第24話

 椎名先生は、警察に逮捕され、オニキス・ペンシルは学園に戻ってきた。

 そして、放送祭当日を迎えた円卓学園は、予定通り、大変な賑わいを見せていた。

 ニチカとハート、そしてダイヤは、学園内を歩き回って、放送祭の様々な催し物を楽しんだ。

「ニチカ様大変です! 昨日のライブ配信が、放送祭の最優秀映像賞に選ばれましたわ!」

「ええ!? どういうこと!?」

「放送委員会が、昨日のライブ配信を編集した、切り抜き動画をアップロードしたみたいなんです! それが一夜で1000万回再生されて、ぶっちぎりの高評価を得ているんですわ!」

「もう! ハートとダイヤちゃんが悪ノリするからだよ!」

 ちなみに勝手に配信ライブを行ったことについて、ハートとダイヤは、ニチカからたっぷりお説教を受けていた。

「悪ノリではございません! ニチカ様の輝かしい活躍を、インターネットに公開したいという考えが、珍しく一致したため協力したのです! それに半永久的にニチカ様の活躍をスマホで見れるなんて、わたくしは感無量ですわ! 早速動画を出力して、岩上院印のヘッドホンで無限ループしなくては!」

 そう言って、ダイヤは部屋の外へと出ていった。そんないつも通りの姿に、ニチカは呆れつつもなんだか微笑ましさを感じるのであった。

 ニチカが今いる場所は、色々なことがあった美術館。その一室のアトリエである。

「あっ! ニチカちゃん! ここにあったよ!」

 隣の資料室から顔を出した、元気そうなリュウセイが、ニチカを手招きする。

 そこには、リュウセイの直筆の漫画原稿があった。

「うわあ! 本物ですね! 先輩の直筆原稿を見せてもらえるなんて、感激です!」

 ニチカは、記憶を取り戻したリュウセイからの誘いがあり、早速彼のアトリエを訪れていたのだ。

「二度も助けてくれたんだし、これくらいお安い御用だよ。それに、もう一つお礼があるんだ!」

 リュウセイがスケッチブックを取り出し、中身のイラストをニチカに見せる。そこには――――円卓クラブと書かれた、かっこいいデザインロゴが描かれていた。

「円卓クラブのデザインを作ってみたんだよ! ぜひ使ってほしいな!」

「……これ、夢じゃ無いですよね!? 本当にいいんですか!?」

 人気漫画家のデザインなんて、お金で払えないほど貴重なものである。それに自分が大好きな漫画家が、自分のために作ってくれたものである。ニチカが感動しないわけがなかった。

「あと、ウェブサイトなんかに使いたかったら、俺が設定してやるよ」

 すると、リュウセイの後ろにいた、ノゾムが力強く頷いた。

「今回、色々と助けてもらったからな。円卓クラブの助けになるようなことは、なんでもやるぜ」

「僕もだよ! もし何か困った事があったら、いつでも力になるからね!」

「お二人とも……ありがとうございます!」

 事件を経て、ニチカの交友関係は広まり、円卓クラブへの協力の輪も広がったのだった。

「おーいニチカ、放送委員会から、そろそろ来てくれって連絡だよ」

 すると廊下から、ハートが首を出してニチカを呼び込んだ。

「せっかく予定を組んだのに、これじゃ全部回れそうにないね」

 ハートは今回の放送祭にあたって、スケジュール表を作成していた。今回の騒動でさらに有名人になってしまったニチカが、存分に放送祭を楽しむために、ハートがサポートしてくれたのだ。

「……でも、こういうハプニングは、ちょっといいかも」

「ニチカがそう言うなら、僕はスケジュールを、すぐに変えるだけだよ」

 ハートは穏やかな笑みを浮かべた。相変わらずハートは、ニチカ第一主義なのであった。

 ピロン。

 その時、ニチカのスマホに通知が入る。

 それはニチカの両親からのものであった。

『――――動画見たよ。学園生活満喫してるようだね』

 あれを見て満喫と表現することに、ニチカは相変わらず変な感覚を持っているなと呆れた。

『――――ニチカはニチカらしく学園生活を楽しんでいるみたいで、私たちも嬉しいよ。そのまま頑張ってね。もちろん、学園生活がつまらなくなったら、いつでも戻ってきていいよ』

 ニチカは、すぐにスマホをポケットにしまった。

「……戻るつもりなんてないですよ。だって、学園生活が楽しすぎるんですからっ!」


「レディースアンドジェントルメン! 円卓学園の女王――――旭ニチカが登場だ! 彼女に、今日一番の拍手をお願いするぜ!」

 放送祭の表彰式は、大講堂で行われ、その壇上にニチカは招かれた。

「これをどうぞ! 女王!」

 ニチカは、記念品である王冠を、放送委員長に被せてもらった。

 数週間前に、王冠を学園長に被せてもらった時の表情と、打って変わって、ニチカは笑顔だった。

「……こうして無事に放送祭を迎えられて、とっても嬉しいです!」

 こうして、放送祭はニチカへの歓声によって、大成功に終わったのだった。


 その様子を、学園長室から、星原学園長が見つめていた。

「……よくやった。旭ニチカ」

 その目元は、いつもより緩んでいるような気がした。

「円卓クラブは大変だろう。だが、大変だからこそ、誰よりも学園生活を楽しむこともできるんだ。これからも、学園を守り、学園生活を楽しんでくれ」

 学園長は、優しい口調でそう言ったのだった。


 さて、これで、円卓学園の女王旭ニチカと、円卓クラブの伝説は、ひとまずおしまいである。

 だが、再び円卓学園に、危機が訪れる時、君たちは、新たな伝説を目撃することになるだろう。

 なぜなら、旭ニチカと円卓クラブの日常はまだまだ続いていくからである。

 また、会おう。

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旭ニチカ女王と円卓学園の伝説! ツノガネえぬび @GoldenHorn_nb3

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