Web小説万歳

クライングフリーマン

Web小説万歳

 私が、Web小説を書き始めたのは2021年9月のことだった。

 母の施設の面会制限ばかり続き、施設ともトラブルが続いた。

 施設は、コ〇ナに乗じて、勝手なことばかりしていた。ここも同じか。

 どこの介護施設も最初チョロチョロ、中パッパッと変わって行く。まるでご飯の『炊き上がり』変化のように。

 私には、逃げ道が必要だった。

 ワープロで日記を書く内、ふと小説を書きたくなった。

 大学生の頃、試しにアニメシナリオを書いたことがあったが、誰も真剣に読んでくれなかった。

 3ヶ月書いて、「賞」に応募した。見事に落選。

 でも、その3ヶ月が礎になった。

 自分自身で『推敲』しながら書いて、書き終わったら、『校正』をしていく。

 地道な作業だ。プログラマをやっていた時、プログラミングは早く無かったが、マニュアルや設計書は早かった。

 考えながらタイプするからだ。『技能』は優れていても、『作文』が苦手。

 案外、そんな技術者が多い業界だった。

 紙の書類は、時間がかかる。ワープロなら、何度でも手軽に修正出来る。

『置換』機能を使えば、一気に誤字も変更出来る。

『清算』を『精算』に変えるのに一分も要らない。

 年が明け、Webサイトに、本格的に投稿し始めた。

『気晴らし』は『ライフワーク』になった。

 10カ所のWeb小説サイトへの投稿は日課になった。

 いつか、母か私に『もしもの事』があれば、中断せざるを得ないだろうが。

 私には、地位も名誉も財産も、家族すらない。せめてもの『生きた証』をクラウドに遺すことにして、吹っ切れた。

 50歳を迎えた時、今まで自分は何をやってきたのだろう?私には、地位も名誉も財産も、家族すらない。私には『未来がない』のか?どうしても、仕事が取れないのは、もう限界なのか?

 散々、悩んだ挙げ句、『自分は<時の氏神>』なのだと思うことにした。

『時の氏神』とは、『ちょうどよい時に出てきて仲裁する人。その時に際してありがたい人』という意味だと伝えられる。

 私は、今で言う『インフルエンサー(影響を与える人)』として捉えた。

『時の氏神』だから、『一般的な幸せ』は求めてはいけないのだ、と自戒したのだ。

 別に『仲裁』が得意だった訳ではない。

 だが、人間関係において、キーパーソンになってきたと自負することにした。

 介護の『キーパーソン』ではない。「物事の鍵を握る中心人物」にはなり得る、そう自らを叱咤激励するようになった。

 60歳を超えた時、父が交通事故に遭い、父の人生は大きく変わった。

「もう帰れない」。父の問いに、覚悟の言葉を発する事が出来たのは、自分の運命を受け入れる準備が出来ていたからだ。父の入院中、私は『心筋梗塞』になった。派遣の仕事は途中で辞めざるを得なかった。

 覚悟を決めていたからこそ、また、自分の運命を受け入れた。

 介護施設から病院に入院した父は、見る見る衰えて行った。

 父の入院中、私は脊柱管狭窄症になった。ただの腰痛では無かった。

 高血圧で入院中の母の外出の許可を得て、病院から病院に、母を父の見舞いに連れて行った。

 2度目の危篤の時、父は安らかに旅だった。

 私は、母と同居するようになった。4年7ヶ月。40年以上離れて暮していた母と同居した日々は、ある日突然、終わりを迎えた。

 脳梗塞で入院した母は救急病院から療養型病院へ、そして、介護施設へ。最初は、母を引き取り、自宅介護する筈だった。

 だが、またも運命を受け入れざるを得なくなった。膝の軟骨が無くなって行きつつあったのだ。

 丁度、まだリハビリが足りない、と母が言い出したのを機に特養に入って貰った。

 だが、父が入院していたその施設は、虐待の兆候が見られたので、サ高住に引っ越しした。

 その施設でも、次の施設でも、『最後の砦』だった施設でも虐待があった。

 2回目の危篤の時、施設内で『老衰死』する筈だった母を見ていられなくなり、救急車を呼んだ。救急病院で1ヶ月。『死』は脱出したものの、食事が取れなくなっていた。

 施設には帰れなくなった。私は、救急病院の説得に頷かなければならなかった。

 転院した療養型病院で『眠り姫』の寝たきり生活が始まった。

 最初は、『面会禁止』で、洗濯物受け渡ししか出来なくなった。昨年、梅雨が始まった頃、『面会制限』に変わった。

 そして、2年近く。母とまともに話せたのは、たった『3回』だった。

『15分』という面会規制の中でだ。

 私と母の『修羅の道』は続く。私の鬱憤や愚痴は、拙作の中で『昇華』している。

 私は書き続ける。『ライフワーク』の為に。

『未来』の為に。

『時の氏神』だから、と自らに言い聞かせて。

 ―完―


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