ハッピーエンドは自分で見つけ出すものだから。私たちは物語をつむぐ

 文章の端々から作者のこだわりを感じます。
 文体、セリフ回し、単語の選択にセンスがあって、大正の雰囲気が伝わってきます。
 近代文学をそんなに読み漁っていないのですが「そうそう、こんな空気だった!」と近代の独特な世界観を味わえました。

 あらすじを読んだときは、さまざまな妖怪がでてきてながらも、さゆりさんとロドリゴさんの絆が深まるアクションストーリーなのかと思っていました。

 いざ本編を読むと、物語を作ることにどれだけ真剣なのかを考えさせられました。
 さゆりさんは、とある童話の結末にいささか不満を感じています。
 しかし童話を考えたロドリゴさんは、とくに不満はなし。(これには深いワケがありますがネタバレになるので伏せます)
 これにより、さゆりさんはロドリゴさんに執筆した物語を評価してもらうことに。

 『小説家に化け物棲むと人の言ふ』は物語を書いている人に読んでほしい作品です。
 さゆりさんが物語を書く姿を見て、何のために物語を書いているのか見つめ直す良いきっかけになりました。

 彼女の思慮深くて大胆で勇敢な性格が素敵で憧れを抱きました。彼女には物語を書き続けてほしいです