第9話 最終回 決して忘れない
翔は救急車で搬送されていった、紫苑も同乗しようとしていたが警察から事情聴取があるからとその場に残る様に言われた
警察は直ぐに駆けつけ、翔の倒れていた場所や血痕箇所を写真に収め証拠物として翔の握っていたナイフも回収していった
そして俺達は事件の詳細を警察に告げる
「回復してからですが、高田さんの方にも事情を伺います証言に齟齬が無いか確認させて頂きますので」
「翔は・・・高田君は無事なのでしょうか・・」
俺は警察官に尋ねるが警官は首を振りお
「申し訳御座いませんが、この場でお答えすることは出来ません」
「状況から察するに、被疑者は傷害事件と殺人未遂事件双方で立件されると思います、皆さん被害届はどうされますか?」
「特に花田君は被疑者に直接、殺害をほのめかす内容の言葉を浴びせられ実際に標的は君だった事も周りの証言が取れてますし、あとは本人の自供次第ですが」
どうするべきか・・・翔に対する怒りが無いと言えば嘘だ、下手したら今救急車で運ばれてるのは俺や葉子だったかもしれない
そう思うと本来は正当な権利として被害届を出して翔に自分の罪と向き合ってもらうべきなのだろう・・・
「はじめちゃん・・・・」
気持ちの整理の付かない俺の元に、あの日から一度も顔を合わせてなかった幼馴染が目の前で頭を下げる
「はじめちゃん!御免なさい!!翔君のしたことは許されない事だと判ってる!でも・・でも・」
「翔君に更生するチャンスを下さい!!絶対に私が更生させて見せます!どうか・・・どうか・・お願いします!!」
紫苑の足元をみると、涙だろうかポタポタと自分の靴に水滴を作っている
「そうか・・・紫苑・・君は翔の事を・・・・」
「・・・・・・」
おれは刑事の方へ向き直ると
「刑事さん、俺は被害届は出しません・・・葉子もそれでいい?」
「はじめが決めた事なら・・・刑事さん・・私も同じく被害届は出しません・・・」
それから、翔は被害者側からの被害届が提出されなかった事と初犯だった事を踏まえ、懲役3年だが執行猶予付きとなった
●あれから5年・・・
『本日は、浦川レッドと鹿式アントニオズの優勝決定戦の模様をお届けします』
【ピィィィィ】『いよいよキックオフです、泣いても笑ってもこの試合の勝者が優勝杯をその頭上に頂きます!』
『浦川レッド早くも鹿式アントニオズの防衛ラインを抜いてます――――そして――――通った―――パスが通りました!!』
『昨年加入の超新星!まさに皇帝!浦川の司令塔背番号11花田 はじめ―――――!』
『しかし、その前に立ちはだかる鹿式アントニオズのキング!!大山 大樹、これは上手い!完全に花田のパスコースをブロックしてる!』
「大樹、随分上手くなったな・・・」
「皇帝に褒められて恐縮だよ」
「国内での最終戦でお前とマッチメイク出来て嬉しいぜ」
「はっ!言ってろ、大きな忘れ物(優勝)を残して海外に送ってやるぜ!」
「いいねぇ―――ほれ!」
『おおっと!花田、多段フェイントで大山を華麗に交わしたぁぁぁフリーだ―――!』
「撃たせるか!!」
「よっと!!」『おお――――大山のカットをジャンプして交わしてぇぇぇ―――』
【バシュッ】『ノントラップでシュートぉぉぉ!!!決まったぁぁぁぁ』
【ピッピッピィィィィ】『ここで試合終了ぉぉぉ!!優勝は浦川レッドぉぉぉ!!』
会場が揺れる大歓声と共にピッチに両選手がお互いの健闘を称える
「大樹、お前も何れ来るんだろ?海外に」
「ああ、近い内にお前を蹴落としに行くさ」
『ユニフォームの交換だぁ花田選手と大山選手がお互いの健闘を称えユニフォーム交換と固い握手!感動です!』
『それでは放送席、放送席、本日ハットトリックの大活躍、浦川レッドの11番、皇帝こと 花田 はじめ選手に来てもらってます!』
『花田選手、大山選手とのマッチメイク、みている我々も痺れました、何やら言葉を交わしてましたが何を話されてたのですか?』
「彼・・大樹とは高校の時に同じチームで切磋琢磨した親友なので、寂しくて僕に海外に行かないで~~っと(笑)」
『あははっは、それは熱烈なラブコールですね!それで花田選手はなんと?』
「僕には、既に心に決めた女性がいるからとお断りしましたよ(笑)」
『おおおお!これは聞き捨てられない爆弾発言です!!観客席からも大勢の女性ファンの悲鳴が聞こえますよ?!』
「ははは、光栄です」
俺はアナウンサーにマイクで拾わない様に小声でマイクを貸して貰うように頼むと
「葉子!!!愛してる!俺と結婚してくれ―――――!!」
するとオーロラビジョンに浦川レッドのユニフォームを着た葉子の姿が大きく映し出された
急に自分の姿が大勢の観客の前で映され戸惑う葉子は横にいる葉月さんにオーロラビジョンを指さし何か訴えてるようだ
「葉子!!俺と一緒にヨーロッパにいってくれ!!愛してるぞ!!」
するとオーロラビジョンの前で大粒の涙を浮かべる葉子は頭の上で大きく〇を作り、何度も何度も頷いていた
●某所アパートの一室
「おめでとう・・・はじめちゃん、葉子ちゃん・・・末永くお幸せに・・・」
そうテレビを見ながら呟く女性は横に座る男性の手にそっと自分の手をのせる、その上から男性がそっと手を被せ男女二人はお互いに肩を寄せ、日本サッカー界の至宝と呼ばれる男とその想い人の幸せをそっと祈るのだった・・・
君の事を決してわすれない nayaminotake @nayaminotake
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