ボウミルク

ただのネコ

4回目は……

 みなさんは同じ本を何度も読みかえすことって、しておられますか?


 かくいう私は、子どもの頃から本の虫。1日5冊や10冊はペロリという勢いでしたから、必然的に家にある本を何度も読みかえしてきました。新しい本を、満足いく頻度で買うなんて不可能でしたからね。


「よく、同じ本を何度も読めるね」

 なんて言われた事もありますが、これはこれで楽しいものです。

『読書百遍、意自ずから通ず』なんて言葉もあるように、同じ本を読みかえしても新たな発見はあるものなのです。

 ただ、その発見が良いものとも限らないのですが……。


 タイトルはもう覚えていないのですが、それは『国会のしくみ』的な学習漫画だったはずです。

 国会議事堂を見学した主人公らが、説明が一区切りしたところで食堂に行くシーン。

 食堂に入るや否や、主人公が注文します。


「ボウミルクぅ!」


 はて、ボウミルクってなんだろう? と幼い私は考えます。

 まあ、自分が知らないだけで、そういう飲み物があるのかもしれない。機会があったら調べてみよう。

 心の中にそうメモをして、そのまま1回目は読み終わりました。


 そして、2回目に読んだとき。

 主人公らが食堂に着いたところで、前回の記憶がよみがえります。

 あー、そういえば、ここで『ボウミルク』ってのを頼むんだよな。そういえば『ボウミルク』が何なのか、調べてないや。


「ボクミルクぅ!」


 おや? まあ、聞いたことがないレア飲料よりも普通のミルクを頼む方が自然だよね。前の時は、見間違えたか何かしたんだろう。

 そんな風に納得しました。


 そして、3回目に読んだときのこと。

 

「ボウミルクぅ!」


 え? ボウミルクは見間違いだったはずだよね?

 でも、どう見てもウなのです。

 穴が開くほど見つめてもウ。

 クの上にゴミがついてウに見えてるんじゃないか、と考えてちょっと爪でカリカリしてもやっぱりウ。

 どう見てもクではありません。


 その後、『ボウミルク』を調べてみましたがそれらしきものは見つかりませんでした。そんな飲み物はおそらく無いのでしょう。

 だから、きっと最初から『ボクミルクぅ!』であるべきセリフが『ボウミルクぅ!』と誤植されていて、2回目の時に私が読み間違えただけ、なのだと思います。


 でもそれから、そのマンガの4回目の読みかえしだけは何となく避けてきました。

 もし4回目を読んで、主人公が


「ボクミルクぅ!」


 と元気よく注文していたら、私の中の何かが壊れてしまうような、そんな気がするのです。

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