魚豊の漫画「ひゃくえむ。」に出てくる、小学生、小宮くん。
情熱だけで突っ走る出鱈目で我流な走り方を経て、きれいなフォームを学ぶも、
「最適解のフォームなのに その走り方には 未来が見えない」
とか云われてしまう。
「これ、俺やん」
と誰もが想ったのではないだろうか。
しかしスマートに洗練された能力の高い走り方をしている人を見て「速い」と感心するのとは違い、「うおお、俺も走りたい!」と腹から湧き上がってくる風と熱は、小宮くんこそ、もっていた。
この出鱈目なフォームの小宮くんは、我々であり、デビュー直後の「魚豊さん」でもあっただろう。
画力の点ではいまどきの漫画家志望の中学生よりも低かったかもしれない。しかし熱量で走り切る「ひゃくえむ。」は大勢の読者をぐいぐいぐいぐいと引っ張り、「売れねえだろ」と出版社側に見送られていた単行本化まで果たしてのけた。
がつんごつんと、まるでやりすぎな「嘆きの壁」のように壁に頭をぶつけていく愚かな上にも愚かすぎる書き手は、きっと愚かなのだろう。
もっとスマートで、洗練された、合理的な、賢い方法があるのだろう。
そのスマートさんたちは、全員が彼らの目指す「成功」をおさめているのだろうか?
「こうしろ、ああしろ」
指示されたとおりの合理的なノウハウを踏んで、その後、彼らは毎回華麗なシュートを決めて、壁の向こうで優雅な毎日を送っているのだろうか?
わたしは知らない。
そんな賢い書き手には興味がないから。
地を這う惨めな蟲。
愚かだけれど、「惨めな負け犬の遠吠えをしようぜ!」と乏しい武器を手に、今日もどたんばたんと吼えている書き手たちのことが、わたしは愛しい。
カクヨムコンテスト11
WEB小説界最上級のお祭りに挑む書き手様方への、激励と対策をご指南下さる創作論です。
全編通してヒーロー物の熱いお兄様のような語り口ですが、今作には二つの特徴があります。
一つ目は「語彙が豊富で、選択するセンスが素晴らしい」
文章で笑って頂くのって、言葉の力が全てなので選択する言葉が残念だと、ドッチラケになってしまう(汗)
でも、作者様はとにかく語彙が豊富で言葉を的確に選ぶセンスが素晴らしいのです。
だから面白い!
とにかく笑えます。全編パワーダウン無く笑わせて頂けるセンスの良さは感服します(汗)
二つ目は「本質をキチッと捉えている」
今作、創作論として非常に勉強になりました。
精神的にも技術的にも非常に的を得てるのです。
熱いお兄様口調で錯覚しそうですが、作者様のインテリジェンスが漂ってきます。
以上の点で、カクコン11に挑もうとされる、Web小説の世界が新しい方はぜひ御一読頂ければと。
本当に勉強になりますので✨