第28話 勝利の代償と新たな未来への一歩

警察が到着し、英二は無言のまま連行されていった。彼の表情にはもはやあの不敵な笑みはなく、失意と敗北の色が濃く漂っていた。彼の権力と陰謀の終焉を見届けた奈緒美と玲奈は、ようやく重圧から解放された感覚に包まれたが、それと同時に心に残る傷跡が痛み出していた。


ホテルのスイートルームは、かつての英二の栄華を象徴するかのような豪奢な空間だったが、今はその輝きが色褪せて見えた。奈緒美は疲れた様子で椅子に腰を下ろし、しばらくの間静かに窓の外を見つめていた。玲奈もまた、その場に立ち尽くし、自分が成し遂げたことの大きさを改めて感じていた。


「奈緒美さん…これで、本当に終わったんですね。」玲奈が静かに呟いた。彼女の声には、長い戦いの終わりを迎えた安堵と共に、過去の喪失に対する深い悲しみが滲んでいた。


奈緒美は玲奈に目を向け、微笑みながら頷いた。「そうね、玲奈。全てが終わった。あなたの母親が命をかけて守ったもの、私たちの家族が残した意志、すべてが報われたの。」


玲奈は、母紗絵子の手紙を取り出し、再びその文字を追った。手紙の中の言葉が、彼女の心に深く響き続けていた。「お母さん…私、やっとわかったよ。あなたが私に伝えたかったこと。」


奈緒美は玲奈にそっと手を差し伸べ、「これからはあなた自身の人生を生きる時よ、玲奈。過去はもう終わった。今度はあなたの未来を見つめて進んでいくの。」


玲奈は奈緒美の手を取り、目に涙を浮かべながらも、力強く頷いた。「そうですね…お母さんの遺志を受け継いで、これからは私自身の力で歩んでいきます。」


部屋の外では、高橋剛が待機しており、彼もまた今回の事件の結末に胸を撫で下ろしていた。彼は奈緒美に向かって「全ての証拠を警察に引き渡しました。これで英二の罪は完全に明らかになるでしょう。」と報告した。


「ありがとう、高橋さん。」奈緒美は感謝の意を込めて答えた。「あなたの協力がなければ、ここまで来ることはできなかった。これでやっと、私たちも前に進めるわ。」


「今回の事件で失ったものも多かったですが、手に入れたものもあります。」高橋剛はそう言いながら、玲奈に目を向けた。「あなたが生き延びたこと、それが何よりの証です。」


玲奈はその言葉を胸に刻み、母紗絵子の遺志を抱きしめるように手紙を握りしめた。「お母さんが私を守ってくれたように、私もこれから自分を守っていきます。」


奈緒美は立ち上がり、玲奈を抱きしめた。「私たちはもう一人じゃない。これからもお互いに支え合って、前に進んでいきましょう。」


ホテルを後にした三人は、静かな夜風に吹かれながら東京の街を歩いていた。街の喧騒とは対照的に、彼女たちの心には静かな安らぎが訪れていた。過去の痛みを乗り越えた先には、新しい未来が待っていることを感じながら、彼女たちは歩みを進めた。


「奈緒美さん…」玲奈が歩きながら話しかけた。「これから、私たちはどうするんですか?」


奈緒美は空を見上げ、静かに答えた。「まずは、全ての整理をしましょう。そして、これから何をするべきか、一緒に考えましょう。あなたの未来には無限の可能性が広がっているの。」


玲奈は微笑み、奈緒美の言葉を受け入れた。「そうですね。お母さんが守ってくれたこの命を、大切に生きていきます。そして、私もいつか誰かを守れる強い人間になりたいです。」


「あなたならきっとできるわ、玲奈。」奈緒美は力強く答えた。「私たちが一緒にいる限り、どんな困難にも立ち向かえる。」


三人は再び歩き出し、夜明け前の街を抜けていった。新しい一日が始まろうとしているその時、彼女たちは自分たちの未来に向けて、確かな一歩を踏み出していた。

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【完結】デジタルフォレンジックと法医学の融合が生む新たな謎解き!未解決事件に挑むNDSラボとUDIラボが、闇に葬られた真実を暴き出す。あなたの常識を覆す、究極のミステリーがここに! 湊 マチ @minatomachi

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