夏の混雑したビル街で、水着のディスプレイを眺めている「私」。ふいに思い出したのは、一年前に同級生だった南野君に再会した時の会話だった。回想と会話を中心に、「私」の半生と南野君の関係性を描いた現代ドラマ短編。切ないけれど、ただそれだけじゃない、前向きさも窺えるお話です。再会もただの偶然で、そこから何かが変わるというのも、たくさんあることではないのでしょう。でも、今だからこそ分かる「あの瞬間」の意味を、大切にしたいと思いました。
日差しに隠れた一抹の感情を、手を伸ばすように掬いあげた作品です。さりげなく後味を滑り込ませる技術が、素敵なアクセントになっています。なんだか、さっぱりしました。ありがとうございます。
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