母の無念を癒やす竪琴、後宮の闇を照らす

『竪琴の継承者 ~第六妃は国王陛下の子守唄係でいたい~』は、まるで深夜の温室に咲き誇る月光花のような独特の甘い香りを放ちます。

竪琴の調べで死者の声をすくい上げるアメリーの姿は、見えない糸で宵闇の記憶を編み上げる孤高の織姫のようだ。国王ジェラルドが抱える母の無念、後宮を彩る華麗な毒花たち、そして宿命の呪いが紡ぐ旋律は、透明な水面に滴る一滴の血、あるいは銀色の蜘蛛が囁く秘密のように、読む者の心を奇妙にとらえて離さない。

愛と癒やしの調べは、冷え切った王の魂を優しく包み込み、読者の脳裏には妄想の苗がそっと根を下ろす。誰もが満ち足りた眠りを求めつつ、不穏な影が揺れる後宮で、竪琴が奏でる奇妙で神秘的な子守唄は、読む者の心を小さな迷宮へと誘い続けることでしょう。