第4話、生存者


「兄ちゃん、さっきからぶつぶつ独り言言ってどないしたん?

まさか、アレとやり合う気なんか?」


振り向くと、どこか胡散臭い男が立っていた。


貼り付けたような笑顔に、紫色の血がこびりついた白シャツ。

少なくとも、ゴブリンとの戦闘経験はありそうだ。


デウすけの索敵をかいくぐってここまできたということは、

隠密系統の《スキル》保持者だと考えるのが妥当だろうな。


などと考えていると、男がしゃべり始めた。


「そう警戒せんといて、自分は八雲 大って言います。

年は今年で27、出身は関西や。兄ちゃんは?」


話が通じる人でとりあえずは一安心だ。


「俺は和泉 凛太郎って言います。年齢は25です。八雲さんは何をしにここに?」


「大でええよ。すぐ近くの高校に生存者コミュニティがあるんやけど、俺はそこで他の生存者の捜索と勧誘をしてます。道中で兄ちゃんを見つけて付いてきたわけや。」


もうそんなコミュニティが出来ているとは。探す手間が省けたな。


他の人に見られている以上、派手な戦闘はあまり避けたい、

何より今のうちに人脈を増やしておいて損はない。


俺は先ほどの反省も踏まえ、心の中でデウすけに問いかける。



『監視カメラへのアクセスは後回しにしてもいいか?』


『はい!私も生存者コミュニティに参加することには賛成です!』



デウすけの了解も得られたしゴブリンキングとの戦闘はお預けにしておこう。

ぶっちゃけあれが簡単に倒されるとことか想像できないし...


「では大さん、その高校に俺も連れて行ってもってらっていいですか?」


「ええよ、大歓迎や! ほなついてきてや~」


そんなこんなで、俺と大さんは歩き始めた。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




「俺もや。揺れがあって気絶して、意味わからんアナウンスが流れて...ほんま何が起きてんやろなぁ〜」


「あっスキルは内緒やで、 その方が何かと好都合やねん」



高校までの道中で大さんと世間話をしているとふと思い出したことがあった。



『デウすけ、前言ってた≪鑑定≫ってどうなってるか?』


『まだ完全ではありませんが、一応使えますよ。すぐに使いますか?』


『あぁ頼む。』


Now loading...と言わんばかりの沈黙が10秒ほど続いた。


『準備完了です!目標物を見ながら、《鑑定》と念じてください!

あと...まだ未完成ですので、その辺はご了承ください!』


『サンキュー』


俺はデウすけに軽く礼を言うと、さっそく大さんに向けて鑑定を使ってみる。



《鑑定》‼



と念じると目の前に大さんのステータスらしきものが現れた。


どれどれ...


名前:八雲大

種族:人間 Lv3位かな?

加護:なにこれ?

HP:100 MP:100

筋力:16

体力:20

敏捷:15

器用:20

精神:20

装備:なし 

スキル:隠密系と予想


いや...すごいんだろうけど突っ込みどころが多すぎるな。


なんだよLv3位かな?って、もっと自信持てよ!

まぁ加護とかに関しては俺もなにこれ?だけど...


『データが...まだ足りないだけです!』


デウすけが少し気まずそうに言った。


まぁ完成を気長に待つとしよう... なんて考えていると、


「いま、なんかした?なんかすごい視線感じたんよさっき...まぁええわ。

細かいこと気にしとったら禿げるさかいな~」


と大さんが唐突にいった。


「きっ、気のせいかと!」


俺は内心冷汗ダラダラになりながらなんとかごまかした。


あの人勘良すぎだろ...

よく考えたら、さっきからモンスターと全く遭遇しないようなルートを

歩かされている。


いったいどんな《スキル》なんだろう...


あの人だけは敵に回さないようにしようと決心する凛太朗なのであった。





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




20分ほど歩いていると目的の学校に到着した。


「でっか!」


5mはある校門には椅子や机などで作られたバリケード。


「せやろ、どうやらここはお金持ちの子らが通う学校やったらしいわ」


有毒な産業排気ガスが大地に滞留しだして以来、

人間の生活領域は危険な下層と安全な上層に分けられた。


安全性に比例して地価も上がっているので、上層に住めるの一部の富裕層だけ。


その中でも最も地価が高いとされている霞が関ブロックにある高校なのだから、その設備は相当なものだろう。


などと考えながら待っていると大さんが大声で言った。


廉くーん!愉快な愉快な大お兄さんのお帰りやで~!!」


すると校門のすぐ横の壁に梯子が垂れ下がった。


「大さーん!お帰りー!」


と壁の中から元気な声がした。


梯子を使って中に入ると、ぱっと見でも10人以上の高校生が、

椅子や机を運んでバリケードを構築しているのが見える。


「大さん、その人は新入りですか?」


梯子を垂らしてくれた男の子が興味深そうに近寄ってきた。


「おぉ、紹介するで。その辺でおうた凛太朗君や。

凛太朗君、ここの生徒の廉君や。」


「尾崎廉です!凛太朗さん、よろしくお願いします!」


好青年の元気な挨拶に心が現れる。


これだけの会話で大さんがどれだけ慕われているかがよくわかる。


胡散臭いとか思ってごめんね... と心の中で謝罪をするのであった。



自己紹介に花を咲かせていると、遠くの方から女の子の声が聞こえた。


「大さん、帰っていたのですね。」


声の方向を見ると、いかにも生徒会長‼って感じの女の子が歩いてきた。


「大さん、そちらのお方は?」


おしとやかな口調に丁寧な動作が、この学校の気品を物語っている。


廉君は... 元気なのはいいことだ!


「ただいま円華ちゃん、新入りの凛太朗君や。

お待ちかねの戦える新入りさんやで~」


大の言葉に円華ちゃんの表情がパッと明るくなる。


「そうですか!私は、西宮円華(まどか)と言います!

凛太朗さん!よろしくお願いします!」


嬉しさのあまりか、俺と握手したまま手をぶんぶんさせた。


かわいいなぁ... いや、けっしてロリコンとかではない!誓ってな!


ひとしきり喜んだからなのか、円華ちゃんの表情はとても真剣なものに変わった。



「では凛太朗さんにお願いがあります。私たちと一緒にあのつよつよゴブリンを倒していただけませんか?」




つよつよ........?


俺はあまりの不意打ちに、必死に笑いをこらえるのであった。






――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


誤字脱字や文法のミス、追加してほしい説明、感想などなどコメントお願いします!

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余談

一応100話ほどで完結ないし、話に一区切りはつけたいと考えています。

更新頻度に関しては、今後もできる限り毎日投稿していく予定です。

投稿時間がまちまちなのはご容赦ください。




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