬間、フォールの視界は黒に塗りつぶされ、光を失った。目が見えなくなってしまった。


「ハハハハハハ!俺様がこの足だけで終わりと思ったか!?俺様の墨はちょっとやそっとでは落ちんぞ!」


「クソ…!見えねえ!」


「フハハハハ!そして満を持して斬り落とした足だが…すぐに生える!さあ、俺様の足からは逃れられんぞ!」


気配と風切り音を頼りに何とか避けてみせるが、やはり視界を奪われたことは痛恨だった。虚しくもフォールはその足に絡め取られてしまう。


「ウオオオオオオオ!!!」


「無駄だ。力で勝とうなど、その小さな体では無理だな…貴様は危険だ。このまま海の底へ連れて行ってやろう」


フォールはそのままクラーケンに海に引きずり込まれてしまった。抵抗すれどクラーケンの束縛の力は強く、ほどくことができない。海へ引きずり込まれ、光も届かないほどの深さへと連れていかれる。


「フフフフフ…光も届かない海の底へようこそ…とは言っても貴様はしゃべれまい。ここが貴様の墓場になるのだ。俺様に盾突いたことを後悔するがいい。そして、貴様の首を引きちぎってやろう。そしてここに貴様が飼っている奴隷を連れてきて…首だけになった貴様の前で犯してやろう。子も産ませてやろう。フハハハハハ!!!情けない主人の前で惨たらしくこき使って飼ってやろう!!!」


クラーケンは上機嫌だった。前は敗れた魔王に今度は勝った。そして魔王を殺し、極上の女。それも堕ちた女神だ。それを手に入れることができた。強大な力を持つ女神と交わり、子を設ける。そして陸に上がり世界をも支配する。最高だ。


「何がメイドだ!しょせんは奴隷なのだ!物のように扱って何が悪いのだ!貴様の所有物ならなおさら!泣きわめき魔王を呼ぶ声を聞くがいい!女などしょせん子を産む機械だろうが!!!」


機嫌がよくなって調子のよいことをベラベラとしゃべる。しかし、それがいけなかった。クラーケンは絶対な勝利を望む。海の中では負けることはない。そう思っていた。かつての魔王が海の中では手も足も出せなかったから。しかし、フォールは違う。



さっきからテメエ…いい加減にしやがれ



「ヌッ!?な、何だ…俺の…俺様の力が…負けている…だと!?」


「さっきからステラのことをベラベラと…ステラは物じゃねえんだよ…子を産む機械だ…?なめてんじゃねえぞ、テメエ!!!!!」


「ぐ、ぐおおおお!?う、腕が…ほどける!!!なぜだ!?なぜ貴様!海の中でしゃべれる!動ける!?」


「ステラはテメエみたいな外道には渡さない!!!テメエは外道だ!俺は外道が大嫌いだ!死んでいいねえええええええ!!!!!」


魔王の真紅の眼が深海の暗闇で煌々と輝く。その輝きは先ほどの眼とは比べものにもならないほど輝きだしていた。そして…


「ウオオオオオオオオ!!!!!」


ブチーン!!!とクラーケンの絡みついた足を引きちぎった。凄まじいパワー!!何だこいつは。まずい。何だかわからないがとてつもなくやばい。このままでは殺されるかもしれないと危機を覚えたクラーケンは逃げる選択肢をとった。足を使い、高速で魔王フォールトの距離を取ろうとする。


「……!?」


フォールとの差が開いていない。どれだけ海をかきわけても魔王との距離が縮まらない。フォールが魔法で追いかけてきているのだろうか…?しかし、クラーケンはついに海を蹴ることもできなくなった。


「う、動けん!?なぜだ!?海は俺様の…独壇場のはずだ!?」


「テメエは絶対逃がさねえ…そこでジッとしてろ」


周りを見ると何かが渦巻いている。海だ。海が渦巻いている。渦潮!?バカな。こいつはこのような魔法を使うことができるのか!?


「極大竜巻魔法だ…!これでテメエの動きを止めた…次は…海面に引きずり出してやるよ。俺も同じだよ。俺がただバカみてえに剣を振り回すだけと思ったか…!テメエは殺す…!この魔王フォールが絶対にな…!オラアアアアア!!!!お空へご招待だああああああああ!!!!」


「うおおおおおおお!??!?!?!」


凄まじい勢いで水面へと引きずり出されていく。フォールはうまく竜巻魔法を駆使し、押さえつけることも、そして水面へ引っ張り出すこともやる。フォールは魔法の扱いもうまいのだ。フォールはなぜ海の中で活動できるのか?それは「深海の宝玉」である。


かつてこれを手に入れた魔王も、ステラさえも知らない隠された特殊能力。海の上を歩くことが可能。それと同時に一定時間だけ海の中に落ちたとしても呼吸と活動ができること。しかし、壊れてしまえば終わり。宝玉は壊れ、おそらくフォールでも水圧につぶされ。呼吸ができずに死んでしまうだろう。現に、宝玉にはヒビが無数に入り始めている。


竜巻は渦となり、そして…クラーケンを水面へ引きずり出した!しかしそれだけだ。例えここから竜巻魔法をさらに繰り出そうが効果はない。炎魔法を出したところで体を覆う粘膜があるために効果は弱まる。無駄な抵抗だ。まぐれは二度は通じん!次こそは海の底で終わらせてやる!


「受けてみろよ…俺の雷魔法を…!」


空はさきほどまで晴天だったが、真っ黒な雲が立ち込め…少しばかりの稲光が見える。そして…その雷は自然の雷ではない。赤黒い…寒気を催すことほどの死の気配が漂う稲光…。ま、まさか…!?こんな魔法は聞いたことはない!


「お前は…丸焼きになっとけええええええ!!!!!『大雷魔法』オオオオオオオ!!!!」


フォールが手で印を結ぶとその赤黒い雷は中空へ放り出されたクラーケンへと落ちた。轟音。粘膜をまとっていようが関係ない。その雷はクラーケンを内部まで焼き尽くす。


「ヌワーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」


煙を噴き、クラーケンは水面にたたきつけられる。こんがりとクラーケンを焼いた雷は致命傷だった。


「あ、ああ…うう…」


「ステラを物扱いしやがったからだ。なめてんじゃねえぞ」


散々、魔王フォールのメイドを奴隷扱いし、物のように扱うことと軟体生物の分際で汚い性欲をステラにぶつけようとしたことがフォールの逆鱗に触れた。そして、深海の宝玉の存在を知らなかったこと。フォールを侮ったことが敗因だ。フォールはステラを馬鹿にする者を絶対に許さない。自分を見下す冷たい眼差しはやり合った魔王の比ではない。クラーケンは純粋に恐怖した。


「あ、ああ…ころ、殺さ…ない、で…」


「ダメだ。お前は殺す」


「ひ、ヒイイ…」


「海での勝負に絶対の自信を持ってたようだけど、頭が足りなさすぎだ。油断しすぎ。俺のことを知らなさすぎだよ。前の魔王の強さは知らないけど、大したことなかったみたいだな」


魔王の強さは比ではない。この魔王は強すぎた。数多の戦いを勝ち抜いてきたフォールと、戦いをほぼ知らないかつての魔王では経験値が違いすぎる。クラーケンも同様。そして何より…その無類の強さを持つフォールを怒らせて戦闘力を上げてしまったことも敗因だろう。


「そ、そうだ…俺様…い、いえ…私を魔王様の配下にしてください…海に出てきた魔王様に仇なす賊共を私めが退治いたしましょう…どうか…お願いします…」


「お前さ。俺のことを殺そうとしてさ、世界をものにしようとしてるような奴を仲間にしようと誰が思う?」


「お願いします…!殺さないで…裏切りませんから…裏切りませんからああああ!!!」


「俺は外道と認めて殺すと言った相手はな…絶対に殺すんだよなあああああ!!!信用できないしなあああああ!!!」


「う、うわああああああ!!!!!」


「ステラを馬鹿にしたことを地獄で反省しろ!!お前はイカの串焼きになっとけえええええええええ!!!!」


空高く飛び上がったフォール。そして剣を持っている反対の手に、赤黒い雷を落とす。それはフォールの手に留まり、やがて槍の姿となる。フォールの必殺技の一つ、雷の槍。時に剣より凄まじいダメージを与えたそれは、幾度もフォールに勝利をもたらした。フォールが海の中へ必死に逃げようとするクラーケンめがけてその槍を投げ放った。狙った獲物は逃さない魔槍「ゲイ・ボルグ」のごとく、槍はクラーケンを追いかけ、天辺から口を貫通し、クラーケンを中から焼いた。悲鳴にもならない断末魔の叫びをあげて、クラーケンは絶命した。


「俺を殺してから陸に上がる方法を考えるってのもそもそもバカすぎんだろ。地獄で勝手に支配ごっこをやってろ、ボケが」


吐き捨てるように言って、水泡になって消えていくクラーケンの最期を見た。めんどくさそうにフォールはその場を後にした。


………


わたくしは魔王様に撫でていただいた頭をずっと自分で触りながら魔王様のお帰りを待つしかありませんでした。あの撫でてくださった感触が消えません…魔王様…まさかとは思いますが…クラーケンに敗れて今頃は海の底へ…いえ、そのようなことはないと信じております。魔王様は今までの魔王とは違うと感じるお方…必ず…わたくしのもとへ…帰ってきてくださいますよね…?


わたくしのために…お怒りになられた魔王様…ああ、この胸の感情は…わかりません。一万年以上生きているわたくしでも…わからないものがあるなど…魔王の奴隷となって…魔王様のお帰りをここまで心配したことなど初めてでしょう。帰ってこなければ、わたくしは自由の身となると言うのに…今は。帰ってこられないこの時間が数年のようにも。数十年のようにも長く感じます。いえ、これですらわたくしにとっては人間にとって秒のようなものでしょう。


本当に…帰ってこなかったら…。不安で押しつぶされそうになっておりましたところ…。


「ただいまー」


「……!!」


このお声、間違いございません!魔王様がお帰りになられました!わたくしは自室から飛び出して魔王様をお迎えいたします。


「おかえりなさいませ、魔王様。魔王様…クラーケンは…?」


「殺したよー。ステラを馬鹿にする奴は神様だってころーす」


「は、はあ…」


冷静にわたくしは魔王様をお迎えいたしました。心配していた、などと言ってしまうと「負けるとでも思っていたのか。無礼な奴め」とわたくしを引き裂いてしまったことがございましたので。ですが…ホッといたしました。ご無事で…何よりでございます。


「ステラー。ごめん、指輪壊しちゃった」


「魔王様、これは魔王様のものでございます。謝られずとも…」


「そっかー。あ、そうだ。いっぱいお土産をもらったぞー」


「まあ…これはなんと新鮮な…イカにエビに…」


魔王様はアイアンクレスタの漁村を支配下に置き、供物をもらってきたようですね。素晴らしいことです。新鮮な海産物。魔王様がご所望しておられたものが手に入りました。さしみださしみだー!とはしゃぐ魔王様。これは腕を振るう必要がございます。


「あ、ステラ。これ作ってくんない?アクアパッツァっていうのー。これ、ムール貝っていうの。アクアパッツァに使えだってさー」


「あくあ…ぱーっつぁ…ですか…レシピ…ですね。材料もございますね」


図も描かれておりました。これは…とてもおいしそうですね。ふむ…魔王様に喜んでいただけるよう、頑張りましょう。


イカはお刺身と姿焼き。そしてあくあぱーっつぁ。サラダに…パンに。よい仕上がりです。


「うまーい!ステラー、うまいぞー!」


「ありがとうございます、魔王様」


これは…なんと濃厚な魚介のすぅぷ…お魚もしっかりとすぅぷを吸って濃厚な味になっております。これは…大変美味でございます。魔王様はお刺身も姿焼きも。何もかもをきれいにお召し上がりになりました。見ていて気持ちが良いほどに。このあくあぱーっつぁは…この後も魔王様の好きなお料理の一つとして、何度も振る舞うことになりました。


お風呂ではしっかりと背中を洗いました。魔王様は髪も…洗ってくださいました。とても嬉しそうでございました。わたくしは魔王様に頭を撫でていただいているようで…何とも言えない幸福感がございました。


寝室に戻り…わたくしはまた頭を触っておりました。このわからない感情は…何なのでございましょう…今のわたくしには理解は到底できませんでした。また、撫でてくださりますでしょうか?そのまま髪を掴んで乱暴を…?いえ、魔王様はきっと…そんなことはなさいません。わたくしは少しだけ…魔王様を信じてみよう…そう頭をずっと触れながら思うのでした。そして…わたくしは寝不足で…翌朝魔王様に少し怒られてしまいました。


「ステラー。寝不足はお肌の敵だぞー」


「…はい?」


怒る部分が違うのではないでしょうか…。

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