最終回 君と過ごしたい密な時




(すうっと、覚醒するような息遣い)

(慌てて起きたような音)

(ガタンと何かにぶつかる衝撃音)




「あっ! だ、大丈夫っ?

 そんなに慌てて起きることないのに……っ(心配と困惑)

 ぶつけた?

 痛い?

 傷になってない?

 見せて?

 見てあげる」 



(確かめるような彼女の布の音と、吐息)




「……うん、大丈夫、傷にはなってなさそう」



「……あ。」(近さに気づいたぎこちなさ)

「えっと」



「ど、どしたの、そんな、改まって正座、」



「……………………(緊張の吐息)



「こうやって見つめあってると、なんか、お見合いみたいだね、…………へへ…………(逃げの恥じらい)」



(向かい合って座ってる距離から)

(ごくんと緊張の喉の音)




「あの」


「さっきの瞑想なんだけど」


「さいご、」


「…………どんな人が、居た?」


「『君を待ってくれてる、大切な人』」


「『君のことを思ってる人』」




「…………ねえ……、

 だった……?」

(期待と恥じらいの混じった声で)




 どくん

 どくん

 どくん



「……あたし・・・?」


「ぇっ……!

 ほ、ほんとうに、あたし・・・……!?」



「め!

 迷惑なんてことないっ。

 だって、あたし、あの、その、実は……」



「君のこと大好きなの、今も」



「実は、ずっと前から誘おうって思ってたけど、声掛けられなくてっ」


「LINEも電話も知ってるけど、疎遠になっちゃってたし、顔見たくてっ」


「直接誘えばワンチャンあるかなーなんて思って」



「だから、OKしてくれたとき、ほんっとうに嬉しくて……!」




「偶然だけど、水漏れに感謝っていうか。

 まさかこんな、かりそめ夫婦みたいなことできると思わなかった」




「……ここ数日間、”幸せだなぁ”って」


「ずっと君のそばに居たくて」


「君の嬉しそうな顔が見たくて」


「そしたら君が元気ないから」


「元気、出して欲しかっ」

(すっ! と勢いのある布の音)

「きゃ!」

(右耳から彼女の声)




(ぎゅうっと、抱きしめている音)

「……(漏れこぼれる安心した息遣い)」




「……ちから、つよいよ(笑)」


「ちょっと苦しいよ、でもそれが──」


「気持ちの強さなら」



「あたし」

「好きだってことで取っていいの……?」



「都合よくとっちゃうよ?」

「あたし、うぬぼれるよ?」




「……君の胸、あったかい」

「……君の腕、力強くて安心する」



「……ふふ。ねえ?

 どきどきしてる?

 ……心臓の音、すごい……

 あたしも一緒。

 聞いてみる……?(笑)」



(すりっとした耳をこする音)

(鼻先にかかる吐息)



(小さなリップ音)



(ごそごそ、と抱き着く音)


(左の耳元から)

(甘える声で)

「…………ね」



「君だけにおねだり……してもいい?」



「君にしかできないの」

「君じゃなきゃ意味ないの」



「……えっと」

「──あのね?」


「あたしのなまえ、呼んで?」

「あたしの名前、呼んでほしい」

「君に、呼んでほしいの……」

(囁きおねだり)




──・・・




「……うぅ~~~~~……! なんかもう死んでもいいっ……!」


「しあわせ」

「しあわせ」

「えへ、なんかもう死んでもいい♡」



 



「……ねえ、聞いて?

 君にはあたしがいるよ。

 どんな時でも思い出して。

 ”あたしがいる”。



 君がどんなに変わっても、

 あたしは、あたしだけは、


 ……(ぐっと耳元で)君のいちばん傍にいる。



 あたしの大事は、君だけだから」

 







END

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【AMSR台本】君におねだり −あの子と過ごす密な時間(とき)♡ 保志見祐花 @hoshiyuka

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