第6話 世界が思ったよりもだいぶヤヴァイ

秋葉原の街が次第にアニメの世界に染まっていく中、かぐやの3人の求婚者たちが慌ただしく竹取アニメ堂に駆け込んできた。


「か、かぐやさん!外で一体何が...」息を切らせながら店に入ってきた神崎が、突然言葉を失った。


店内もまた、アニメのような鮮やかな色彩と輪郭線で彩られていた。棚に並ぶフィギュアたちが、まるで生きているかのようにポーズを取っている。


「こ、これは...」神崎は目を見開いた。


かぐやは嬉しそうに3人を出迎えた。「みなさん、来てくれたんですね!どうですか?素敵な世界になりましたよ!」


ミライトは興奮気味に叫んだ。「すげえ!まるでアニメの中にいるみたいだ!」彼は店内をキョロキョロと見回し、「これって、最先端のVR技術?それともホログラム?」


二次元介は眼鏡を外し、目をこすった。「夢...ですか?それとも、私の妄想?」


秋葉はため息をつきながら説明した。「いや、どうやらこれが現実らしいんだ。かぐやが何かやったみたいでな...」


神崎は我に返ったように、スマートフォンを取り出した。「これは...大変なビジネスチャンスかもしれない!」彼は興奮した様子で画面をタップし始める。「AIとVR技術を組み合わせれば、この現象を再現できるかもしれない。そうすれば...」


一方、ミライトは店を飛び出し、街中のアニメ化した人々の写真を撮り始めた。「これはヤバい!超リアルなコスプレの極致だ!」彼はSNSに次々と投稿しながら叫んだ。「みんな見てくれ!秋葉原がアニメになったぞ!」


二次元介はノートを取り出し、熱心にスケッチを始めた。「素晴らしい...これこそ理想の創作世界。この光景を、この感覚を、全て作品に描き起こさなければ...」


かぐやは3人の反応を見て、さらに嬉しそうな表情を浮かべた。「みなさん、喜んでくれてるんですね!」


秋葉は頭を抱えながら言った。「おいおい、そう簡単に喜んでいいのか?」


その時、店の外からさらに大きな騒ぎが聞こえてきた。


窓の外を見ると、秋葉原の街全体がすっかりアニメの世界と化していた。道行く人々の髪の色は派手になり、目は大きく輝いている。ところどころで、アニメでよく見るようなドラマチックな出来事が起きていた。


突然の告白シーンや、ひょんなことから始まる追いかけっこ、そして何故か頻繁に起こる「偶然の出会い」。通りの角を曲がるたびに、誰かとぶつかって「きゃっ」という声が聞こえる。


オタクたちは歓喜の声を上げ、夢にまで見た世界を全身で楽しんでいた。「やったー!アキバが聖地になった!」「推しキャラに会えるかも!」


しかし、一般の人々の中には混乱する者も多かった。


「なんで急に髪が緑色に!?」

「どうして空からキラキラが降ってくるの!?」

「ちょっと、なんで急に回想シーンが始まったの!?」


交通も大混乱に陥っていた。信号機が「赤」や「青」の代わりに「ツンツン」「デレデレ」と表示するようになり、ドライバーたちは困惑していた。


電車の中では、主人公気質の高校生が次々と現れ、「遅刻遅刻!」と叫びながら窓から飛び出していく。駅員たちは制止するのを諦め、ため息をつくばかりだ。


秋葉は心配そうに街の様子を見つめていた。「かぐや、これじゃあ大変なことになるぞ。現実世界の秩序が完全に乱れてしまう」


かぐやは少し困惑しつつも、まだ楽観的だ。「大丈夫ですよ、秋葉さん。みんなすぐに慣れて、もっと楽しい世界になりますから」


その時、遠くからサイレンの音が聞こえてきた。


窓の外を見ると、パトカーが近づいてくる。しかし、そのパトカーはまるでアニメに出てくるような、誇張されたデザインになっていた。車体にはネコの耳がついており、サイレンは「にゃーにゃー」と鳴っている。


パトカーから降りてきた警官は、なんとアニメ絵のような二頭身のデフォルメキャラクターだった。


「これは一体どうなってるニャ?」警官は困惑した様子で周りを見回している。


秋葉は天を仰いだ。「まいった...これはもう、どうしようもないな...」


かぐやは興味深そうに警官を見つめながら言った。「わぁ、警官さんまでかわいくなっちゃいました!」



秋葉原の街は、アニメと現実が融合した不思議な世界へと変貌を遂げていった。そして、この変化は秋葉原だけに留まらず、徐々に東京全体へ、そして日本中へと広がっていくのだった...。

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