リスト11(No.079~No.082)官能小説編
※このリストは、『小説の書き方本を108冊読んでわかったこと』のリストの一部です。本編は以下のURLをご参照ください。
https://kakuyomu.jp/works/16818093082304773813/episodes/16818093082680236247
No.079
『女流官能小説の書き方』
藍川 京 著 2014 幻冬舎(幻冬舎新書)
感想:
主に男性向けの物をお書きのようですが、女性ファンも増え、女性読者も意識して書かれているということです。
書き方の外形的なノウハウは、わりとあっさりしています。種類の説明や、登場人物のタイプ、濡れ場の種類など、実例たっぷりに説明されていますが、体系立てて検討することはあまりなく、所感が述べられるタイプの指南書です。
本書で繰り返し出てくるのは、官能小説を書くには自分の感性を大切にせよということと、行為に至るまでの心理が大切である、ということです。そして随所にご自身の作家業のエピソードが熱っぽく語られるのですが、ひょっとしてそれ自体が情感や登場人物の心情を重視すべき官能小説と親和的なのかもしれません。
どちらかというと、まず理論が先立つというよりは、ご自身に内面化された情熱や感性が執筆を駆動されている方のように拝読しました。そのタイプの初心者の方に特に参考になるものと思います。
No.080
『欲情の文法』
睦月 影郎 著 2012 講談社(星海社新書)
感想:
官能小説を400冊書かれた著者さんということです。文章中、ご自身のこだわりやフェチをさらけ出しているところにすがすがしさを感じますが、そんなことを恥ずかしがっていては官能小説家は務まらないのでしょうね。
本書は、ゼロから始める人に全てを手取り足取り教えるという体裁にはなっていません。ある程度物語を書ける人が、先達のこだわりポイントを参考にする、という使い方がよいかもしれません。
ただし、官能小説以外にも大変参考になります。例えば、ストーリーは予定調和で構わない、むしろ読者の共感を得やすくするためにはそれがいい、という考え方は、エンターテインメントと物語の関係を考えるうえで非常に参考になると思います。
とにかくご自身のこだわりを詰め込んだものを書き、他のフェチは他の作家さんに任せる、というスタンスですが、それが視点を狭くしているのではなくむしろ普遍性を強めているように思います。この辺りも、性的なものを超えた話ではないでしょうか。
No.081
『キスの先までサクサク書ける!乙女系ノベル創作講座』
ジュエル文庫編集部編 著 2017 KADOKAWA(ジュエルブックス)
感想:
ストーリーの作り方からキャラクターの考え方、そして主眼である「キスの先」の書き方までが書かれた全部入りの創作講座です。
ヒロインとヒーローの心的距離(回数)ごとのかき分け、シーンの中でのステップ、全体に対する分量、シーンに必要な四要素など、具体的に書かれます。私は縁遠いのですが、こういうものの指南書としてはかなり網羅的で実用出来ではないでしょうか。最後の三名の作家さんへのインタビューも、なかなか優秀です。
「第6章 キラキラした乙女系らしさの演出を!」の章では、このジャンルならではの文章術が説かれます。そもそも「少女小説は広く「少女まんがの影響下にある小説」であった」(p.150)として、まんがの影響が乙女小説にどう表れているか、あるいはどういった表現が求められるのか、ということが説明されます。
その中には、エンターテイメント小説として十分敷衍して考えることができる考え方があります。例えばキラキラした雰囲気をどう表現するか、ということは、このジャンル以外にも、特定の雰囲気を文章でどう表現するか、ということのヒントになるはずです。
物語の舞台を選定するための手がかりとして『華やかさ』『平和さ』『おなじみ性』で星取表を、ヒーローのキャラ設定では『職業』『財力』『権力』『家柄』『肉体的な強さ』で星取表をそれぞれ作成したりと、どこかドライな考え方もあります。
ちなみにそういう挿絵がふんだんに登場しますので、人前でお読みになる場合はご注意ください。(私は国立国会図書館で閲覧したのですが、気まずかったです。)
No.082
『ボーイズラブ小説の書き方』
花丸編集部 編著 2004 白泉社
感想:
花丸編集部編・著ということで、非常に実践的な内容です。
第1章『そもそもボーイズラブ小説って何だ?』第2章『初級編 これが小説を書く基本テクだ!』第3章『上級編 ボーイズラブ小説ならではの悩みもこれで解消!』第4章 『FAQ そのほかの質問とその解答』という構成になっています。
上級編には、「受け視点と攻め視点」、「Hシーンは必須か?」「リバーシブルにはご注意」など、ボーイズラブらしい項目が並びます。
基本的に”書き手も読み手もそれぞれ「萌え」のポイントを持っている”という考え方に基づき、それを読者にわかりやすく魅力的に伝えるための注意点に主眼が置かれています。これは直接的にはボーイズラブ、広く言っても恋愛小説を想定したものではありますが、「自分が面白いと考えるポイントをいかに読者に伝えるか」という問題ととらえると、もう少し射程が広くなるわけです。
決して奇をてらわず、ジャンルの良さを生かして、王道やお約束の良さをうまく使いながら、丁寧に書いていく、ということが本書のスタンスであると読みました。
ボーイズラブ作家さんのインタビューやコラム、登場人物やペンネームでよく使われる漢字ランキングなど、もりだくさんの内容で、サービス精神に富んだ一冊になっています。
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