夏といったらよぉ! 肝試しだよな!! オメぇら!!

犬犬尾(わんわんお)

もう二度と、行きたくない……

※気持ち悪くなるかもしれないので、読む際にはご注意を。


 某国某県某市某所。


「おめぇーら、俺も免許とったしよ! せっかくだから肝試しやんね!?」


「お、いいね!」「なんかおめぇの運転、下手そうだな」


「うるせぇ! 俺の運転する車に乗ったらおめぇ、美味過ぎて目ん玉飛び出ちまうからよ!」


 俺——リンドウ・ユウギの友達、シバ・タクマが楽しそうに言うと、同じく友達のイガラシ・ジンとテンドウ・カズマがのりよく楽しそうに返す。


「どこで肝試しすんの? てか、19になって普通の肝試しは、何か面白くなくね?」


「任せとけよ! おめぇらがそう言うと思って俺よぉ、面白くなる方法もう考えてっからよ! 大船に乗ったつもりでいてくれや!!」 


 俺達四人は高校の時によく遊んでいた、馬鹿なことをする四人衆だった。

 高校を卒業して、違う大学に通うことになったが、今でもよく一緒に遊ぶ仲である。


 大学生の夏休みは長い。

 バイトもするが、週に三日程度。

 故に暇だった。


 そこに、タクマから『俺、免許取ったから、久しぶりに遊ばね?』というメールが届いた。

 俺はすぐにその誘いに食らいついた。


 そうして、大学生になってから最初の夏休みに、馬鹿四人衆の残りの二人も呼んで、肝試しに行くことになったのだ。


 某県某市某廃病院、夜。


 タクマが仕掛けに行ってから一時間程、俺達三人は違う車の中で待機していた。


「いよいよだな!」


「おう。あいつ、俺達を脅かす為に、なんかマネキンだとか、ノコギリだとか、衣装だとか用意してるらしくってよ、めっちゃ気合はいってんぜ!」


「脅すっての先に言っちまったら、意味なくね!? というか、逆に脅してやらね!?」


 俺達三人は「かかか!」と呵呵しながら廃病院に入った。

 中は俺達馬鹿四人衆が勝手に入っても、何のお咎めがないくらい無法で、かなり汚く荒れていた。


 例えば、正面玄関から奥に見える壁が、スプレーで『RAPE』やら『卍』と落書きされるくらいの荒れ具合だった。


「えっと、まず右手の廊下を通って、奥にある階段から三階まで上がる、だってよ……」


「その間に、まず何かで驚かすって訳だな?」


「やっぱ、分かってっと怖くねぇよ!」


 俺がタクマから聞いた順路を言うと、ジンとカズマは面白半分で言う。

 俺達三人は右の廊下を通り、廃病院の中を見回しながら階段を上がった。


「そろそろ来るんじゃねぇの?」「出てきたら、寸止め右ストレートを、お見舞いしてやろうぜ!」


 ジンとカズマはそう言って笑いながら、タクマが出てくるのを待つ。

 が、


「あいつ、出て来ねぇな……」


 二階から三階に上がっても、タクマが出て来る気配はなかった。

 多少の脅かし要素、赤い絵の具で塗りたくられたマネキンや、切断されたおもちゃの腕などはあったが、どれも部屋の中に置かれ、準備中のように見えた。


「「「……」」」


 明らかにおかしい。

 まさか、しょんべんでも行っている時に来てしまったのだろうか。


 俺達三人は三階の廊下を歩き——ッ


「ギャァァァァァッフェェ!!!?!?!?」


「「「ッ!?!?!?」」」


 無言で一番前を歩いていた俺の右脚に、なにか細い物が引っ掛かると、左手側にある部屋から爆音量の叫び声が鳴り響いた。


 タクマの叫び声だ。


「マジビビったぁ……」「びっくり系は卑怯だッちば」


「肝試しは大体びっくり系だろ……」


 ぼやくジンとカズマに、俺は深呼吸をしながらツッコミを入れる。とその時、


「「「ん……?」」」


 階下から走る音が聞こえてきた。


「なんだよ」「タクマ、ちゃんといやがるじゃん」


「マジでしょんべんでも行ってたのか? あいつ……」


 俺がタクマを馬鹿にすると、ジンとカズマは「ダサすぎだろ!!」と腹を抱えて大笑い。

 俺を先頭に、三人は左奥の階段から一回まで駆け下りた。


「どこよあいつ?」「慌てて、きっとどっかに隠れたんだぜ」


 ジンとカズマが喋ると、左手側にあった扉の奥から、何やら物音がなる。


「間抜けすぎんだろ!」「おいタクマ! 何しょんべんしてやがんだよ!」


 ジンがガラスが割れ散った——中が丸見えになった扉を開け、カズマが遅れて中に入る。

 俺も中に入った。同時、


「ニャー!」


「「うぅおっと!?」」


 中にあった木造りの棺桶が、急に倒れた。

 棺桶の上に乗っていた猫が、俺達三人の登場に逃げ出し、その勢いで倒れたのだ。


「全くよ……猫にぶっ倒されるとか、お前も運が悪いな……」


「仕方ねぇから、開けてやんよタクマ……」


 ジンとカズマが倒れた棺桶を起こそうと、屈んで底に手を挟む。

 タクマが入っている所為か、どうにも棺桶は重そうだ。二人が棺桶を持ち上げ、裏返すまでに十数秒の時間がかかった。


「にしても……」


 どうして棺桶の中に入っているのに、タクマは倒れた時に悲鳴を上げなかったのか。

 まさか、怖がらせるために声を押し殺したのだろうか。

 そうだったら、なんだか間抜けで面白い。

 どうにもタクマらしい。


「なんか血の匂いが……」


 唐突、裏にある窓から風が吹き、血の匂いが俺の鼻の中に入った。


「開けるぜタクマ!!」


 カズマが勢いよく蓋を開けた。すると、


「は……」


 血がカズマの顔にかかった。


「「「————ッ!?!?!?!?!?」」」


 中にはまだ生温かいタクマと、見知らぬ女性の死体が遺棄されていた。


「タク、ま……」


 俺達は走って逃げだし、警察に通報した。

 もう二度と、肝試しにはいきたくない。

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夏といったらよぉ! 肝試しだよな!! オメぇら!! 犬犬尾(わんわんお) @wanwano5690

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