第32話 気になってる
証拠なんてない。そんなものは見つけられなかった。
「……そうなの……?」
「うん。今回の事件は
「……そうだね……『おそらく
まだ恋人に対して敬語で話してるのか。まぁ彼ら彼女らの恋人関係に口を出すつもりはない。
それから
「『
「……似てないモノマネ、やめなよ……」しかしたしかに強力な助っ人だ。「どうしても困れば頼るよ。そのときはよろしく」
「了解」
今の
ともあれ
「それで……証拠がないってのはどういうこと?」
「言葉の通りだよ。私は証拠なんて持ち合わせてない」
「……じゃあ……どうして?」
「簡単な話。証拠を持ってる、って情報を流しただけ」
「……?」
「校舎裏でね。私は
「……
「そういうこと」
だから挑発した。
「……
「そこが私も不安だった。
「じゃあ……どうしたの?」
「……
「……
「ああ……クラスの……」少し言い淀んでから、「友達」
「
「どういうこと?」
「もしも
証拠を持っていると
そうなれば証拠があるという情報は嘘であることがバレるかもしれない。
しかしそこで恋の話をしたらどうだろう。フラれるところなんて多くの人が見られたくない。その姿を見せたということは、盗み聞きされるのは想定外なのだ。そう
結果として
……彼には感謝しなければ。作戦のことも当然ながら、自らの危険を増やしてまで助けに来てくれたことも。
……
さて……もうコーヒーも飲み終わってしまった。
「これで事件の話はおしまい。これ以上は私も情報を持ち合わせてないよ」
「
「そうだね……あんまり興味ないし」教師として戻ってくることはないだろう。「事件のことは話したし……こっちから相談をしてもいい?」
「どうぞどうぞ」
そこで
なんだか恥ずかしい。だけれど相談できる相手は
「……ちょっと……気になってる男子がいる」
「ほほう……恋愛相談?」
「……浮気になるのかな……」そうかもしれないけれど……「考えてみれば先輩に……ああ、前の恋人に『新しい恋を探してほしい』って言われてたんだよ。だから私もそろそろ……前を向く時が来たのかなって……」
いつまでも過去の恋に囚われて後ろを向き続ける。そんな状態に別れを告げる時が来たのかもしれない。
無論……先輩のことは忘れない。
だけれど……他の恋に目を向けるくらいには彼の死を受け入れられてきた。
「恋愛相談なら……
「文化祭で大勢の観客の前で告白したら?」
「……相談する相手を間違えたかな……」
「冗談冗談」
そう言って
……
こんな日常が続けばいいと思う。くだらない冗談で笑って、ちょっとしたことで傷ついて、面倒くさい事件に巻き込まれて。
……
人はいつ枯れるのだろう。
答えなんて出ない。でもいつかは枯れるのだろう。どれほどの有名人でもアスリートでも、時間が経過すれば枯れ果てるのだろう。
……
だからこそ今日という一日を全力で生きるのだ。
いつか枯れるその日まで……
その花はまだ枯れていないと思った 嬉野K @orange-peel
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