フローラとシルバー塔

さやか

プロローグ

神戸市の繁華街。

時刻は深夜0時を過ぎる。

阪急の沿線沿いのサンセット通りを少し逸れた細道に九の怪というバーがある。

店内はカウンター席が並び、殺風景でマスターが1人と1人の若い女性客がいるだけである。

「今夜はよく冷えますね?」

マスターは話しかけてくる。

今年も12月で終わり、歳をとるにつれて時間があっという間に過ぎる。

「マスター。今日は朝方までいていいかしら?」

「えぇ。お好きになさって下さい。お客様のプライベートを詮索するのはよくないと思いましたが、日本へは旧友に会いにでしたよね?」

「大人しい印象に似合わずよく喋るわね。そうよ」

「それは楽しみですね」

マスターは厨房に引っ込む。

「旧友か……」

彼女はテーブルに肘をついて頬に手を添えてカクテルを一口飲む。

これはある出来事の数年後の事である。



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フローラとシルバー塔 さやか @syokomaka09

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