続・世界一短い小説

蟹場たらば

And a little used ××××××× ××××××××.

 子供の成長は嬉しいけれど、同時に不安でもある。体が大きくなれば、服や靴を買い替えなくてはいけないからだ。


 少しでも節約できないかと、私は今日もフリマアプリをチェックする。


 すると、ある商品が目についた。


〝ベビーシューズ(未使用)〟


 つまり、履かせる前に子供を亡くしてしまったということだろう。


 まだ体ができあがっていない赤ちゃんは、ちょっとした事故や病気でも命に関わる。それどころか、乳幼児突然死症候群SIDSのように、親がどれだけ気をつけても防げない死さえある。私も以前は、目が覚めるたびに子供が生きていることを確認して、胸をなで下ろしたものだった。


 ただ気になることもあった。確か、〝For sale: baby shoes, never worn.(売ります。赤ん坊の靴。未使用。)〟だっただろうか。世界一短いとされる小説が、この出品タイトルとそっくりの内容だったはずである。


 ひょっとすると、これはいわゆるかもしれない。要するに、タイトルを見た人を驚かせるためのイタズラということだ。


 世界一短い小説の作者はアーネスト・ヘミングウェイだ、という説も聞いたことがある。作家仲間と6つの単語だけで小説を書けるか賭けをした時の作品だ、と。だから、『誰がために鐘は鳴る』や『老人と海』など、彼の著作を一緒に出品していたら釣りで確定だろう。


 しかし、やはり最初の考えが正しかったようだ。


 ベビー服、おむつ、おもちゃ…… 調べてみたら、出品者は他にも未使用のベビー用品を出品していたのだ。


 ただ同時に、こんなものを出品していることも分かった。


〝ヒ素(少量使用済み)〟






(了)

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