おまけ

第32話

「ねぇ、オリバー」

「ん?」


 気怠さに身を任せ、微睡に落ちる寸前で邪魔をされたオリバーは、不機嫌も露わな目をルークへと向ける。


「俺、26歳」

「あぁ」

「君、22歳」


 それがどうした? と、目だけで問うオリバーに、ルークは小首を傾げて言った。


王立学院ソラリスで、目上の人は敬うものだって、教えられなかった?」

「敬うべき方は敬っている」


 微妙な表情を浮かべるルークに、オリバーは苦笑を浮かべる。


「敬語を使って欲しいということでしたら、今後そういたしましょうか、ルークレイル様」

「えっ? いや、そういうことじゃ」

「私はまったく構いませんよ? あぁ、ルークレイル様にこのような姿をお見せする訳には参りませんね、大変失礼をいたしました」


 重い身体を意地で起こし、さっと夜着を羽織るとオリバーはベッドから出ようとした。

 ルークが慌ててその腕を掴む。


「ちがっ! あーもぅっ! 俺が悪かった! 今までどおりがいいですっ!」

「めんどくさい奴だな」


 夜着を脱ぎ、再びベッドに身を横たえたオリバーの体が、ルークに抱きしめられる。


「俺は寝たいんだが」

「うん」

「離せ」

「やだ」

「寝られない」

「頑張って寝て」

「お前……」


 どうしても放そうとしないルークにため息をつき、オリバーは目を閉じた。


「俺だって少しは、好きな人から敬われたいんだけどなぁ」

「敬意を持てない奴なんか、好きになる訳ないだろ……うぐっ」


 体に回されたルークの腕に力が込められ、オリバーの体が悲鳴を上げる。


「少しは加減をしろっ!」

「ごめん、嬉しくて、つい」

「寝るっ!」


 力の抜けた隙にルークの腕を振りほどくと、オリバーはルークに背中を向けて再び目を閉じた。

 背中にルークの温もりを感じ、口元に、満足げな笑みを浮かべながら。


【おまけ 終】

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S.D.R~Sweet Dangerous Relation~ 平 遊 @taira_yuu

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