最後まで見届けずにはいられない、三人の男女の悲劇的な結末
- ★★★ Excellent!!!
三位一体のように育って来た男女は、いつまでも三人ではいられませんでした。ヴィルヘルムとエレノアは結ばれ、ヴィルヘルムの双子の弟であるリヒャルトの思いは宙に浮かんだまま、大陸全土を巻き込む戦争に入っていきます。戦争からエレノアのもとへ帰還したヴィルヘルムは本当にヴィルヘルムなのでしょうか?
戦後の動乱の中、ヴィルヘルム、リヒャルト、エレノア、それぞれの屈折した思いが克明に描かれていて、全てが明らかになってゆく五章~終章の怒涛の流れはどうしても読むのを止めたくない、そんな気持ちになってしまいました。
タグにある通り、バッドエンドのヒストリカルロマンスとなります。しかし最後まで読み終えた印象としては、このような悲しい結末にならざるを得なかったという腑に落ちる感覚がありました。少しだけ希望が残されていることも救いでした。
誰が一番悪いということもない、三人の決して元に戻ることはない関係性を緻密に積み上げているからこそ得られた読後感なのだと思いました。