生まれつき守護石を宿すセント・ジュエル王国王家の人間の中で、鍾乳石を宿す第16王女ステラ。地味で使えない石だと追放された彼女を拾ったのは、とある秘密を抱えたカーティス。
ステラを失ったことで災厄に見舞われたセント・ジュエルの追手から逃げる二人の逃避行が行き着く思わぬ結末に、きっと読者は驚くはず。
追放から始まる王道のざまぁ展開かと思いきや、抉られた轍の上から新たな道を引いてくれるような爽快感があります。世間知らずの箱入り王女と、彼女の素性を知りながらもそのポンコツっぷりに辛辣を吐き出すカーティスのやり取りは必見です。コメディの名手によるすれ違いラブコメ、さすがです。
次話への引きも力強く、「次へ、次へ」と無心でタップし、気づけば最終話を迎えるはず。4万字の厚みを感じさせないフランクな文章は、あえて「読む」ではなく「見る」と表現したい。この技巧を解説できるような的確な言葉を持っていないことが歯痒いのですが、読者への視覚からのアプローチが本当に秀逸です。これはぜひ、実際に読んで体感してみて欲しいです。