第4話 全て忘れてしまえたら・・・
翌朝・・昨日とは違い俺の事を待ってる人は誰もいない・・
両親もいつも通りの日常に戻ったようだ・・一応葉子はおれの朝食を用意はしてくれたみたいで、食べた後の片づけをして学校に向かう
幸い登校してる最中に二人に出会う事は無かった・・・
しかし、昼休みの教室
「テメェ!!!はじめ!!ちょっと面かせ!!」怒鳴り込んできた翔に胸倉を掴まれると引きずられるように階段の踊り場に連れ出される
「見損なったぞ!!はじめ!!オマエ最低だな!」
俺の胸倉を掴んだまま壁に押し付けて肘で俺の喉元を締め付け勢いよく突き放すと
【ドガッ!】俺の頬を思いっきり殴りつけた
「キャァァ喧嘩よ!先生を呼んでぇぇ」「おいおい誰と誰が喧嘩してんだ!」「おお3皇帝同士が喧嘩か!」
昨日嚙み切った口の中の切り口が再び開き血の味が口の中に広がる
おれは自分の不甲斐なさと二人を傷つけた事への罪悪感から自暴自棄になった
「うおおおおおおお」立ち上がると同時に翔の腹にタックルとすると翔は勢いのまま俺ともつれる様に倒れ込む
「翔!!テメェなんかにぃぃ!!」「お前なんかに譲った俺が馬鹿だった!!」
お互いに揉み合いになりながら至近距離で殴り合っていると
「おい!!二人とも止めないか!!」二人を引き剥がして間に入る大樹の目は翔よりも俺を睨んでいる様だ
「ちっ!!大樹!お前もなんとか言ってやれよ!」俺を指さし大樹を煽るが、大樹は軽く首を振る
「今のコイツに何を言っても仕方ない・・・」「なっ!!大樹どういう事だ!?」
すると大樹の後ろを通り過ぎ翔の元に駆け寄る影が・・・
「高田君!!」駆け寄る影は紫苑だった・・・
「高田君、大丈夫!?急に飛び出していくから・・・」
「し、紫苑・・どういう・・」
「はじっ・・・花田君・・高田君に手をあげたの?」
「そ、それは翔が先に・・・」
「・・・・いこう・・高田君・・・立てる?」
翔の腕を担ぎ補助をする紫苑・・・「お、おい・・紫苑・・」俺が手を伸ばして紫苑の肩をつかもうとすると翔が俺の腕を掴み睨み付けながら
「もう、お前に遠慮しない・・・紫苑はお前に任せておけない・・・金輪際、紫苑に近づくな・・いいな・・」
「なっ!なんでお前にそんな・・・おい!紫苑、コイツになんとか言ってくれ・・・」
「・・・・暫く距離を置きましょう・・・・花田君・・」
そう告げると紫苑は高田を支えながらその場から離れて行った
「なんでだ・・・どうしてだ・・・」
俺を冷たい目で睨む大樹は「はじめ・・お前のしたことは最低だ・・・俺もお前とは縁を切らせてもらう・・・」
そう言うと大樹はその場を去っていった・・・
授業には戻るが頭の中は真っ白だ・・・確かにおれは紫苑を傷つけた・・その報いと言うならこの状況を受け入れるべきなのか・・
混乱する中で放課後、部室に向かう・・自分のロッカーを開けてユニフォームに袖を通すと久しぶりのピッチに足を踏み入れる
しかし・・・・
『花田先輩・・・よくこれたな・・』『確かにモテるけど、やって良い事と悪い事あるんだけど・・』『私あこがれてたのに・・幻滅』
(なんだこれは・・・どういう状況だ・・・・)「なぁ・・・パス練習・「あ、おれ別の奴に付き合うんで~」
「・・・・・・」サッカー部から疎外感しか感じない・・・大樹の方をみるが俺と目を合わさない
【15分の紅白戦をする!みんな集合!】
『うげぇ花田先輩のチームかよ』『まじ萎える―――』『大樹さんと同じチームがよかった~』
(・・・・・・・・)
【ピィィィィ】
俺のワンタッチからゲームが始まる
俺はワンツーの為のポジションに移動するが左サイドからのボールがこない
「おい!サイドチェンジ!!」声を挙げるが何を思ったのか左サイドのMFは左のリベロにパスを繋ぐ
「なぁ!!開始からバックしてどうする!!前線を押し上げろ!!」しかし注意した左のMFの1年はニタニタ笑うだけで聞いてる様子もない
(なんだこいつら・・サッカーする気あんのか?大樹もキャプテンなら何故注意しない!?)
結局パスを切られ、あっという間に翔に点を献上した
『やっぱ翔先輩すげ―――!』『だんちだんち!』
俺の横を通りすれ違う時に「最低なお前に俺との差を見せてやるよ」と小声でいうと守備陣形についていった
今度は俺がボールを受ける・・・
ドリブルで駆け上がり目の前に翔がマークに付こうとしてるのでサイドチェンジをする為に左サイドにパスを送ろうとしたが
「な!?誰も上がってきてない!?」みるとFWもMFもセンターライン付近で相手のマークに付いてる
(ふ、ふざけてるのか・・・こんなのサッカーじゃない!)しかし目の前には翔がゆく手を阻む
「はじめぇぇぇ俺を抜けるなら抜いてみろ!!」翔は執拗におれにタックルをしてボールを奪おうとするが流石に1on1で譲る訳にはいかない
おれは翔の股を抜いて、背後を抜け出す
「行かせるかぁぁぁ!」翔は俺の後ろから足元めがけてスライディングしてきた
おれはバランスを崩して翔の右腕付近に倒れ込む
「ぐぅぅ、いってぇぇぇ」翔が右手を押えてピッチを転がる
「お、おい翔大丈夫か!」俺が慌てて手を差し出すが【パシッ!】翔は左手て叩き払いのける
「お前みたいな奴の手は借りない!」「高田君!!」救急の道具を抱えて翔に駆け寄る紫苑
「はじめ、お前は交代だ・・・」大樹は冷たい目で俺を見て言う
「はぁ?大樹どこみてんだ!?明らかに翔の危険行為だろ!?なんで俺が退場なんだ!?」
回りを見渡すと全員が俺の事を白い目で見てる・・・紫苑すらも・・「は、はは、なんだ?お前等・・正気か・・」
俺はその場で【11】の背番号のユニフォームを脱ぎ地面に投げつける
遠くのベンチでこっちを見ている監督の元に行き
「監督、本日限りでこの部を辞めます!こんなサッカーしか出来ない奴らと一緒にできません、退部届は僕の方から明日もっていきます」
そういうと部室の自分のロッカーの中身をバックに詰めてロッカーの名前を引き剥がし丸めてゴミ箱に捨てた
帰る途中の焼却炉に【目指せインターハイ】と書かれたサッカーシューズと【はじめちゃん頑張れ!】と書かれたスポーツタオルを纏めて放り込み家路に着いた
「あらお帰り?どうしたの早かったのね?部活は?」
「・・・・・辞めて来た・・・」
「え?!どういう事?何かあったの!?」
今は葉子も居ない・・・義母だけだ・・・俺は先日の紫苑と葉子へした事、それと今日学校であった事を正直に話した・・・
「はじめ・・・辛い目にあったのね・・・どうして・・人の命を助けたあなたがこんな辛い目に・・」
「いいんだよ・・・もう・・・忘れていたことに変わりないから・・それで傷ついた二人には責められても仕方ないよ・・・」
「で、でもそれは事故の後遺症で記憶が無くなってるからで!!」
【バサッ!】リビングの入り口を見ると茫然とする葉子が立っていた・・・しかしそのまま逃げる様に自分の部屋に駆けて行った
「御免なさい・・・葉子に聞かれたみたい・・」
「義母さんのせいでは無いよ・・・良いんだ・・もう・・終わった事だから・・俺・・・高校卒業したらこの家を出るよ・・・」
「!?何言ってるの」「俺は居ない方がいいんだよ・・・葉子にとっても紫苑にとっても・・」
「はじめ・・・・そんな悲しい事を・・・「・・・どうせなら俺全部忘れて誰も知らない所で一からやり直したな・・」・!?・・・うっっ・・」
その日も夕飯は自分の部屋で一人で取った
翌日、俺は早朝に職員室に行くとサッカー部の顧問の先生に退部届を提出しそのまま教室に向かった
途中で腕に包帯を巻き吊ってる翔を見かけたが、その傍らには紫苑が寄り添っていた
おれは二人を無視して自分の部屋に戻ろうとしたが翔に呼び止められる
「おい待てよ・・・ここでも逃げ出すのか?・・俺、紫苑に告白したぞ、必ず振り向かせてみせるからな」
「・・・・・・」
おれはそのまま教室にはいると此処でも陰でコソコソと噂が聞こえる『ねぇ花田君、双木さんの事で腹を立てて故意に高田君を怪我させてたらしいよ』『うわぁ――マジ最低じゃん』『イケメンは何しても許されるとか勘違いしてんじゃない?』
【バン!!】おれは机を思いっきり殴り、そのまま教室を出て屋上へ向かった
(なんなんだろうな・・・俺は覚えてないから分からないが・・・あの時面会にきてくれた女の子の命を救ったのと引き換えに俺の人生お先真っ暗になってしまった・・・)
もう高校卒業までと言わず明日からでも別の誰も知らない所に行きたい・・・みんな全部忘れて・・・
それから俺は学校に行かなくなった・・・・
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