僕たちの生存戦略〜異国で暮らすあなたへ〜

 「生存戦略〜!!」と大きな声で言うアニメを知っているだろうか。そのアニメは『輪るピングドラム』って名前で、私の最も好きなアニメのひとつでもある(「最も」が複数あるのはおかしい!と言わないでほしい、矛盾というものは人生に付き物)。言葉とは気づきを与えてくれるが、このアニメを思い出した私は異国での生存戦略について深い思考を始めることになった。さて、今回は筆者の思考の旅にお付き合いいただくことになります。軽い気持ちで読んでいってください、よろしく。


 学生時代の頃、バイクに乗り始めてから道路を走るバイクに目がいくようになったことがある。これは心理学でいう選択的注意みたいなものかなと思っている(心理学に精通している人、ちがっていたらごめんね)。それと同じように異国にしばらく住んでいると今まで気にしていなかったことが気になるようになったり、知りたいとも思っていなかったことに興味が沸いたり、「芸術は爆発だ」並の好奇心が爆発していくのだ。「あの国の人はここにどうやって来たんだろう?」「ロンドンバスで本読んでいる人は車酔いしないの?」「サランラップが切りにくい、なぜ?」などなど。お金もない職もない住む家もない人でも関係ありません、海外に来たのなら人生を楽しもうとするインナーチャイルドが暴れ始める時期は必ず訪れる。リアルも大事なんだけど、それを無視することは難しい。だけどそういった現象に対して私たちは乗るべきだと私は考える。これは一種の「伸るか反るか」の場面になる。しかしここで乗らないのはもったいない。これは私の信条だが「昨日と同じことをしても明日は変わらない」という考えのもと、こういったムーブには乗っかるのが吉だ。仕事と子育てを両立するかのごとく、この遊び心とリアルを両立していくのがいいだろう。


 ここで異国での生存戦略を真剣に考えてみよう。マズローの欲求5段階説というのがある。これはざっくり言ってしまえば衣食住や安全な環境を基盤にコミュニティや自己実現に対する欲求が成り立っているということを指す。今、自分がどの欲求かを認識し必要なものを段階的に手にいれる、これが通常どこの国でもどんな人種でも実践されている生存戦略だと思う。このことを考えると、先ほど話したムーブが起こったとき、乗らない方がいいのでは?と思うだろう。だけど生活というのは2択ではない。何かを優先しながらでも、隙間時間にはやりたいことに取り組むことができる。その結果、実家に帰ることになろうが目標を達成できなかろうがそれはそれでいいのだ。巡り巡って自分の思い描いた生活をのちのち手にすることはよくある話だし。なのでもっとその先の未来、赤毛のアンのように “God's in his heaven ― All's right with the world!”(神、そらに知ろしめす。すべて世は事も無し。) とつぶやければ最高の着地になる*1。


 つまり異国での生存戦略の要となるのは、目先のことに取り組みつつ、想像するハッピーエンドのために自分の中にある花を育てることだ。「あのときからやっておけばよかった」「もっと勉強すればよかった」そんな後悔は不要。人は自分という歴史の節々でそのときにできる限りのことをやっているものだと私は考えているため、それを否定することはしなくていい。なのでやっぱり私たちはこれからなのだ。そのために今配られた種を大事に育て、近い未来くじけても、その先の未来で咲かせれば楽しいよね。


 私が住むロンドンではおそらく毎日のように誰かが自分の国に帰っているだろう。それは仕事をクビになったとか、資金が尽きたとか、家族のために帰らなければいけなかったとかいろんな理由があると思う。海外に長く住んでいる人はそんな仲間をたくさん見てきたことだろう。けれどどの道もそこで途絶えたわけではなく、その先にもまだ道はある。そんなことを想像すると少し前向きになれそうじゃないか。万人に効果のあるメソッドは存在しないが、誰かに影響を与える言葉はたしかに存在する。なので私はこれを読んでくれる人たちに、何かよい影響を与えればいいなと思い執筆した。以上で思考の旅は終了。お付き合いいただきありがとうございました。さて、明日もがんばろう!


*1 このセリフは19世紀の英国詩人ロバート・ブラウニングの『春の朝』("A Spring Morning")という歌の一部。和訳は上田敏の訳詩集『海潮音』(1905年)から引用。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ロンドンの日々と変えた声色 ぜんいちろく @zen16

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ