第8話 秋葉原の戦い

秋葉原の朝は、異様な緊張感に包まれていた。街の至る所に警官隊が配置され、道路にはバリケードが設置されている。そんな中、二つの人の波が街に押し寄せてきた。


一方は、様々なアニメキャラクターのコスプレをした人々。鮮やかな衣装と派手な髪色が目を引く。彼らは「夢の世界を守れ!」「リアルよりアニメ!」といったプラカードを掲げ、熱気に満ちていた。


もう一方は、スーツ姿やカジュアルな服装の一般市民たち。「日常を返せ!」「仕事ができないんだ!」と書かれたプラカードを手に、怒りの表情を浮かべている。


かぐやは竹取アニメ堂の2階から、この光景を不安そうに見つめていた。


「秋葉さん...このままじゃ、大変なことになっちゃいます」


秋葉は深刻な面持ちで頷いた。「ああ、もはや手に負えん状況になってしまったな」


街中に怒号が飛び交い始めた。


「お前らのせいで生活できないんだぞ!」非オタク側の男性が叫ぶ。

「うるせえ! やっと理想の世界ができたんだ!」オタク側の若者が反論する。


警官隊が両者の間に入ろうとするも、その努力も虚しく、ついに小競り合いが始まった。コスプレイヤーのウィッグが引っ張られ、スーツの男性が倒されるなど、混乱は瞬く間に広がっていく。


その様子をニュース各社が一斉に報道し始めた。


「秋葉原で大規模衝突勃発! オタク文化と日常の対立が遂に限界点に!」


かぐやは両手で頭を抱え、震える声で呟いた。「どうして...こんなことに...」


秋葉は彼女の肩に手を置き、「かぐや、お前を責めているわけじゃない。ただ、現実は複雑なんだ」と諭すように言った。


街頭では、両陣営の代表者たちが激しい議論を繰り広げていた。


オタク側の代表、アニメTシャツ姿の男性が熱弁を振るう。「我々には、理想の世界を追求する権利がある! 現実逃避だと言われようと、これが我々の生き方なんだ!」


それに対し、非オタク側の代表、スーツ姿の中年男性が反論する。「しかし、そのために他人の生活を脅かす権利はないはずだ! 仕事も、学校も、日常生活も、全てが麻痺している。これでは社会が成り立たない!」


議論は平行線を辿り、両者の溝は深まるばかり。


そんな中、一部のオタクたちが過激化し始めた。彼らは密かに集会を開き、非オタクへの「反撃」を計画し始めていた。


「このままじゃ、俺たちの夢の世界が奪われる...」

「そうだ! やつらにもアニメの素晴らしさを分からせてやろう!」

「街中にアニメソングを大音量で流そう!」

「いっそ、やつらの家までアニメ化しちゃえ!」


一方、非オタク側も強硬な姿勢を見せ始めていた。


「秋葉原からオタクを追放しよう!」

「アニメグッズの販売を禁止にすべきだ!」

「彼らを現実世界に強制的に戻す方法はないのか?」


メディアは、この対立をさらに煽り立てるような報道を繰り返した。


「オタク文化は社会の癌か? 識者が緊急提言」

「アニメ世界がもたらす経済損失、試算で年間1兆円超」

「秋葉原の異常事態、ついに国会で議論へ」


SNS上では、#OtakuVSNormal、#AnimeWorldDestroyer、#SaveAkihabaraといったハッシュタグが飛び交い、炎上は収まる気配を見せなかった。


かぐやは事態の深刻さに絶望し、自責の念に駆られていた。彼女は「現実干渉マシン」を抱きしめ、涙を流しながら呟いた。


「私が...私のせいで...みんなが苦しんでる。こんなつもりじゃなかったのに...」


そんなかぐやを見かね、秋葉、神崎、ミライト、二次元介らが集まってきた。


秋葉が優しく語りかける。「かぐや、確かに状況は最悪だ。でも、お前が良かれと思ってしたことは間違いじゃない」


神崎も続けた。「そうです。問題の本質は、夢と現実のバランスです。そのバランスを取り戻す方法を、みんなで考えましょう」


ミライトは元気よく言った。「そうだね! みんなで力を合わせれば、きっといい解決策が見つかるはずさ!」


二次元介も静かに頷いた。「物語の中でも、対立から和解に至るまでには試行錯誤が必要です。私たちも、そのプロセスを大切にしましょう」


彼らの言葉に、かぐやは少しずつ希望を取り戻していった。

「みんな...ありがとう。そうだね、まだ諦めるわけにはいかないよね」


しかし、その矢先、街から大きな爆発音が聞こえてきた。


窓の外を見ると、どこからか打ち上げられた花火が、アニメのような派手な色彩で夜空を彩っている。その花火を合図に、オタクと非オタクの衝突が一気に激化したようだ。


秋葉が顔をしかめた。「まずい、このままでは取り返しのつかないことになる...」


かぐやは決意の表情で立ち上がった。「行きましょう、みんな。私たちにできることがあるはず」


彼らが街に飛び出そうとしたその時、突如として辺りが真っ暗になった。大規模な停電が発生したようだ。


闇の中、かぐやの持つ「現実干渉マシン」だけが、かすかな光を放っていた。

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