『邪祓師の腹痛さん』の作者様が送る、人の闇と光を描いた濃密な物語。

健一には、優秀な弟がいる。かつて想いを寄せた人が弟と結ばれ、一子をもうけ暮らす中、健一は田舎で細々とジャム工場を営んでいた。
しかしある日、弟の勧めで買った会社名義の株が暴落し困窮。トレーダーとして生計を立てていた弟は株の暴落を受け、事務所や家を手放すことになり鬱を患ってしまう。
お人好しの健一は、弟一家を迎えることになるが……。

鬱病の弟、かつての初恋の人、その娘との奇妙な同居生活。そして、ジャム工場で働く人々と登場人物ひとりひとりに差す『魔』。

初めは小さな『魔』は、気付かぬ内にどんどんと大きくなり、やがて闇へと移り変わり彼ら自身を呑み込んでいきます。

清廉潔白な人なんていない。負の感情というのは誰しもが抱くもの。でも、それとどう向き合い、何を大事にし生きていくか。
そんなことを考えさせられる、人の闇の一端を見事に描ききった密度の高いお話でした。

そして、しんどいお話をすらすらと読ませる作者様の筆力……、唸りました。

書き手の皆さんも読み手の皆さんも、いろんな観点から楽しめるお話です。

ぜひ足を止めて読んでみてください。
おすすめです!

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