第6話 終わる関係、新たな関係
学校で緊急全校集会が開かれてる頃
同時刻 花田家にて
「・・・申し訳ありません・・・麦茶しかだせなくて・・・」
いま家には持田病院の医院長先生と同じくおれの担当してくれた持田先生が尋ねてきてくれてる
するといきなり二人は俺に向かって深々と頭を下げてきた
「この度は誠に申し訳ありません!!」「この様な事になってなんとお詫びすれば良いか!」
混乱する俺に、二人は学校で事情を聴いて慌てて俺の事を心配して訪ねてきてくれた事を話してくれた、ある程度学校での事情は解っているらしい
「人として尊敬される事をした君に対する扱いがあまりに酷くて・・・君に本当に感謝してる娘にはとても説明出来ないよ・・」
「今学校では校長先生が君の名誉の回復をするため奔走していると思う・・きっと君に対する誹謗や中傷は無くなると思うが・・・」
言いにくそうにしてる持田さんに変わって続きを話す
「思うが・・・腫物扱い・・・って事ですよね・・」
「そうだね・・サッカー部にも処罰が下るだろうし・・・その部員も君に対し不平や不満を持つ連中が出てくるかもしれない」
「そこで、改めて君に聞きたい・・・君はどうしたい?」
俺は・・・・
「俺は今の学校には行きたくありません・・・そしてこの家から出て行きたいと思ってます」
俺の話しを黙って聞いてくれる二人は静かに頷き
「分かった・・・君の望む様に計らおう・・」「はじめ君、実は赤羽学園のサッカー部の監督が君の事を大変気に入っててね」
「赤羽?確かうちの学校と練習試合した所ですか?」
「そう、その時に君の事を見て気に入ったらしいよ」
「そうですか・・・すいません覚えが無くて・」
「で、どうだろう、勿論我々もお節介ながら君のご両親の説得に力添えさせていただく、勿論高校卒業まで1年半の間で住む場所も用意させてもらう」
目の前で有難い申し入れしてくれる二人に対し全く【身に覚えが無いお礼】だが・・・
「どうか・・・宜しく・・・お願い致します・」
二人は優しく微笑むと頭を下げ涙する俺の肩を優しく叩いてくれた
同日夜、花田家のリビングにて
「はじめ・・・学校でそんな事に・・・すまない・・気づいてやれなくて・・父親失格だな・・・」
「私も・・うっうっ・・あなたは立派な事をしたのに・・辛かったでしょうに・・私の責任だわ・・ゴメンなさい、はじめ・・」
両親は俺と持田さんからの話しを聞いて驚きと悲痛な表情をうかべ俺に謝罪をする
「父さん義母さん・・二人に心配かけてゴメンなさい・・でも俺、誰も知らない所で新しい生活を一からやり直したいんだ・・・勝手な我儘でゴメン・・」
暫くお互いの意見のやりとりの後
「分かった・・・お前の好きにしなさい・・持田さん・・この度は息子の為にご尽力いただき有難うございます」
「いえ、我々もはじめ君の為に何かしたいと思っていたのに、娘を助けてくれた時の後遺症で結果このような事になってしまって・・我々の良心の為にもお力を尽くさせて下さい」
「そうです、孫を助けて頂いたのに恩人が不当な扱いをされて黙って見過ごしては死んだ女房に顔向けできません」
「ただ、はじめの住む場所の生活費は私共で持たせて頂きます、そのくらいは親に恰好を付けさせて下さい」
「確かに・・分かりました・・・ただ私どもの持ち物件ですので費用は殆どかからないと思います、食費光熱費などの生活費の支援をいただければ」
「なにからなにまで、申訳ございません・・・」
「いえ、我々に出来る支援であれば何でもさせて頂きます、早速ですが来週にも転校出来るように青高と赤学に話をつけておきます」
「「「宜しくお願いします」」」
そんな俺達の様子を別のソファーで何も言わずに俯いて聞いていた葉子
持田さんの見送りをして自分の部屋に戻る所で呼び止められる
「ねぇ義兄ちゃん・・・なんであの時、記憶を無くしてるって言ってくれなかったの・・・そしたらこんな・・・」
「葉子・・・おれは【分からない】って伝えたよ・・・」
振り帰りこちらを見る表情は涙を滲ませていた
「でも!はっきり記憶が無いって「葉子!!お前には分からないよ・・そもそも記憶を無くしてるかどうかも分からないのに勝手に記憶喪失なんていえるか?」・・・そ、それは」
【ドン!】おれは壁を叩き今まで思ってた鬱憤を口にだす
「いいかよく聞け、記憶を無くしてます、とか自分で言えるのはテレビや漫画の中だけの話しだ、本当に記憶を無くしてる奴は記憶を無くした事も分からないからその自覚は無いんだよ!!」
俺の怒声に何も言えない葉子に告げる
「もういい・・・お前等との関係をすべて忘れておれは新しい環境で新しい関係を築く為に精一杯頑張るから・・・」
「そ、そんな・・い、いや・・」
「だけど、お前らの気持ちを踏みにじったのも、また事実だ・・・本当に済まなかった・・・きっとお前なら、もっといい人見つかるよ・・・」
それからの数日は忙しかった
俺はもう青高には行きたくないのでそちらの手続きは持田さんと両親に任せた
終始引き止めがあったが、こればかりは俺の意思次第なので
「ですから、息子がそう決めたんです今更なにを息子に謝罪するんですか?」
「そこを何とか!!我々の謝意だけでも伝えさせて頂けませんか!」
「一応・・息子には伝えてみますが・・・」「是非に!!」
当然、俺は断った
スマホにも紫苑や翔、大樹から何件も着信やメールが来ていたが俺は全てブロックしておいた
そして俺は、今赤羽学園の応接に来ている
「やぁ!ようこそ赤羽学園に!花田 はじめ君!!」見た所人の良さそうな校長先生と隣には若そうな女性の教員が立っていた
「私は平川と言います、赤羽学園の校長をしてます、そしてこちらは・・・」
「私も平川です、平川 雀 と言います」「あのもしかして・・・」「はい、こちらの平川先生は私の娘になります」
どことなく雰囲気は似てるのかな・・・「来週から宜しくお願い致します」二人に頭を下げると
「君は私のクラスで受け持つ・・ああそれと一人どうしても君に会いたいそうで連れて来てもいいかな?」
「???はい?僕に会いたい人ですか・・・」心当たりがない
「いいぞ入れ!」「失礼します!」そういと、涼やかな雰囲気にも落ち着いた知性を感じる鋭い目つきに明らかに運動して鍛えてる身のこなしの男子生徒が俺の方へ歩いてきたので俺も立ち上がり頭を下げる
「来週からお世話になります、花田 はじめです!」「ぷっ・・アハハ・・いや失礼君は記憶に障害があるんだったね・・・本当に申し訳ない笑った事を謝罪しよう」
そういうと急に頭をさげて謝罪する「い、いえ・・・」
「俺は赤羽学園のサッカー部キャプテンの西野 陣と言う、君と同じ2年だ」
「初めまして・・ではないのだが・・・実は君とは練習試合で対戦しててね・・・その時の君のプレーに魅了された一人さ」
全く覚えてないが、褒められてるのは判る
「単刀直入に言おう、是非サッカー部で君と一緒にプレイしたい!」おれは青高での最後の酷いサッカー部の有様を思い出した
「そ、その・・俺、前の高校のサッカー部での出来事で・・」「ああ聞いてる、練習試合の時は本当にいいチームだと素直に尊敬したが本当に残念だよ」
「君の心配も判る、是非一度うちのサッカー部を見て帰ってくれ!」
絶対に後悔させないからと俺と固い握手をして西野キャプテンは校長室を後にした、それから転入手続きとか制服の事、校則の事等の説明を受ける
「我々は君の様な人の命の尊さを理解し実践できる生徒を心から歓迎する!」
それから俺は平川先生に連れられ、校舎を案内してもらった
「ここが来週からお前の入るクラスで、私の受け持つクラスだ」2-A、中では英語の授業だろうか英会話の内容が聞こえてくる
「先生宜しくお願いします」「ああ、転校の挨拶の言葉考えておけよ」
俺は正面玄関の前で先生と別れると、ふとグラウンドが目に入る(サッカー部か・・・)
おれは先の西野君との約束もあり自然とグラウンドに足を向ける
俺の目に映る練習風景は圧巻であった、部員数も青高の倍近くレギュラーと準レギュラーの選抜戦は見た目にもレベルが高い、俺らでも準レギュラー組に入れるか分からないレベルだ
胸を熱い物が駆け巡る・・・この高揚感・・・青高での最後の幻滅したサッカーとは雲泥の差だ・・・
「おおお、3皇帝の皇帝が見に来てるぞ!!10分休憩だ!!」
40人近い部員が一斉に俺の方を向くと西野君が俺の方へ駆け寄る
「来てくれたか!どうだい?うちの練習は」「圧巻です、胸が熱くなります!」「アハハ大げさな、でも花田君の気持ちに火をつけられたなら良かったのかな?」
「ところで、君の目からみてうちのチームの弱点はどこか判るか?」
「・・・・弱点ですか・・そうですね、敢えていうならレギュラー組のライトウイングのオフェンスの入りが少し遅れてる気がします」
「おおお、なるほど一目で見抜くか・・・じつはレギュラーだった奴が足の骨折で急遽、準レギュラーを入れてるんだ、他には?」
「準レギュラー組はすこしディフェンスの戻りが悪い気がします、状況判断で自陣に戻るのをためらってパスカットに執着してる様に思えました」
「・・・・なるほど・・流石だな・・・皇帝の異名はあながち過大評価では無いらしい・・・」
「こうなると、是が非でも君にはサッカー部に入って貰わないとな!アハハハ、じゃ練習再開するぞ!!皇帝に情けない所を見せるな!!」
それから暫くベンチに座りチームの練習を見せてもらった
ここでなら、このチームメイトとなら全て忘れて新しい関係が始められるかもしれない・・
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