雅やかな王朝文学の華の時代、平安時代。その者、紫の闇を纏いて王朝の床下に降り立つ。
その者の名は、紫式部……いえ、誤記ではありません。あの紫式部さん。ご本人です。
もしも紫式部が、極まった文学狂のアングラ作家であったなら?
そんなイフで始まる本作、かなり極まった性質の文学厨である幼少期から、「己の文芸道のためならば何物をも厭わない」というかなり偏った性癖に昇華した主人公が、闇の月と恐れられる藤原道長と組んで王朝に文芸的激震を走らせるのが本作。笑えることは間違いない!
あ、紫式部さんを美化している方には不向きです、ギャグ特化なので、こればかりはご了承をば。
ただ、作者様の歴史知識がちりばめられ、ただのギャグ作品では収まらず、なるほど、ここに繋がって……!と思わせる筋書きは流石のひとこと。
麗らかな冬の午後、ちょっとひと笑いしてみたいと思われた方にオススメの逸品です!
■あらすじ
地獄の根暗、そう呼ばれた文系でありながら武闘派(!?)少女「ゆかり」こと未来の「紫式部」が、一心不乱に、床にも衣にも墨を撥ね散らかし、几帳や屏風の調度に書き殴り、周囲の人々を巻き込み、おそれられながら至る大作家への道のり。
世界最古の小説(虚構でもって人生の真実を描き出す:novels)として、世界文学史にも名を連ねる『源氏物語』。
その作者たる驚異の大作家・紫式部の一代記!
■おすすめポイント
(1)紫式部@ゆかりのキャラ
「闇に引きずり込まれるような、陰湿な瞳の輝きと、情念を持つ娘」ゆかり。
彼女のキャラが、もう凄まじいです。迫力です。
何より凄まじいのは、やはり「書く」ことに対する執着。
フィクションを多分に含む事は承知しておりつつも、
こんな人だったら『源氏物語』を生み出せたかもしれない、なんて思ったりします。
人と人、或いはその感情の交錯するところ。
――気がつけば、バールのようなもの(?)を片手に忍ばせ、にたりと笑う、その人の影がどこかにあるかもしれない。
何を言っているのかわからないかも知れません。
お読みいただけば、意味はわかります!笑
(2)語彙のセンス
歴史物ということで、ちょっと敷居が高く感じるかもしれません。
心配無用です。
堅苦しく考えずに、読み始めてみましょう。
フィクションと、幸せとお笑い成分てんこ盛り!!
抱腹絶倒、間違いなしです!
作者様の歴史に対する知識、造形の深さがあってこその、融通無碍なお話の展開も「お見事」の一言。
オマージュがちりばめられていたり、
歴史上の人物たちの解釈も「こうくるか」の連発。
そういった面白さもさることながら、
縦横無尽な軽快さに、ピリッとスパイスの効いた言葉選びのセンスが一際異彩を放っています。
(3)道長(バカさま)との関係は……?
彼女の墨を与え、紙を与え、仕事を与え、創作活動を支えた、藤原道長。
彼との出会いもまた、彼女の「書く」ことへの執着故。
……って、こういう出会い?!
彼との関係性というか腐れ縁もみどころです。
現在連載中の第二部では、現代に舞台が移っています。
そこでも道長との(多分)腐れ縁も続いています。
そこへまた、過去に関連のあった、ある人物も登場し……?
彼らの関係性がどうなっていくのか(或いはどうもならないのか)、引き続き追っていきたいと思います!
■こんな方に
☑とっつきやすい歴史物が読みたい方
☑『源氏物語』や紫式部、王朝文学に興味がある方
☑とにかく面白い話が読みたい方
超面白いです。
歴史ものを苦手な方、安心してください。そんなものは不要です。
作者に歴史知識があるのは文章で伺えますが、全てライトな文体で進み、知識なしで読めます。
歴史ものによくある固さも無し!
そして主人公は、紫式部なのですが、もはや執筆の物の怪です。明らかに陰の者です。
執筆意外に興味が無く、その為ならあらゆる手段(物理も)を行使します。
その姿が非常に面白い。
善悪の概念や道徳など、この紫式部は母体に置き忘れて生まれてきたのでしょう。
もはや滅茶苦茶で、笑いが止まりません。
その奇行に、「おい! 誰か安倍晴明を呼んで払ってもらえ!」と言いたくなりました。
これぞ歴史コメディのライトノベルです!
読書好きは、絶対に読まなきゃ損です!
根暗だけど、いざとなればガッツがあり強引な、少女ゆかり。
男まさりで頭がよく、文章の恐ろしく上手い、ゆかり。
「男に生まれればよかったのに」と言われてしまう、ゆかり。
後の、紫式部です。
そんなゆかり、こと、紫式部のとっても笑える成り上がり一代記。
美しい十二単に墨をはね散らかし、ネタのためなら暴力もいとわず、執筆に情熱をかたむけた、紫式部。
物書きとしてこの姿勢は見習わなくてはならないし、彼女のヒット作『源氏物語』にあやかりたいですよねっ。
地獄の根暗の笑いを浮かべながら、陰謀家の道長と二人三脚で時代を生き抜く紫式部に、ぜひエールを送りましょう!
平安時代の才女の筆頭といえば、紫式部を
思い浮かべる者は多いだろう。
かの、有名な【源氏物語】の筆者にして
『女房三十六歌仙』にも選ばれる程の
女流歌人として人気を博していた、彼女の
……真実の姿が!まさに今、ここに!!
もう、初っ端から笑う。
但し、物語の骨子は史実に基づいて、何ら
おかしな事はない。その筈なのに、何故か
笑わされてしまう。そして、ハマる!
平安宮中の雅やかな様子や人間模様、
作家『紫式部』としての執筆の苦悩などが
細やかに、そしてわかりやすく描かれる
この作品は、様々な世の憂いを一喝、笑い
飛ばす様な彼女の強かさと賢明さが余す所
なく描かれている。
誰か世に ながらへて見る 書きとめし
跡は消えせぬ 形見なれども
この作品を読んだら、きっとアナタも
紫式部の『ファン』になる事、請け合い!