小説の書き方本を108冊読んでわかったこと

杉村雪良

小説の書き方本を108冊読んでわかったこと

■前置き


 こんにちは。杉村雪良と申します。

 なぜそんなことをしたのか自分でもわからないのですが、小説の書き方に関する本を108冊読みました。

 理由はともかく、結果としては様々な知見を得たと感じています。ご興味のある方がいらっしゃるかどうか不明ですが、どなたかに届くことを夢見て、この文章を書くことにしました。


 108冊を選んだ基準を説明した後で一冊ずつ紹介し、私が理解したことをまとめ、最後に結論を述べたいと思います。 

 なお念のためですが、私はプロの作家でも書評家でもありません。


■選んだ基準


 数ある”小説の書き方本”の中から108冊を選んだ基準ですが、特にありません。手あたり次第、つまり個人的にアクセスしやすい物から読みました。恣意的です。優劣で選んだわけでは全くありません。

 ただ、以下の点を心がけました。


1.小説の書き方を中心に、広いジャンルを対象とする。

 SFやミステリーはもちろん、脚本、マンガ、文章一般のノウハウ本として書かれたものなども含んでいます。その本が書かれた本来のターゲットは忘れて、あくまでも小説の書き方の参考として読みました。

 ただ、創作のための語彙集や設定資料集のようなものではなく、書き方全般をとらえたものをなるべく選びました。


2.著者一人につき一作だけを取り上げる。

 小説の書き方本を何作も書かれている方もおられますが、幅広く読んでみたいという狙いもあり、お一人につきなるべく一作だけという縛りを設けてみました。ただ例外もあり、何名かは二作取り上げています。


3.紙の書籍だけを取り上げる。

 紙の書籍だけ、しかも一般的にアクセスしやすいものだけを取り上げました。電子書籍や個人出版のものは選びませんでした。これも特に深い理由はなく、今回そういう縛りにしたというだけです。オンラインでのみ出版されている物やweb上の記事、もちろん論文等にも素晴らしいものがあると推測しますが、それまた別の機会に読んでみたいと思います。


■108冊のリスト


 そういうわけで、リストです。カテゴリ間違い等ありましたら申し訳ありません。MECEでなくて恐縮です。基本的に敬称略ですがご容赦ください。


リスト1(No.001~No.008)作家さん編その1

https://kakuyomu.jp/works/16818093082304773813/episodes/16818093082305008341

宮原 昭夫『書く人はここで躓く! 作家が明かす小説の「作り方」』/佐々木 義登『めざせ! 文学賞 小説実作入門講座』/鈴木 輝一郎『何がなんでも長編小説が書きたい!  進撃!作家への道!』/清水 義範『小説家になる方法』/中上 健次 著, 髙澤 秀次 編『現代小説の方法 増補改訂版』/谷崎 潤一郎『文章読本 改版』/三島 由紀夫『小説読本』/大岡 昇平『現代小説作法』/


リスト2(No.009~No.017)作家さん編その2

https://kakuyomu.jp/works/16818093082304773813/episodes/16818093082309435562

三田 誠広『天気の好い日は小説を書こう ワセダ大学小説教室』/保坂 和志『書きあぐねている人のための小説入門』/島田 雅彦『小説作法ABC』/北村 薫『北村薫の創作表現講義 あなたを読む、わたしを書く』/高橋 源一郎『一億三千万人のための小説教室』/夢枕 獏『秘伝「書く」技術』/筒井 康隆『創作の極意と掟』/清涼院 流水『清涼院流水の小説作法』/山川 健一 『物語を作る魔法のルール 「私」を物語化して小説を書く方法』/


リスト3(No.018~No.028)作家さん編その3

https://kakuyomu.jp/works/16818093082304773813/episodes/16818093082325445196

三浦 しをん『マナーはらいない 小説の描き方講座』/森村 誠一『小説の書き方小説道場・実践編』/都築 道夫『都築道夫の小説指南 増補完全版』/大沢 在昌『小説講座 売れる作家の全技術 デビューだけで満足してはいけない』/花村 萬月『たった独りのための小説教室』/スティーブン・キング『書くことについて』/ディーン・R. クーンツ 『ベストセラー小説の書き方』/レス・エジャートン『「書き出し」で釣りあげろ』/K.M. ワイランド『アウトラインから書く小説再入門 なぜ、自由に書いたら行き詰まるのか?』/アーシュラ・K・ル=グウィン『文体の舵をとれ ル=グウィンの小説教室』/オルハン・パムク『パムクの文学講義 直感の作家と自意識の作家』/


リスト4(No.029~No.038)作家さん編その4

https://kakuyomu.jp/my/works/16818093082304773813/episodes/16818093082356552052

奈良 裕明『1週間でマスター 小説を書くための基礎メソッド 小説のメソッド〈初級編〉』/山本 弘『創作講座 料理を作るように小説を書こう』/松岡 圭祐『小説家になって億を稼ごう』/吉田 親司『作家で億は稼げません』/中村 航『これさえ知っておけば、小説は簡単に書けます。』/円山 夢久『物語のつくり方7つのレッスン』/貴志 祐介『エンタテインメントの作り方 売れる小説はこう書く』/森沢 明夫『プロだけが知っている小説の書き方』/榎本 秋, 菅沼 由香里, 榎本事務所『書きたいと思った日から始める! 10代から目指すライトノベル作家』/クロノス・クラウン柳井政和『Web小説のための NovelSupporterで超効率的に文章推敲する本』/


リスト5(No.039~No.048)編集者さん・研究者さん編

https://kakuyomu.jp/works/16818093082304773813/episodes/16818093082386992147

根本 昌夫 『【実践】小説教室』/清水 良典『2週間で小説を書く!』/清水 良典 『あらゆる小説は模倣である』/佐藤 誠一郎『あなたの小説にはたくらみがない 超実践的創作講座』/大塚 英志『ストーリーメーカー 創作のための物語論』/桒原 丈和『小説を読むための、そして小説を書くための小説集—読み方・書き方実習講義』/飯田 一史『ベストセラー・ライトノベルのしくみ キャラクター小説の競争戦略』/大辻 都『芸術大学でまなぶ文芸創作入門―クリエイティブ・ライティング/クリエイティブ・リーディング』/田島 隆雄『読者の心をつかむ WEB小説ヒットの方程式』/リサ・クロン『脳が読みたくなるストーリーの書き方』/


リスト6(No.049~No.052)短編向け編

https://kakuyomu.jp/my/works/16818093082304773813/episodes/16818093082560893423

田丸 雅智 『たった40分で誰でも必ず小説が書ける超ショートショート講座』/ほしおさなえ『言葉の舟 心に響く140字小説の作り方』/草薙 渉『原稿用紙10枚で人生を変える小説トレーニング』/わかつきひかる『「悪魔のささやき」で書く短編小説』/


リスト7(No.053~No.058)シニア向け/歴史小説編

https://kakuyomu.jp/my/works/16818093082304773813/episodes/16818093082592690038

わかつきひかる『50代60代なら誰でも面白い小説が書ける』/森村 誠一 『60歳で小説家になる』/五十嵐 裕治『即上達!60歳からの小説の書き方全極意』/三日木人『体験的「定年作家」のススメ』/鈴木 輝一郎『新時代小説が書きたい!』/安部 龍太郎, 門井 慶喜, 畠中 恵『人生を豊かにする 歴史・時代小説教室』/


リスト8(No.060~No.068)ミステリー編

https://kakuyomu.jp/works/16818093082304773813/episodes/16818093082597374778

江戸川 乱歩, 松本 清張 共編『推理小説作法 あなたもきっと書きたくなる』/島田 荘司『島田荘司のミステリー教室』/若桜木 虔『ミステリー小説を書くコツと裏ワザ』/柏田 道夫『ミステリーの書き方 シナリオから小説まで、いきなりコツがつかめる17のレッスン』/野崎 六助『ミステリを書く!10のステップ』/新井 久幸『書きたい人のためのミステリ入門』/日本推理作家協会『ミステリーの書き方』/アメリカ探偵作家クラブ著,ローレンス・トリート編『ミステリーの書き方』/パトリシア・ハイスミス『サスペンス小説の書き方』/


リスト9(No.69~No.72)SF編

https://kakuyomu.jp/my/works/16818093082304773813/episodes/16818093082616265471

野田 昌宏『スペース・オペラの書き方 新版 宇宙SF冒険大活劇への試み』/日本SF作家クラブ 編『SF作家はこう考える 創作世界の最前線をたずねて』/大森 望 編『SFの書き方「ゲンロン大森望SF創作講座」全記録』/ティモシー・ヒクソン『読者を没入させる世界観の作り方 ありふれた設定から一歩抜け出す創作ガイド』/


リスト10(No.073~No.079)マンガ/落語/童話編

https://kakuyomu.jp/works/16818093082304773813/episodes/16818093082619791932

さそうあきら『マンガ脚本概論 漫画家を志すすべての人へ』/小池 一夫『小池一夫のキャラクター創造論 読者が「飽きない」キャラクターを生み出す方法』/荒木 飛呂彦『荒木飛呂彦のマンガ術』/稲田 和浩 『たのしい落語創作』/木村 裕一『きむら式童話のつくり方』/村山 早紀『100年後も読み継がれる児童文学の書き方』/日本児童文芸家協会編『児童文学塾~作家になるための魔法はあるのか?』/


リスト11(No.089~No.082)官能小説編

https://kakuyomu.jp/works/16818093082304773813/episodes/16818093082637814528

藍川 京 『女流官能小説の書き方』/睦月 影郎『欲情の文法』/ジュエル文庫編集部編『キスの先までサクサク書ける!乙女系ノベル創作講座』/花丸編集部編『ボーイズラブ小説の書き方』/


リスト12(No.083~No.088)エッセイ・コラム/アンソロジー編

https://kakuyomu.jp/works/16818093082304773813/episodes/16818093082645917639

岸本 葉子『エッセイの書き方読んでもらえる文章のコツ』/小田嶋 隆『小田嶋隆のコラム道』/日本エッセイスト・クラブ 編『エッセイの書き方』/女性文学会編『たとえば純文学はこんなふうにして書く 若手作家に学ぶ実践的創作術』/青山 南 編『作家はどうやって小説を書くのか、じっくり聞いてみよう! (パリ・レヴュー・インタヴュー I) 』/週刊朝日編『私の文章修業』/


リスト13(No.089~No.096)文章全般編

https://kakuyomu.jp/my/works/16818093082304773813/episodes/16818093082647549728

岩淵 悦太郎『悪文 伝わる文章の作法』/レーモン・クノー『文体練習 レーモン・クノー・コレクション7』/加藤 明『「もっと読みたい」と思わせる文章を書く』/福田 和也『福田和也の超実践的「文章教室」 〜スゴ腕作家はなぜ魂を揺さぶる名文を書けたのか〜』/三宅 香帆 『名場面でわかる刺さる小説の技術』/藤吉 豊, 小川 真理子『文章術のベストセラー100冊のポイントを1冊にまとめてみた』/丸谷 才一 編『恋文から論文まで (日本語で生きる 3)』/木下 是雄『理科系の作文技術』/


リスト14(No.097~No.108)脚本・シナリオ編

https://kakuyomu.jp/works/16818093082304773813/episodes/16818093082677729842

新井 一『映画・テレビ シナリオの技術』/新井 一樹『プロ作家・脚本家たちが使っている シナリオ・センター式 物語のつくり方』/丸山 智子『だれでも書けるコメディシナリオ教室(DVD付)』/浅田 直亮『いきなりドラマを面白くするシナリオ錬金術』/沼田 やすひろ『超簡単!売れるストーリー&キャラクターの作り方』/ブレイク・スナイダー 『SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術』/クリストファー・ボグラー, デイビッド・マッケナ『面白い物語の法則〈上〉〈下〉 強い物語とキャラを作れるハリウッド式創作術』/エイミー・ジョーンズ『物語のつむぎ方入門 <プロット>をおもしろくする25の方法』/ラリー・ブルックス『工学的ストーリー入門』/カール・イグレシアス『「感情」から書く脚本術 心を奪って釘づけにする物語の書き方』/ガルシア=マルケス『物語の作り方 ガルシア=マルケスのシナリオ教室』/アリストテレス『詩学』/



■わかったこと


 以上の108冊を読んでわかったことを述べます。


1.何にでも両方の意見がある

2.起承転結懐疑論

3.根源は感情かもしれない

4.どんなジャンルでも意外に同じ

5.108冊読むのは無駄。だけど……



1.何にでも両方の意見がある


 108冊も読めば小説の書き方の真理に到達するだろう、もしかしたら芸術の真理に、あわよくば生命の真理に到達するかもしれない、と思っていたのですが、しませんでした。もし108冊に共通した教えを発見できたら、それが小説の書き方の真理なんじゃないかと期待していたのですが、共通した教えなんてありませんでした。


 その代わり、どんなことにも両方の意見があるということを理解しました。

 例えば、「まずテーマありきで書くべき」という意見もあれば「テーマはあとからついてくる」という意見もありました。「登場人物の履歴書を書いたほうがよい」という指南も「履歴書なんか書くのは無駄だ」という指南もありました。あるいは、「舞台となる場所に必ず足を運ばなければならい」という主張も「現地調査をしたら書けなくなる」という主張もありました。

 少なくとも「まず書いてみよう。話はそれからだ」は万人に共通した見解なのではないかと思っていたのですが、それすら普遍ではなく、「まず書いてはいけない」というご意見の方もいらっしゃいました。

 文章のプロの皆さんが文章の書き方についておっしゃっているのに、万人に共通する意見がない、ということ自体が私にとっては発見でした。

 

 ここで、はたと思い当たったのは、小説の書き方というのはそれぞれの方の仕事術でもあるのだなあ、ということです。

 そうすると、それらは著者さんそれぞれの人生経験やそこから生まれた信念を文脈として、そこに埋め込まれた形で生み出されたものであるはずです。それぞれの人生とお仕事の中で涵養された流儀ですから、それぞれ違うのは当たりまえのことです。


 だからと言って、では初心者が小説を書こうと思った時にどうすべきか、というのはよくわかりません。

 ですが少なくとも、創作術の表層的な面にこだわって「テーマは先に決めてはいけないんだ」とか「現地調査はしてはいけないんだ」とか思い込んだり、あるいは矛盾する複数の教えに出会って右往左往する必要はないということに気づきました。



2.起承転結懐疑論


 108冊の書き方本を読む前から、私は起承転結という考え方に懐疑的でした。起承転結という用語は、108冊のうち多くのものに登場します。上記1も踏まえてですが、私はこれらに接して、起承転結というものにより懐疑的になりました。


 大抵の書き方本では起承転結に少なくとも一定の評価を与えていますが、一方でバリエーションが提案されている場合もあります。例えば起承転転転転転結や起承承承承転結です。特に連載ものや長期化作品のことを考えると、これらはもっともな考え方です。

 ただこれらは「起承転結」という言葉で表す必要はなく、(「起」と「結」はこの際当たり前の存在として)「承」や「転」がそれぞれのあり方で存在する、というだけの話になります。そのうち、一般的に重視されているのは「転」であり、変化をいかに効果的に魅せるか、ということが重要な焦点になっています。

 108冊の書き方本のうちの多くで重視されているのは対立や葛藤とその解決であり、登場人物の変化、関係性の変化です。またハリウッド式三幕構成にしても、肝はストーリーや登場人物の関係性が変化するポイントです。起承転結の転で起こっているのは対立が最高潮に達することであり、それによって変化が劇的に表現されることでもあります。


 これらを総合すると、いろんな方がおっしゃっているのは、「転」=「変化」を効果的に書くことが大事なのだ、ということなのではないかと思います。そしてそれをどのようなプロットとして組み立てるかは、具体的な作品の形式やコンテクストに依存します。

 それがある形をとったものを起承転結と呼んでいるだけであって、その他の形をとったものまで起承転結もしくはそのバリエーションと呼ぶ必要はない、と理解しました。

 念のためですが、「起承転結は不要だ」という意味ではありません。「転」=「変化」を効果的に伝えるためには状況に応じて構成を整える必要があり、その一例が起承転結であり、三幕構成である、という理解です。


3.根源は感情かもしれない

 

 108冊を通じてもう一つ得た知見は、感情の重要性です。

 「転」=「変化」が中心になるのも、主人公が読者の共感を得る必要があるのも、全ては小説あるいは物語というものが読者・観客の感情を動かすことに資するため、と考えると納得できます。

 いくつかの書き方本では意識的に「読者の感情を動かせ」と書かれ、別の書き方本ではわざわざ明記するまでもなく「読者の感情を動かすのが小説の本務」という前提で指南が進みます。

 「泣ける」映画、「笑える」コメディ、「驚きの」結末、「深い○○を呼び起こす」文学作品など、小説や物語の評価には感情が付きまといます。ヒッチコックは、映画を”観客の感情を動かすオルガン”と表現したそうです。

 小説だけでなく、我々は怒りのこみあげてくるニュースをわざわざ探したり、良かれと思って誰かにサプライズをしかけたりします。我々はどうやら日々感情を動かしてくれる何かを求めているようです。

 "良い小説や物語は感情を喚起させる"のではなく、"我々は常に感情の喚起を欲しており、小説や物語もその手段の一つ"と考えた方がしっくりきます。そうしてみると、感情こそが根源、というふうに思えてきます。



4.どんなジャンルでも意外に同じ


 今回あえて、小説以外のジャンルの書き方本も小説執筆に役立てることができるかという視点で読みました。結果、役立てることができるどころか、書き方の本質はどんなジャンルでもほとんど同じだと理解しました。

 2の"「転」が効果的に伝わるように整えよ"ということと、3の"読み手の感情を喚起せよ"ということは、どんなジャンルでも当てはまります。1でどんな点にも両方の意見があると書きましたが、結局はこの2点を達成するためのいろいろな手段があると理解してもいいかもしれません。

 これは小説でもマンガでも脚本でも同じです。サイエンスライティングの場合は、”転”や”感情”を”議論”なり”分析結果”なりに読みかえた方がよさそうですが、その意義を伝えたい、という意味では大差ありません。

 まして、純文学とエンターテインメント小説の二項対立などは108冊を読む限りでは存在せず(帰属意識はあるかもしれませんが)、あらゆる指南はどちらにも当てまります。


 この"「転」が効果的に伝わるように整えよ"と"読み手の感情を喚起せよ"という二点は、もしたら同じことを言っているのかもしれません。前者は伝える側の工夫のことで、後者はその結果として受け手側に起きてほしい効果のことです。


 108冊のうち何冊かに、ホルヘ・ルイス・ボルヘスの言葉として「芸術とは炎に代数を加えたもの」という言葉が紹介されていました。私自身は引用元に当たれていません。(『伝記集』にあるということですが、その言葉を発見できていません。)

 108冊を通じてこの言葉を理解すると、自分の炎を効果的に読み手の感情に伝えるために、構成を整え、先人たちが培ってきた関数を用いよ、ということなのだと思います。

 小説の書き方本でよく凝った文章を避けてシンプルな文章を書くことが推奨されたり、校正の重要性が繰り返されたりします。これらも、インターフェースとしての文章を整えてストレスを減らすということに尽きます。

(ですので、小説によっては変わったインターフェースの方が適切な場合もあるということになります。)


 小説の書き方本108冊を振り返ってみると、どれも構成が整えられていて、独自の文章でそれぞれの著者さんの伝えたいことを見事に表現したものばかりでした。読者である私は時に敬服し、時に笑い、あるいは驚き、とても心動かされました。108冊は、それぞれ素晴らしい作品だということが再認識できました。


5.108冊読むのは無駄です。ですが……


 入門書を複数読むのはよいことだと思うんですよね。

 でもさすがに108冊読むのは時間と労力の無駄です。読むだけで6か月かかりました。この時間があれば、もっと有意義なことがいくらでもできました。上記のまとめも、なにも108冊も読まなくても気づけたことです。

 でもですね。読んでる間はすごく楽しかったんです。


 無駄とは過剰のことで、過剰は贅沢につながります。小説の書き方を108冊読むということは、のべ108名の方に創作論や仕事論についてじっくりお話を聞くということと同じ行為でした。それほどまじめに小説を書く気がない私にとって、これはとても無駄でもあり、とても楽しく豊かで贅沢でもある体験でした。


 あっでも、無駄というのは、あくまで108冊も読むのはという意味です。108冊の本が無駄な本という意味では全くなく、本気で小説を書きたいという方には、一冊一冊とても役に立つものと思われます。

 それぞれどれも特色があり主張が異なる108冊ですので、合うもの、合わないものがあるかもしれませんが、ぴたっと合った時には、特に素晴らしい価値が生まれると思います。


■結論

 とにかく、小説の書き方本を108冊読んでわかったのは、無駄なことは楽しいということです。

 無駄なことに目がないという方は是非どうぞ。



おわり。

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